K. Inoue
(更新)
英語での会話で最も多用される単語の1つが「if」。
「もしも〜」の意味で何度も使ったことがあるという人も多いことでしょう。
「こういう状況ならこう」「こういうことがあればこう」と、状況を設定することでいろいろなことを説明することができる if は情報伝達のためにとても重宝します。
でも実はこの if は、一見簡単そうでも英語ではその中身によって意外と細かい使い分けがあります。
そして、状況によっては「もしも」以外の意味で使われることも。
伝えたいことをより正確に伝え、逆に相手の言いたいニュアンスをしっかりと理解するためにも、確実にその使い方を押さえておきたいところです。
ということで、今回はそんな if の使い方を解説していきます。
とりあえず「もしも」の意味だけでなんとなく使っていたという人には、たくさんの発見があると思いますので、ぜひ新たな学びとして生かしてもらえると嬉しいです。
if が作り出すまとまり(if節)の多くは「もし~なら」という意味で使われます。
この「もし~なら」という意味のif節のようなまとまりのことを副詞節と言います。
そしてifがつくる副詞節は、直説法と仮定法という2つのタイプに分けられます。
どちらも「もし~なら」という意味を表しますが、その内容に応じて使い分けがあります。
以下詳しく見ていきましょう。
直説法が使われる際のポイントは、if の内容が「現実(的)であること」です。
その上で、次のような意味の文脈での使い方をすることができます。
「もしお腹が減っているなら、何か作ってあげますよ」
相手が疲れて帰ってきたとか、お腹の音が鳴るのが聞こえたといった場合、その人物が空腹であることは十分に現実的であると言えます。
そのような場合に使われるのが直説法です。
直説法のif節の中では、述語動詞は基本的に現在形が使われます。
例文では、be動詞の現在形「are」が使われていますね。
一方の主節(if節ではない方の文)では未来を表す「will」が使われています。
料理をするのは未来の話だからですが、if節の述語動詞は、その意味内容が現在か未来かに関わらず現在形が使われることに注意が必要です。
「もし明日雨が降れば、家にいるつもりです」
天気予報や空模様を見て、翌日は雨が降りそうであることを事前に予測している、つまり雨が降ることが十分現実的であると想定されているため、直説法の文となっています。
そして、if節の「もし明日雨が降れば」は明らかに未来を表していますが、現在形が使われていますね。
未来の話だからと言って、If it will rain tomorrow とはなりません。特に初級者の方はつまずきやすいポイントなので注意してください。
また主節には、will を使った未来表現以外に、命令文が来ることもあります。
「もし何か質問がございましたら、どうぞ遠慮なくお尋ねください」
これからその行為を行うことになる命令文も、広い意味では未来を表している、ということになります。
形をまとめてみましょう。
<If+S+現在形, S+will+動詞の原形 または 命令文>
※参考書では、「時制」の単元で「時・条件を表す副詞節の中では未来のことでも現在形」という項目で説明されています。確認してみてください。
「電源を切らなかったら、電池がなくなっちゃうよ」
「氷を温めれば、溶ける」
その行為が意志によるかどうかに関わらず、あることをすれば必然的にこうなる、といった習慣や法則を表すこともできます。
例文では「電源を切らない(切り忘れる)と電池がなくなる」、「氷を温めたら溶ける」という習慣や不変的な法則について述べています。
このような習慣や不変的な真理・法則は現在形で表すため、<If+S+現在形, S+現在形>の形を覚えておいてください。
直説法のポイントが if の内容が「現実(的)であること」であるのに対し、仮定法のポイントは if の内容が「非現実(的)であること」。
現実には到底起こり得ないことや、話し手がとてもあり得ないと感じていることに対して「もしも~だったら」と仮定するのが仮定法です。
仮定法には、大きく「仮定法過去」と「仮定法過去完了」の2つの形が存在し、「『いつ』のことに対する仮定か」によって使い分けます。
「もし僕が君だったら、彼女にあんな口のきき方はしないね」
「僕が君である」ことは現実的にはあり得ません。
そこで I am you の代わりに I were you と過去形の were を使うことで現実との距離を置いています。
主節の wouldn’t についても実際に口をきくわけではないので、will の代わりに過去形 would を使ってやはり現実との距離感を表しています。
このように過去形を用いることで、現在の現実から距離を置いて非現実の世界について述べるのが仮定法過去です。
「もしそのとき僕が君だったら、彼女にそんな口のきき方はしなかっただろうね」
こちらの例文では、現在ではなく、すでに終わった過去のできごとに対する仮定の話をしています。
動詞の形を見ると、過去完了形 had been と、主節では have talked が助動詞 wouldn’t に組み合わされています。
このように、「過去完了形・助動詞+have+過去分詞」の形を用い、過去の現実から距離を置いて当時の非現実の世界について述べるのが仮定法過去完了です。
それぞれ形をまとめてみます。
仮定法過去<If+S+過去形, S+助動詞の過去形>
仮定法過去完了<If+S+過去完了形, S+助動詞の過去形+have+過去分詞>
仮定法については以下の記事に詳しくまとめてありますので、ぜひお読みください。
※補足:直説法はif節に限りません。通常の平叙文や疑問文など、事実を述べるものは全て直説法です。仮定法についても、実際には if を伴わない仮定法もたくさん存在します。本記事では分かりやすさを優先し、ターゲットをif節に絞って解説しました。
if は、その代表的な意味である「もし~なら」以外にも、「~かどうか」という意味で使われることもあります。
この「~かどうか(ということ)」という意味のif節のようなまとまりのことを名詞節と呼びます。
「彼が戻ってくるかどうか分かりません」
「彼女がそれを知っているかどうか尋ねてみます」
このように、「~かどうかを知っている」「~かどうかを尋ねる」という具合に、know や ask などの中身になるのが名詞節をつくる if の役割です。
このパターンでのif節で使われる述語動詞の時制については、未来のことなら will を使ったり、現在のことなら現在形を使ったりするなど、表現したい内容に応じて適切な時制を使います。
では文中にif節が出てきたとき、どうやって見分ければよいのでしょか?
大きく2つの見分け方をご紹介します。
1つは、意味で見分けることです。
単純に「もしも~」という訳を当てはめてみて、意味が成り立つのであれば副詞節、成り立たない場合には名詞節、という具合に見分けることができます。
I don’t know if he will come back. の場合、「もしも彼が帰ってくるならば私は知りません」という訳になってしまって意味不明です。
したがって、この文のif節は名詞節である、と判断することができます。
2つ目は、文法で見分けることです。
副詞節は副詞と同じ扱いを受けるため、文の構成要素であるS・V・O・Cからは除外されます。
そのため、文全体からif節をまるごと取り除いてしまっても、残りの部分だけで完全な文が成立していることになります。
If you are hungry, I’ll cook something for you.
if節を除いた部分だけで「何か作ってあげますよ」を意味する第3文型の文が成立しています。
ということは、取り除くことのできる If you are hungry は副詞節であると分かります。
一方、名詞節は名詞と同じ扱いを受けるため、文の構成要素であるS・O・Cのいずれかに相当します。
つまり、文の構成要素になるため、名詞節を取り除いた場合、文が成立しないことになってしまうのです。
I don’t know if he will come back.
if節を除いた I don’t know だけでは know の目的語であるOが存在しないことになり、文法的に不完全です。
ということは、取り除くことのできない if he will come back は名詞節であると言うことができます。
意味だけでなく、文法的な観点からif節を広く見つめてあげる姿勢も大切だということですね。
なお、「~かどうか」の意味でのif節は、名詞節であっても主語Sと補語Cになることはできません。
つまり、名詞節としてのif節は目的語Oとしてのはたらきに注意を払っておけばよいということです。
「~かどうか」を意味し、かつS・O・Cいずれにも使うことのできる単語は whether です。
こちらの記事でも解説していますので参考にしてください。
最後に、上記いずれのやり方でも見分けにくいこともあります。
たとえば I’ll ask her if she knows it. の場合、「もし彼女がそれを知っているなら、尋ねてみます」という訳は自然に成立しそうです。
if節を取り除いて I’ll ask her「彼女に尋ねてみます」だけになったとしても第3文型として十分に解釈は可能です。
そうなれば、この文におけるif節は名詞節と副詞節のいずれもありえる、ということになってしまいます。
しかし実際の使用では、両方の意味が同時に表れることなどありえません。
あくまで文脈が重要であり、どのような状況においてこの発言がされているのか、を冷静に見極めて適切に理解することが大切です。
いかがだったでしょうか。
if は「もしも」の意味で初級者の方にとっても大変使いやすく、多用する機会に恵まれた単語です。
でもその使い方は意外と細かく、現在形と過去形などちょっとした使い方1つで大きくニュアンスが変わってしまうものでもあります。
まずは間違ってもいいので if をたくさん使ってみることで経験を重ね、慣れてきたら直説法を使うべきか仮定法を使うべきか、仮定法なら過去と過去完了のどちらを使うべきか、という具合に正確な使い方ができるように意識してみてください。
誰かが言っているのを聞いて、「ここで仮定法を使うんだな」「今のは直説法でもいいのか」とその使い方を学んでみるのも面白いでしょう。
私も映画などを観ながら、自分なら仮定法を使いたいところでネイティブは直説法を使っていることがあることに気づくなど、新しい発見を楽しみながら学んでいます。
もちろん、「~かどうか」の意味でもとてもよく使われるので、これまであまり気にしてこなかったという人はこれを機にしっかり意識するようにしてもらえると嬉しいです。