英語学習者の方々が最も悩まされる単語の一つに “as” があります。
「~と同じくらい」「~として」「~しながら」「~なので」「~だけれども」…
などなど、たった二文字の基本単語ですが、その意味の多様さや使い方の幅広さにくじけそうなった経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、改めて “as” の使い方をまとめ、どのように“as”と付き合っていけばよいのか解説していきます。
1. 原級比較におけるas
“as” の使い方で最初に押さえておきたいのは原級比較での使い方です。
原級比較は比較構文の一つで、<A as 原級 as B>の形で「AはBと同じくらい~」という意味を表します。
- 【使用例】
- He is as tall as John.
「彼はジョンと同じくらい背が高い」 - Yumi swims as fast as Jenny.
「ユミはジェニーと同じくらい速く泳ぐことができる」
否定文では<A not as 原級 as B>の形で「AはBほど~ではない」という具合にAの程度の低さを意味することになります。
- 【使用例】
- Mike is not as kind as Tom.
「マイクはトムほど親切ではありません」
このような原級比較で用いられる二つの “as” は、細かく言えば一つ目が副詞、二つ目が接続詞または前置詞として機能しています。
ですがこの構文に関してはあまり品詞にこだわらず、まずは二つの “as” が原級を挟み込む形になって「同じくらい~」の意味を表すことを覚えておいてください。
※なお、原級比較については『大人のやり直し中学英文法vol.14』でも詳しくご紹介していますのでご覧ください。
2. 接続詞のas
ここからは “as” の品詞ごとの使い方を見ていきます。まずは接続詞です。
接続詞はSV構造を持った二つの文をつなぐ働きがあります。接続詞 “as” が表す主な意味は以下の通りです。
①〔時〕「~しているとき」「~しながら」
- 【使用例】
- As I was getting off the train, I saw Mr. Tanaka.
「電車を降りようとしていたときに田中さんを見かけたよ」
※“when” よりも同時性が強く、まさにそのときに、といったニュアンスがあります。
②〔様態・状態〕「~のように」「~のまま」
- 【使用例】
- Do as I told you.
「言ったようにしなさい」 - Please stay as you are.
「どうかあなたのままでいてください(あなたらしくいてください)」
③〔比例〕「~につれて」
- 【使用例】
- You will understand it as you grow older.
「歳を重ねるにつれて理解できるようになるよ」
④〔理由〕「~なので/だから」
- 【使用例】
- As it’s Sunday today, I don’t have to go to work.
「今日は日曜日なので仕事に行く必要はありません」
⑤〔譲歩〕「~だけれども」
- 【使用例】
- Rich as he is, he doesn’t seem happy.
「裕福だけれども、彼は幸せそうには見えない」
※<名詞/形容詞/副詞 as SV>の語順で「~だけども」を表します。
疑似関係代名詞
接続詞の “as” が、先行詞(多くは直前の名詞や文)を修飾する関係代名詞と同様のはたらきをする場合があります。
これを疑似関係代名詞と呼びます。
- 【使用例】
- I bought the same watch as you (bought).
「私はあなた(が買ったもの)と同じ腕時計を買いました」
※“as” 以下が“the same watch”を修飾しています。 - He came to school late, as is usual (with him).
「彼は学校に遅刻してやってきたが、(彼には)いつものことだ」
※“as” 以下が前半の文の内容を受けて説明しています。
疑似関係代名詞の “as” を “which” に置き換えてみると分かりやすいでしょう。
3. 前置詞のas
次に前置詞としての “as” を見ていきましょう。
前置詞はその後ろに名詞(のまとまり)を置くものです。名詞の前に置くもの、ということで前置詞と呼ばれています。
前置詞 “as” が表す主な意味は以下の通りです。
①「~として(の)」
- 【使用例】
- She works as a nurse.
「彼女は看護師として働いています」
②「~(である)と」
- 【使用例】
- I regard him as my best friend.
「私は彼を親友だと思っています」
③「~のとき(頃)に」
- 【使用例】
- As a boy, Jim often went fishing with his friends.
「子どもの頃、ジムは友達とよく釣りに行っていました」
この “As a boy” は “When he was a boy” に置き換えることができます。“as” を用いて上記の意味を表す場合、“as” が従える名詞と主節の主語が一致するのが普通です。 “a boy”= “Jim”。
一致しない場合には、
- 【使用例】
- “When Jim was a boy, his father often took him to the sea.”
「ジムが子どもの頃、彼の父親が彼をよく海に連れて行ってくれた」
のように “when” を用いて表します。 “Jim”≠“his father”。
4. asを用いたいろいろな表現
上記のように様々な使い方がある “as” ですが、よく使われる表現については品詞やはたらきを細かく考えることをいったん置いて、役立つフレーズとしてそのまま覚えてしまうのも有効です。
①such as~「たとえば~のような」
- 【使用例】
- I learned several languages at university, such as French and Chinese.
「私は大学で、たとえばフランス語や中国語といった複数の言語を学びました」
②as far as~「~する限り」(範囲)
- 【使用例】
- As far as I know, she doesn’t have any brothers or sisters.
「僕の知っている限りでは、彼女には兄弟姉妹はいないよ」
③as long as~「~する限り」(条件)
- 【使用例】
- I’ll lend you the book as long as you return it to me by Monday.
「月曜までに返してくれる限り(返してくれるなら)その本を君に貸してあげるよ」
④as if~「あたかも/まるで~なように」
- 【使用例】
- She talked as if she had seen a ghost.
「彼女はまるで幽霊でも見たかのように話していた」
⑤as soon as~「~するとすぐに」
- 【使用例】
- She was exhausted, so she went to bed as soon as she got home.
「彼女は疲れきっていたので、帰宅するとすぐに寝た」
⑥as soon as possible「可能な限り/できるだけ早く」
- 【使用例】
- I want you to give this message to him as soon as possible!
「このメッセージをできるだけ早く彼に届けて欲しいんだ」
頭文字をとって “ASAP!” と言っても伝わります。またはこれらを「エイサップ」のような発音で一つの単語のように言う場合もあります。
⑦as soon as S can「(Sが)可能な限り/できるだけ早く」
- 【使用例】
- Call me back as soon as you can.
「可能な限り早く折り返し電話してくれ」
⑧A as well as B「Bと同じようにAも」「BだけでなくAも」
- 【使用例】
- My father has a lot of experience as well as knowledge.
「父には知識だけでなく豊富な経験もあります」
⑨As is often the case with~「~にはよくあることだが」
- 【使用例】
- As is often the case with her, she left her umbrella somewhere.
「彼女にはよくあることだが、彼女は傘をどこかに置き忘れた」
⑩as to~「~に関して」
- 【使用例】
- I’m so confused as to what happened.
「起こった件に関して私はまったく混乱しています」
⑪as of~「~時点で/~をもって」
- 【使用例】
- The agreement will take effect as of April 1st.
「協定は4月1日をもって有効となります」
5. asとの付き合い方
最後に、“as” と付き合っていくためのアドバイスをさせていただきます。
それは、“as” の抱える中心イメージを知っておくことです。
歴史的にはもともと “all so”「まったくそのように」という表現がありました。これが短縮されたことで “also”「~もまた」という語が生まれ、さらにその変化形として“as”が生まれたとされています。
“all so”「まったくそのように」と “also”「~もまた」が共通して抱える意味は、大きく言って「同じ」ということですが、“as” にもまたこの「同じ」の意味が受け継がれていて、これこそが “as” の中心イメージとしてはたらいているのです。
ご紹介した例文からいくつか取り上げてそのイメージを確認してみましょう。
- 【使用例】
- As I was getting off the train, I saw Mr. Tanaka.
「電車を降りようとしていたときに田中さんを見かけたよ」
「電車を降りようとしていた」と「田中さんを見かけた」という二つの行為は<同じ>タイミングで行われていることが分かります。
- 【使用例】
- You will understand it as you grow older.
「歳を重ねるにつれて理解できるようになるよ」
「歳を重ねる」ことと「理解できるようになる」ことが<同時に>進行しています。
- 【使用例】
- As it’s Sunday today, I don’t have to go to work.
「今日は日曜日なので仕事に行く必要はありません」
「日曜日」という原因と「仕事に行かない」という結果は<同時に>結びついています。
- 【使用例】
- She works as a nurse.
「彼女は看護師として働いています」
「彼女」と「看護師」は<同じ>人です。
- 【使用例】
- I regard him as my best friend.
「私は彼を親友だと思っています」
「彼」と「親友」は<同じ>人です。
“as” の持つ「同じ」イメージをなんとなく感じ取っていただけたでしょうか。
この中心イメージは、もう少し厳密な言い方をすれば「同時性」や「同質性」という言葉で説明することができます。
様々な意味や品詞で使われるからと言って、それぞれ完全に異なるものとして独立して用いられているわけではありません。
中には少しイメージしづらいものもあるかと思いますが、基本的には “as” は上記のように解釈することができることをぜひ知っておいてください。
そしてそのイメージで付き合っていくことが、“as” を正しく理解し、使いこなせるようになるためのコツです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
見てきたように、“as” には様々な意味や使い方があります。
ですがそれらすべてを無理に暗記して覚えようとするのではなく、中心イメージである「同時性・同質性」を意識しつつ、たくさんの例文を何度も何度も繰り返し声に出して練習してください。
いつも主張していることですが、その場の暗記よりも、繰り返しという経験によって慣れていく方が定着度も高く、英語の感性を磨いていくためにも効果的です。
暗記に苦しむのではなく、時間はかかるかもしれませんが、繰り返しているうちにいつの間にか身に付いていた、という状態に持って行く方がよほど自然で現実的です。
私自身、今まで “as” の意味や用法を暗記しようとしたことなど一度もありません。今でこそ体系的な知識として身に付いていますが、最初はまず豊富な例文を身体に染み付かせることから始め、知識としては後になって「ああ、確かに接続詞や前置詞として使っているな」などと確認した程度です。
言語習得では、知識よりもまずは身体で慣れていくことの方が、効率的だという場合が少なくありません。“as” もたくさん練習して、そのイメージと感覚を身に付けられるよう努めてみてください。