
奈都香
(更新)
「猫の手も借りたい」「負け犬の遠吠え」など、日本語には動物の名前を使った慣用句があります。
実は英語にも同じように動物関連の慣用句が多くあります。
単語を知っていても、文化的な背景まで理解していないと意味がわからない場合もあるため、新しい言語を学ぶときに躓きがちな慣用句。英語の慣用句もその由来から学ぶと「なるほどなぁ」と感心してしまうものばかりです。
特に海外ドラマや英語では、このような慣用句を映像を用いてジョークにするシーンがたくさん出てくるので、覚えるとますます楽しめること間違いなし!
今日はよく使われる動物の名前が含まれる慣用句を15個ご紹介したいと思います。
●直訳:部屋の中にいる像
★意味:この場で触れてはいけない話題
その場にいるみんなが認識しているが、あえて触れずにいる話題のことを言います。
イメージで言うと、部屋の中に象がいて、大きくて気づかないわけがないのに、誰も「象がいるね!」とは言わないようにしている状況です。
「ジョンとケイトがパーティーにきてて驚いたよ。一緒に来たのかな?別れたってきいたんだけど」
「ね?みんな気になってたけど聞けなかったよね」
●直訳:一つの芸当しかできない子馬
★意味:特技が一つしかない、売りが一つしかない
"trick" は "trick or treat" や "trick art" などの「いたずら」という意味のほかに、「芸、技」という意味もあります。
スケートボードの技はトリックと言いますよね!
「 あの人またあの歌うたってるの?」
「 売りが一つしかないからね」
●直訳:ライオンの取り分
★意味:ほとんど、大部分
ここで使われる "share" は「シェア率」や「シェア独占」といった表現に使われる言葉です。
もともとイソップ寓話の一つ、「獅子の分け前」から由来した慣用句です。ライオンが大きくて強いので、捕まえた獲物のほとんどを自分のものにしてしまうためこの様な言い回しをします。
物語を読むと慣用句のニュアンスがつかみやすいですよね。ぜひ語源となったイソップ寓話も読んでみてください。
「 予算会議どうなった?」
「 予算のほとんどはオンライン広告に使われることになったよ」
●直訳:馬を抑えて!
★意味:おちついて!ちょっとまって!
焦って何かをしようとしている相手に「落ち着いて!」「ちょっと待って!」と急いで伝え、制止する時に使う表現で、”Wait a moment” と同じような意味です。
馬や馬車の手綱をひいて止める動作を指すフレーズが転じてこの意味で使われています。イメージしやすく、覚えやすい慣用句だと思います。
「 今日の晩御飯メキシコ料理にしない?」
「いい考えだね!」
「じゃあ電話して予約とっとくよ」
「ちょっとまって!まずみんなにも聞いてからじゃないとね。」
●直訳:猫のニャー
★意味:すばらしいもの
1920年代に流行ったフレーズで「すばらしい」「おしゃれな」「すてきな」という意味をもちます。
今使うと少し古めかしく聞こえますが、かわいらしいフレーズですよね!
「素敵なドレスね!おしゃれだわ」
●直訳:猫をカバンの中から出す
★意味:うっかり秘密を漏らす、暴露する
昔、悪い商人が子豚の代わりに猫を袋に入れて売り、購入した人が家について袋を開けたら猫が出てきた、という話があります。
商人の袋から猫を出してしまうとウソがバレるので、「誰かが袋から猫を出す」=「秘密をバラしてしまうこと」という意味で使われるようになったのだそうです。
「どうしてセーラは私たちが企画してたサプライズパーティーのことについて知ってるの?」
「誰かがうっかりバラしちゃったんだよ」
●直訳:イタチのように逃れる
★意味:こそこそと逃れる
英語圏では、イタチは人や他の動物からさっとものをとったり、こそこそ逃げ回るずる賢いイメージがあります。
そのため「イタチのように逃げる」のは「こそこそと」もしくは「ずる賢く」逃げることを指します。
「ジョンは?掃除の手伝いするはずじゃなかったっけ?」
「うまく逃げたんだよ。先生に病院に行かなきゃいけないと言って帰っていった」
●直訳:寝ている犬は寝かせておく
★意味:そっとしておく
日本語でいう「寝た子を起こすな」と似たような意味を持っているフレーズです。犬も子供も寝ているときはおとなしいですが、起きたら吠えたり泣いたりと大騒ぎなので、余計なことはせずそっとしておくのが一番ですよね。
これも考えてみると意味が分かるフレーズですが、ぱっと会話に出てきたらピンと来ないこともありますので覚えておきましょう。
「 彼、浮気のことしらないの?」
「首を突っ込まない方がいいわ。そっとしておきなさい」
●直訳:ガンを追う
★意味:骨折り損
この表現の由来には諸説あります。もともとは馬のレースの種類の一つで、一頭の馬がリードして先を走り、その後を複数の馬が(空を飛ぶガンの群れのように)V字の隊列を組んで走る競技のことを指していました。
しかし次第に野生のガンを狩ることが大変で無駄骨に終わることに関連付けられ、「無駄骨」「骨折り損」という意味で使われるようになったそうです。
「彼の新しいプロジェクトどう思う?」
「 無駄骨だと思うよ」
●直訳:水から出た魚のような
★意味:場違い
本来、魚は水の中にいるべきなのに水から出てしまったら息苦しく、落ちつかないことをイメージしたフレーズです。
「水から出てしまって息苦しい、落ちつかない」と感じているのは魚本人であるため、どちらかというと場違いだと感じている本人が使うフレーズです。
「 大学の調子どう?」
「 なんか場違いな感じがして馴染めてないかな。慣れるまで時間がかかりそうだよ」
●直訳:鷹のように見る
★意味:注意深く見る
鷹は猛禽類で非常に視力がよく、遠くの獲物を見逃しません。そのため、何かを注意深く見るときに使われる表現です。
ただし、比較的近くにあるものに対してはあまり使いません。あくまでも鷹が遠くにある獲物を見つけるように、注意深く見ているというニュアンスです。
「 先生は、生徒がテストでカンニングしないように注意深く見張っていた」
●直訳:寒い七面鳥のようにやめる
★意味:きっぱりとやめる
由来には諸説ありますが、一説ではヘロイン中毒者がきっぱりとヘロインをやめると、禁断症状で体がとても寒く感じ鳥肌がたつためと言われています。
この鳥肌が「冷たい七面鳥」の肌に似ているので、この表現が生まれたとのことです。
「もう禁煙したの?」
「うん!きっぱりやめたよ!」
●直訳:赤いニシン
★意味:本題から目を逸らさせるための偽情報、本題からかけ離れた紛らわしい情報
このフレーズは、猟犬が獲物のにおいを正確に嗅ぎ取れるよう、狩りの訓練時に燻製ニシンの強烈なにおいを使って惑わせたことから由来しています。
由来を知らないと意味が検討もつかないイディオムなので、しっかり覚えておきたいですね。
「 あの映画俳優が結婚したって聞いた?」
「うん、でもあれって別のスキャンダルを隠すための話題だよね」
●直訳:パンツの中にアリがいる
★意味:じっとしていられない
パンツの中にアリがたくさん入ってきて歩き回っていたらどうしますか?
きっと小刻みに体を動かしたり、立ったり座ったりそわそわしてじっとしていられないですよね?このフレーズはまさにそのような状態を意味します。
「今日の授業どうだった?」
「うるさかったわよ。小さい子ってみんなじっとしていられないから」
●直訳:ハエをも傷つけない
★意味:やさしい、おとなしい
日本語でも「虫も殺さない」と言うことがありますが、それと使い方も意味も同じです。小さくて弱い虫にすら暴力をふるわないような優しい、おとなしい性格を指します。
“hurt” のほかにも ”wouldn’t harm a fly” と、同じく「傷つける」という意味の ”harm” を使う場合もあります。
「おじいさんはどんな人だったの?」
「軍人だったけど、虫も殺さないような優しい人だったよ。」
動物の名前を使った慣用句15選、いかがでしたでしょうか?
慣用句の中には “The cat’s meow” のように今では少し古く感じる表現もありますし、日本語でさえ慣用句なんてそんなに使わない、と思う人もいるかもしれません。
しかし、ドラマの作中などでキャラ作りのためにあえて古い慣用句を使うこともよくあります。映画や本が好きな方は作者や監督の意図をより深く理解するためにも覚えておくと楽しいと思いますよ!