さな
(更新)
「ベン図」。
「モールス信号」。
これらの言葉の共通点はご存じですか?
察しのいい方はもうお気づきかもしれませんね。そうです、すべて人の名前に由来しているのです!
きんぴら(金平)は、江戸時代初期に流行した人形浄瑠璃「金平浄瑠璃」の主人公「坂田金平」の名前にちなんでいます。ベン図は、考案者であるイギリスの論理学者、ジョン・ベンの名が付けられたチャートです。そしてモールス信号はアメリカの電気技師でモールス符号を発明したモールス教授の名前に由来しています。
今回は、このように人の名前が語源である英単語10選をご紹介していきます!
人の名前に由来する言葉は eponym(エポニム)と言います。また、地名やモノの語源となった人物自体を指すこともあります。
では、さっそくどのような言葉が該当するのかを見ていきましょう!
カーディガンは、誰もがおそらく1着は持っているでしょう。
そんなカーディガンという言葉自体は、James Thomas Brudenell, 7th Earl of Cardigan(第7代カーディガン伯爵ジェームズ・トーマス・ブルーデネル)に由来します。
カーディガンという名前は、クリミア戦争のバラクラヴァの戦いで「軽騎兵の突撃」を指揮したブルーデネルにちなんで付けられていて、当時英国陸軍士官たちが着ていたウールのウエストコートが元となっているそうですよ!
では、由来がわかったところで、次は「カーディガン」を英語で説明してみましょう。
デシベルとは、信号の強度を表す単位の一つで、「ベル」(bel)の10分の1を表すものです。
deci- という接頭辞は「10分の1」を表していて、bel の部分は、電話の発明者 Alexander Graham Bell の苗字に由来しています。
deci- のような数字を表す接頭辞は「倍数接頭辞」と言います。これを特集している記事もありますので、ぜひ併せて読んでみてくださいね。
サウナ施設やホテルへ行くと、よくジェットバスが設備されていますよね。
このジェットバスのことを「ジャクジー」と呼んでしまうことはありませんか? 日本語では jacuzzi のことを「ジャクジー」「ジャグジー」または「ジャクージ」などとさまざまな名称で呼ぶことがありますね。
しかし、ジャクジーはモノの名前ではなく人の名前に由来する「ブランド」なのです。つまりすべてのジェットバスがジャクジーというわけではありません。
20世紀にイタリアからアメリカ・カリフォルニア州に移住した Jacuzzi family の名前に由来します。1968年に、Roy Jacuzzi(ロイ・ジャグジー)が世界初の一体型ジェットバス「Roman(ローマン)」を開発し、それ以降 Jacuzzi は世界中で高い人気を誇り、名称も広く定着しました。
ちなみに、「ジェットバス」は和製英語なので、海外では通じません。正しくは hot tub または whirlpool bath です。
バレエや新体操などのスポーツで、ダンサーや選手が全身タイツのようなものを着用していますよね。これを leotard(レオタード)と呼びます。
レオタードは1860年ごろに発明され、フランスのサーカス団の人気ブランコ乗り・Jules Léotard(ジュール・レオタード)が着ていたことにちなんで命名されました。
Mesmerize とは、「魅了する」や「魅惑する」を意味する言葉です。イギリス英語では mesmerise とスペルします。
この言葉の語源は、18世紀のドイツの医師 Franz Anton Mesmer(フランツ・アントン・メスメル/メスマー)にさかのぼります。彼は、動物磁気と呼ばれる体内磁力に関係する病気に関する理論を確立しました。これは後に mesmerism(メスメリズム)と呼ばれるようになります。
また、この治療法は、現代の hypnotism(催眠術)の前身となるものでした。メスメルは、ヨーロッパのいくつかの首都で、裕福な貴族の顧客にこの論争の的となる療法を提供することにそのキャリアを費やしました。
Pilates は、1920年ごろにサーカスのパフォーマー、ボクサー、そして護身術のインストラクターとして活動していたドイツ人の Joseph Pilates(ジョセフ・ピラティス)が考案したエクササイズです。
ジョセフ・ピラティスは、第一次世界大戦中、他のドイツ国民とともに抑留されました。このとき、彼は仲間の抑留者にフィットネスについて教えることで、さらに体力をつける技術を身につけたそう。
戦争後期には、ピラティス氏は病院で看護師として、歩けない患者を治療していました。彼は、患者の手足を支えるために病院のベッドにベッドスプリングを取り付け、これはのちに「Cadillac(キャデラック)」と呼ばれる有名な器具の開発につながります。
そして、ピラティス氏は1920年代初頭に妻のクララとともにアメリカに移住し、1926年にはニューヨークで「body-conditioning gym(ボディ・コンディショニング・ジム)」をともに開きます。それから2人は一緒にピラティスのメソッドを開発し、指導し、今でも大人気な運動法の始まりとなったのです。
たまご、ハム、海老カツ... サンドウィッチはさまざまな種類があり、誰もが気軽に食べられることから、どの世代でも楽しめる一品ですよね。
この言葉は、John Montagu, 4th Earl of Sandwich(第4代サンドイッチ伯爵ジョン・モンタギュー)という方が、ギャンブルをする際にまともな食事をとらず、パンに挟んだ冷たい肉のスライスを食べていたことにちなむと言われています。
この楽器の名前は、1840年頃にサクソフォンを考案したベルギーの楽器職人、Antoine Joseph "Adolphe" Sax(アントワーヌ・ジョセフ・『アドルフ』・サックス)の名を取り、ギリシャ語由来の接尾辞 -phone(声を出す、音を出す)をくっつけたものです。
アドルフは、父がさまざまな楽器の製作者だったため、小さい頃から楽器とともに暮らしていました。アドルフはブリュッセルの音楽院でフルートとクラリネットを学び、1842年にパリに渡ります。
そこで彼は saxophone(サクソフォーン)を発表し、1846年に特許を取得しました。
あの可愛らしいテディー・ベアも実は人の名前に由来しているということをご存じですか?
1902年に、アメリカの26代目大統領の Theodore Roosevelt(セオドア・ルーズベルト)がミシシッピ州にクマ狩りに出かけたのが始まりです。3日間の狩猟の間、他のメンバーはクマを発見するなか、ルーズベルトだけが発見できないまま時間が過ぎます。
大統領のクマ狩りが失敗に終わらないように、ガイドたちは襲ってきた年老いたブラックベアを追跡し、そのクマを柳の木に縛り付け、大統領に撃つよう呼び寄せます。
しかし、ルーズベルトはその老熊を一目見て、スポーツマンシップに反するということで、撃つことを拒むのです。
この話は全米の新聞に掲載され、政治漫画家の Clifford Berryman(クリフォード・ベリーマン)が取り上げ、狩猟中のルーズベルト大統領がクマを撃つのを拒否した様子を漫画にしました。
そこで、ニューヨーク州の菓子店主モリス・ミクトムという方がこの漫画を見て、妻が作ったクマのぬいぐるみ2体を店のウインドウに飾ります。そしてミッチョムがルーズベルト大統領に、これらのクマのぬいぐるみを「テディ・ベア」と呼ぶことを許可してもらったことがテディ・ベアの始まりです。
今では誰もが使っているタッパー、本来の名称でタッパーウェアですが、これも面白い始まりですよ。
1945年の秋、Earl Tupper(アール・タッパー)というプラスチックメーカーが、プラスチックの原料であるプラスチック樹脂をBakelite Corporation(ベークライト社)に発注しようとします。
しかし、材料が不足しており、ベークライト社ではこの注文に応じられません。代わりに、当時はまだ何の役にも立たないと思われていたポリエチレン・スラグという、石油精製過程で発生するゴム状の副産物を渡されます。
それでも諦めなかったタッパー氏は、何ヵ月もかけてポリエチレン・スラグの配合を変え、Poly-Tと呼ばれるものを開発します。これは、軽くて半透明で無臭、そして柔軟性と耐水性にすぐれ、高温にも低温にも強いポリエチレンのことです。
やがて彼は、Poly-Tを色鮮やかなカップやボウルなどの家庭用品に成形する方法を考え出します。
その1年後、タッパー氏は自身のもっとも画期的な発明となる「エアタイトシール(密封するフタ)」の特許を取得します。このフタは、タッパーウェアの容器とフタの間にこぼれない密閉性を持たせたものです。
そしてタッパー氏は初めての密閉容器を「Wonderbowl(ワンダーボウル)」と名付け、これがタッパーウェア社の土台となり、世界的なキッチン革命が始まったのです。
人の名前に由来する言葉は意外とたくさんあります。
今回はそのなかから10個選んでみましたが、聞いたことのある話はありましたか?
病気の名前や料理の名前、またはスポーツの技など、さまざまな場面でエポニムは使われています。
そして日本語にも意外と多いようです! 今回ご紹介した言葉の他にも、日々使っている単語のなかに人の名前に由来しているものがたくさん潜んでいるかもしれませんね。