K. Inoue
(更新)
「実は…」という一言を会話で使うことは多いものです。
言いにくいことを伝えるときの前置きや、相手をがっかりさせたり怒らせたりするかもしれないようなことを言い出すきっかけとしてよく使います。
逆に、何か良いことがあったことを言いたいときに使ったりもしますね。
いきなり本題をぶつける前に、たった一言で印象をやわらかくすることができ、相手との良好な関係を保つためにとても大きな役割をはたしてくれるのが「実は…」です。
「欧米人は物事をはっきりと言う」とよく言われますが、そんな欧米人であっても、なんでもかんでもいきなりストレートにぶつけるというわけではなく、英語でも「実は…」はとてもよく使われています。
今回は、そんな「実は…」を表す英語表現を、細かなニュアンスの違いにも触れながらご紹介します。
「実は…」を表す英語で絶対に覚えておきたいのが actually です。
これは「実際に・本当に」を表す単語で、相手の予想や期待とは違うことを言うときの「実は…」の意味でとてもよく使われます。
残念なことや言いにくいことを伝える使い方を見てみましょう。
「今夜パーティーには来るの?」
「実は、やらなきゃいけない仕事がたくさんあってね」
自分がパーティーに来ることを期待している相手に対して、その期待にそえないことを遠慮がちに伝えている雰囲気が生まれています。
お次の例はどうでしょう。
「君はきっとテストに受かったんでしょうね」
「実は、落ちちゃったんだ」
この会話も、テストに受かったと思っている相手の期待に反することを、言いにくそうに伝えている様子が感じ取れます。
「昨夜の映画どうだった?」
「実は、観てないんだよ」
自分が映画を観たと思い込んでいる相手の予想とは裏腹に、実際には観ていないことを伝えています。何らかの事情があったことを思わせるような雰囲気が伝わってきますね。
このようにたった一言 actually が加わるだけで、「言いにくいんだけど」「残念だけど」というニュアンスが伝わり、会話の空気がやわらかくなるのです。
逆に、良いことを伝えることもできます。
「試合はどうだったの?」
「実はさ、勝ったんだよ!」
相手はひょっとしたら、試合に勝てるとは思っていなかったのかもしれません。その不安を吹き飛ばすような勝った喜びが伝わってきます。
「今日はあまり疲れてないといいんだけど」
「実はね、9時間くらいも寝たんだよ」
「心配ご無用」と言わんばかりに元気な様子が伝わってきます。
このように actually を良い意味で使う場合には、相手の不安や心配を一気に取り除くことができるのですね。
「実は…」以外にも、もともとの意味である「実際に・本当に」の意味でももちろん使います。
「彼は本当にホームランが打てると思う?」
また、特にくだけた会話では、話の転換や相手の注意を引くために、「ねえ」「あのさ」のようなニュアンスで文脈に関係なく、いきなり actually で会話を始めることもあります。
「ねえ、今日は野球の練習に行きたい気分じゃないんだよね」
筆者も高校時代にアメリカで、友人が教室の扉を開けて入ってくるなりいきなりこのように言うのをよく見聞きしていました。
さらに、気が変わったときに「やっぱり」という意味で使うこともあります。
たとえばレストランでの次のようなシーンで actually が登場します。
「グラスワインをいただきます。ああ、やっぱりビールをいただけますか?」
actually に次いで覚えておきたい、会話で多用されるフレーズがあります。
それが The thing is~.とThe truth is~.です。
The thing is~.は直訳すると「そのもの(こと)は~」という意味で日本語的には意味不明ですが、英語では「言いたいことは~」のようなニュアンスで、「大事なことはね…」「実は…」の意味でとてもよく使われます。
「実は、彼らは別れたんだよ」
The truth is~.は「真実は~」が直訳ですが、これも「ホントのことを言うとね・実はね」という意味で使われます。
「実は彼女はうそをついているんだよ」
どちらのフレーズにも、「話のポイントはね…」「言いたいことはね…」という含みがあり、「大切なことを伝えたい」ニュアンスがあります。
in fact という表現もあります。
fact は「事実」という意味を表していて、in fact で「実際は」というフレーズになります。
あることがらとは違う内容や否定的なことがらを言いたいときに、in fact を使うことができます。
「たくさんの人が彼は良い人だって言うけど、実は僕は彼のこと好きじゃないんだよね」
「良い人」という肯定的な意味を、「好きじゃない」という否定的な意味でひっくり返していますね。
述べたことがらを強調したり、自分の考えを補足したりするときに使うこともできます。
「あいつはそんなに良いやつじゃないよ。実際のところ、いつもみんなをからかってばかりなんだ」
「良い人物ではない」という否定的な意味に、さらに「人をからかってばかり」という否定的な意味を加えて補足しています。「良いやつじゃないばかりかいたずら者だ」という具合に強調している響きも生まれています。
なお、fact に「事実」という意味があることから、in fact には客観的に根拠があるとか、確信を持って言えることがらについて述べるというニュアンスがあります。
そのため、何かを論理的に説明する書き言葉においてもよく使われています。
次からご紹介する英語フレーズは、「実は…」の日本語訳からは多少離れてしまうかもしれませんが、「言い出しにくいことを言う」きっかけという意味では同じなので、ぜひ覚えておきたいフレーズです。
to tell (you) the truth は、「(あなたに)本当のことを言うと」が直訳で、つまり「実は…」という意味で使われます。
「実を言うと、私にはあまり時間が残されていないのです」
「正直に言うと」という意味のフレーズで、「自分の気持ちを正直に伝えたい」というニュアンスを出したいときにはこの表現がぴったりです。
「正直言って、やっぱりそんなことすべきじゃないと思うよ」
これも「正直に言って」とか「率直に言うと」という意味で、包み隠さずハッキリと言いたいことを伝えるときに使います。
「率直に申し上げますが、あなたのご提案には興味がございません」
【プチ文法講座】
ちなみに少しだけ文法の話を追加すると、上記3つの表現はすべて「to不定詞(to+動詞の原形)」を用いた表現です。
少し不思議な話ですが、「to不定詞」の中には、文法的な使い方に関係なくひとつのまとまった意味として使われるフレーズがあり、これを独立不定詞と呼びます。
上記の3つのフレーズがまさにこれにあたります。
高校英語を学習していらっしゃる方は、文法参考書の「不定詞」のところを見ていただければ、上記を含めてたくさんの独立不定詞が紹介されていますから、ぜひ項をめくって確認してみてください。
いかがだったでしょうか。
「実は…」という日本語一つとっても、実は(…)たくさんの表現方法があります。
それはつまり、「実は…」の裏側に多様な人間模様が存在しているということでもあります。
その証拠に、言い出しにくいことを言わなければならない場面や、逆に相手の予想を超えて意外なことを伝えたい場面など、「実は…」で会話を切り出したいことは日常的にたくさんあるのではないでしょうか。
今回ご紹介したそれぞれの英単語やフレーズを、そのニュアンスとともに使いこなして、スムーズな会話につなげていただければ嬉しいです。