Naoya Okada
(更新)
"about" と言えば、中学英語で登場する "How about you?"(あなたはどう?)の「〇〇について」や、「大体」の意味を表す日本語の「アバウト」からなんとなくイメージが湧いてきます。
ところが、英語圏では "the other way about"(あべこべに)や "I’ve set about the work."(ちょうど仕事を始めたところなんだ)のように日本人にはイメージがしづらいものが多くあります。
今回は "about" の正体と、そこから生まれる複数の意味を徹底解説。
また後半では、英語歌詞によく登場する "thinking bout" の "bout" についても紹介させていただきます。
"about" の本質的なイメージ(=コアイメージ)は、「ザックリとした周辺」「ボヤッと周辺」です。そこからさまざまな意味が生まれてきます。
さて、コアイメージを深く掘り下げる前に、まずは "about" のメジャーな意味を確認してみましょう。主要な意味は2つあります。
"about" は「〇〇について」「〇〇に関して」の意味があり、 「今から話題にするものがザックリと何に関するものか」を提示するときに使います。
John talked about the news.
「Johnはそのニュースについて語った」
"about" には、「およそ」「だいたい」「約」の意味もあります。
こちらは日本語の「アバウト」と同じ。「その説明アバウトすぎるよ」「見積もりがアバウトだね」のような言い方をしたりしますが、これらとおよそ同じ意味です。
I got up at about 6:30 this morning.
「今朝はだいたい6時30分頃に起きた」
主要な意味を2つ確認したところで、さらに細かい意味を8つ確認してみましょう。
My daughter always leaves her clothes lying about on the floor.
「娘はいつも床に洋服を散らかしっぱなしにするんだよね」
"about" の本質「ザックリ周辺」→「あちこちに」「〇〇のあたり」の意味です。
「明確な目的もなくあちこちにある」という意味が込められるため、例文のようなマイナスなニュアンスを含む場合が多いのです。
"There is something 形容詞 about 〇〇" で、「〇〇はどこか(形容詞な)ところがある」という意味。
「ザックリ周辺」というコアイメージによって、「その人や物に漂う雰囲気」までも示すことができます。
What are you about?
「何してるの?」
Can you get me a spoon while you are about it?
「ついでにスプーンをとってきて」
"about" には「従事」の意味もあります。
ほとんどが決まり文句ですが、とてもよく使われる "set about 〇〇" は「〇〇に取りかかる」です。"set" は「置く」ですから, 「仕事の周辺に自分の身を置く」→「仕事に取り掛かろうとしている状態」がイメージできますね。
"What are you about?" は「何をしているの?」の意味で、利用頻度はとても低いですが "What are you doing?" の代わりに使うことができます。「何に従事しているの?」→「何をしているの?」ということですね。
"while you are about it" は「ついでに」です。キッチンに何かを取りに行くついでに、スーパーに行くついでに、という文脈で使います。"while" は「〜している間」ですから、「それに従事している間に」→「ついでに」と考えるといいでしょう。
Hey, it’s about time you got up.
「ねえ、もういいかげん起きる時間だよ」
主として会話の中で使われる表現。"about ready" は「ほぼ準備できた」の意味で、この場合の "about" は "almost"(ほとんど)と同じ意味だと考えるとよいでしょう。
"It’s about time SV"(もういいかげん〜する時間だよ)は仮定法表現で、V は過去形になるので気をつけてください。2つ目の例にように、我慢の限界という気持ちさえも込められます。
The ship turned about.
「船はくるりと向きを変えた」
「周辺」はくるりと回っているイメージが持てますね。
Move it the other way about.
「それを反対に動かして」
「反対の位置に」「反対の方向に」の意味があります。
代表例は "the other way about"(反対方向に、あべこべに)です。例文のように、事実の逆や物の逆を表すことができます。
ただし最近では、"the other way around" のように "about" を "around" にするほうが一般的ではありますので、"the other way around" で覚えておきましょう。
"be about to do" は「今にも〇〇しかけて」「まさに〇〇することだ」です。
"up" と一緒に使い, "up and about" で「(ベッド/病床から)起きて動き回っている / 起きて働いている」の意味になります。
ちなみにこの例文の "around" は、「およそ」の "about" と同じ意味。"around" は "round"(円)を語源としているため、「何かの周りをぐるりと回る」イメージがあります。
この意味では "The earth goes around the sun." が特に有名です。「周り」→「だいたい」となります。日本語なら「アラフォー(Around forty)」のイメージですね。円を描きますので, “about” ほどの漠然感はありません。
"about" の本質的なイメージ(=コアイメージ)は、「ザックリとした周辺」「ボヤッと周辺」です。
ある中心となるものの周辺を漠然とぼんやりと指す、イメージ。数値を表す場合には「およそ」になることもこれでスッと腑に落ちますね。
しかし、私たちにとって理解しづらい "about" の意味は、⑧〜⑩の動的なイメージではないでしょうか。
実はこれ、"out" に注目すると納得できます。
"about" の "out" は「外」の "out" なのです。「アウトドア」の "out" ですね。この "out" により、「ザックリ周辺」は「外」に向かっていくイメージも伴うわけです。
あるものの周辺から外に行けば、中心と逆になりますから「逆方向へ」となります。
ベッドから出る動きは「外」へ向かいますから、"up and about" は "up"(上体を上げて)+"about"(ベッドの外へ)と考えればよいでしょう。また "come about"(生じる)といった有名イディオムも、"out" のイメージを捉えれば容易に想像できますね。
"about" は「ザックリ周辺」を示すため、その対象に関する「関連情報」を示すのにうってつけです。
中心となるものの周りにある情報のどれを語るかを示すため、「関連」→「〇〇について」と考えることができるんです。
〇〇は「人」でも「物」でも構いません。
I’m thinking bout you.
「あなたのことを考えているの」
John talked about the news.
「Johnはそのニュースについて語った」
How about going to Starbucks?
「スタバに行くのはどう?」
"worried" には "about" を使います。「ボヤッと周辺」の「ボヤッ」という曖昧な雰囲気は「モヤモヤ」とした不安な気持ちとつながります。だから "about" が絶好の語なんです(これで⑥の「いいかげん」の意味が生まれた理由も納得いきますね)。
「〇〇について」は他にも "of" 【about よりも軽く触れるようなイメージ】や、"on" 【専門的な事柄に触れるようなイメージ】もあるのですが、ここでは "about" なんです。
"How about 動名詞?"「するのははどう?」は「提案」の定番表現ですが、直訳すると「スタバに行くことに関してはどう?」ということです。
ここで、ちょっとした発音の知識をご紹介します。
2つ目の例文の "bout" をご存知ですか?
Ariana Grande さんの人気曲のタイトルとしても有名ですが、英語歌詞に登場す "Thinking Bout You" の "Bout"= "About" です。
英語では発音のルールとして「アクセントがおかれていない母音は基本的に『あいまい母音(英語では“Schwa”って言います)』で発音する」というルールがあります。
とても弱く暗くこもった発音のため、ほとんど聞こえません。昔アメリカ人をメリケン人と言っていた時代がありました。"American" のアクセントは "e" にありますので、"A" があいまい母音になり、昔の日本人は聞き取れなかったんですね。
"About" のアクセントは "ou" にありますから, 最初の "A" があいまい母音。したがって、「アバウト」ではなく「バウト」に聞こえるので、スペリング上も "bout" という表記がされるということです。
ただし、このような省略は書き言葉では友人や家族同士といったカジュアルな場面の利用が基本です。だからこそ曲のタイトルや歌詞に登場します。ビジネスシーンでの利用は避けましょう。
英語には主要母音である a e i o u がありますが、これ以外に「あいまい母音」という音が存在し、a e i o u のようにはっきりした発音がされずに適当に発音されます。だから「あいまい」というネーミングなのです。
英語では「シュワー(Schwa)」と呼ばれ、発音の仕方は①口に力を入れずリラックスさせる→②口を半開きにする→③この状態で、暗くこもった感じで「ア」と言う。
すると、「ア」や「ウ」や「エ」が混じったような音に聞こえます。弱く短いため聞こえないことも多い語です。
「ザックリ周辺」→「だいたい、およそ」のイメージにつながります。
主に、about+数値 となり、時間や量といった数をアバウトに語るときに使います。
I got up at about 6:30 this morning.*
「今朝はだいたい6時30分頃に起きた」
My weight is about 60 kilograms.
「体重はだいたい60キロくらいですね」
* 6:30はくっきりしていますが、"about" をつけることで、その周辺 6:26 – 6:34 のように前後も漠然と表すことができます。
"about" が持つさまざまな意味をご紹介しました。
"about"のように多くの意味を持つ語を丸暗記することは本当に苦しいことだと思います。
それは現実味が感じられないことが大きな理由でしょう。そういった場合は、本質的なイメージ(=コアイメージ)を掴むことで、なし崩し的に打開できることが多いのが英語です。
"about" には「ザックリ周辺」のイメージが中心にあること、さらには "out" のイメージも意識することで、10個ある "about" の意味も腑に落ちたのではないかと思います。
是非、本記事を今後の英語学習に役立てていただければ幸いです。