K. Inoue
(更新)
関係代名詞の who や which はなんとなくできるようになったけれど、「whose」だけはいつまで経っても慣れない、という方は多いのではないでしょうか。
実際、whose が who や which に比べると、かなり異質な匂いを放っているかのように感じてしまっている方は少なくありません。
これによって whose に対する取っつきにくさが生まれ、苦手意識に結びついてしまっているのです。
そこで今回は、関係代名詞の所有格 whose について解説していきます。
可能な限りシンプルな説明を心がけ、その上で例文をご用意していますので、この機会にぜひ whose をマスターしていただきたいと思います。
まずは関係代名詞について簡単におさらいしておきましょう。
関係代名詞とは、「<S+V>の構造を持ったまとまりが名詞をうしろから説明するときに使うもの」です。
「ロンドンで暮らしている友人」
「2年前に私が訪れた街」
どちらの例も、a friend「友人」や the city「街」という名詞について、who または which 以下が説明しています。
このように、ある名詞をうしろから説明するときに使う who や which を関係代名詞と呼びます。
そして説明される名詞は先行詞と呼ばれています。
関係代名詞には、「主格」、「所有格」、「目的格」の3つの「格」があります。
「格」というのは、代名詞などが文の中で果たす役割のことだと思ってください。
たとえば「私」という代名詞を例にとると、文中で「私は」という主語の役割を果たす場合には主格の I、「私の」という所有の役割の場合には所有格の my、「私を」という目的語の役割の場合には目的格の me という具合にそれぞれの格を用いる、ということです。
中学校で「I-my-me、you-your-you、she-her-her、he-his-him」などとリズムで覚えたと思いますが、まさにこれが前から順に「主格-所有格-目的格」の3つの格を表し、関係代名詞についてもこのような格が存在するわけです。
関係代名詞の格をまとめると以下のようになります。
ここで、先ほどの2つの例の格を確認してみましょう。
関係代名詞は「代名詞」と呼ばれているくらいですから、ある名詞の代わりに使われています。
では何の代わりに使われているかというと、先行詞です。
つまり、who や which は先行詞のことなので、それぞれ a friend と the city を当てはめて考えることができるわけです。
例①では、who に a friend を当てはめると<a friend lives in London>となります。
a friend は主語としてはたらいていることが分かりますね。
ということは、who は主格の関係代名詞である、ということになります。
例②では、whichに the city を当てはめてみると<the city I visited two years ago>となります。
語順的に分かりづらいかもしれませんが、the city はもともと I visited the city two years ago のように visited の目的語として置かれていました。
これが関係代名詞 which となって、先行詞と結びつけるために前に移動したのです。
ということは、which はそもそも目的語としてはたらいていたことになり、つまり目的格の関係代名詞である、ということになるのです。
※関係代名詞については、以下の記事で詳しく解説しています。
ここから whose について、いくつかのポイントを押さえながら見ていきましょう。
whose は3つの格のうち「所有格」と呼ばれるもので、文字通り「~の」という所有の意味を表します。
「自分の母親が歯科医である子ども」
先ほど所有格と目的格を確認した場合と同様に、whose にも先行詞 the child を当てはめてみましょう。
ただし whose は所有格なので、「~の」という意味を表すために the child’s という形にします。
(その子どもが男の子であれば his、女の子であれば her を当てはめてもよいでしょう)
すると<the child’s mother is a dentist>という形が見えてきますね。
つまり「子ども」という名詞に、「その子どもの母親は歯科医である」という説明を加えているわけです。
このように「~(先行詞)の」という役割を果たすのが関係代名詞の所有格 whose です。
別の言い方をすれば、先行詞が所有者(持ち主)で、whose 以下はその所有物(人やモノ)について説明している、ということです。
まだ分かりづらいという方は、先行詞と説明するまとまりを以下のように分けて考えてみてもよいでしょう。
whose を用いる場合には、必ず<先行詞+whose+名詞>という語順になります。
who や which は<先行詞+who/which+名詞>の場合もあれば、<先行詞+who/which+動詞>の場合もあるなど、格によって関係代名詞以下の形が変わります。
ところが whose については、「彼の+母親」のように<所有格+名詞>という切り離すことのできない絶対の語順が存在するため、常に<先行詞+whose+名詞>という語順が保たれます。
これは whose を使った文を作る際などに知っていると便利ですから、ぜひ覚えておいてください。
関係代名詞にはふつう、先行詞によって使い分けがあります。
たとえば先行詞が人間であれば who、人間以外のモノや動物であれば which といった具合です。
ところが whose に関しては、先行詞が人間でもモノでも whose を使います。
whose の who というスペルを見る限り人間のような印象を与えるかもしれませんが、必ずしもそうではないので注意が必要です。
主格と目的格の who や which は、that に置き換えることが可能です。
ところが whose は、代わりにthatを使うことができません。
これはそもそも that には所有格としてはたらく機能がないためです。
関係代名詞を勉強していると、that は何にでも置き換えられる万能薬のような印象をつい持ってしまう方もいらっしゃると思いますが、whose に関してはさすがの that も役には立てないので注意してください。
目的格の関係代名詞は省略することができますが、whose は省略することができません。
所有格にはそれ自体に「~の」という重要な意味が含まれており、これを省略してしまうとその大切な意味を失ってしまうのです。
ではここで、whose を用
いた例文を見ていきましょう。
ここまで解説してきたことを押さえながら読んでみてください。
「その屋根の色の赤い家を見て」
「母親が1カ月も病気で寝込んでいるという少年を知っているかい?」
「『ユートピア』というタイトルの本を探しているのですが」
「彼が、自分の歌が何百万もの人に歌われているというミュージシャンだよ」
「あのてっぺんが雪で覆われた山が見えますか?」
「私は(私が彼の)名前を思い出せない少年と話しました」
「意味の分からない単語を見つけるために辞書を引くべきです」
whose はカタい印象を与えるので、実際の会話では with を用いることが多くあります。
「その屋根の色の赤い家を見て」
「『ユートピア』というタイトルの本を探しているのですが」
「あのてっぺんが雪で覆われた山が見えますか?」
もちろん、あらゆる文脈において、whose が常に with に置き換えられるわけではありません。
しかし前置詞 with を用いた方が、文の形としてもシンプルになり好まれやすいのです。
いかがだったでしょうか。
関係代名詞の中でも whose は使い方に慣れが必要なものです。
理屈を理解することができたら、あとは例文を何度も音読して、自然に口をついて出てくるようになるまで慣れ切ってください。
そうすれば他の関係代名詞と比べても違和感なく受け入れることができるようになります。
そしてすっかり慣れることができれば、今度は with を用いたパラフレーズ(言い換え)に挑戦するなど、ご自身の表現の幅を広げる練習を重ねてさらなる英語力向上に役立ててもらえれば嬉しいです。