奈都香
(更新)
オーストラリア英語というと訛りばかりが取り上げられがちですが、実はもっと独特なのがそのボキャブラリーやスラングです。
筆者は幼少期をオーストラリアで過ごしたのですが、昔は「オージーイングリッシュはアメリカとは違うけど、ブリティッシュイングリッシュとは綴りや文法ルールがほぼ同じ」だと思っていました。
しかし、イギリス英語圏育ちの友達と出会い、自分が知っている言葉の多くがオーストラリアでしか使われていないことを知り、本当に驚きました。
そんなオージーイングリッシュは "strine" とも呼ばれます。”Australian” をオージー訛りで発音すると ”strine” と聞こえるからです。
一説によると、オーストラリアにはハエがいっぱいいるので、ハエが口に入らないように、できるかぎり口を開かない発音で言葉を短くしたから独特なボキャブラリーが生まれた、と言われています。
早速代表的な単語を見てみましょう。
「こんにちは」
意味:こんにちは(Good day, hello)
これはオージーイングリッシュとして非常に有名ですね。発音も「グダイ」になることで知られています。
意味:どういたしまして、心配ないよ
「送ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
意味:親しい人への呼びかけ
これは私の個人的な感想ですが、"mate" は黒人英語の "bro" と使い方が似ていると思います。
"G’day, mate!" と "What’s up, bro!" は利用シーンがかなり似ている印象です。
「いいってことよ!」
意味:大丈夫?お手伝いしましょうか?どんな感じ?(How are you? Do you need help? Are you OK?)
一瞬「どこに行くんですか?」という意味に聞こえますが、どこかに行く "going" ではありません。
"How are things coming along?" の "coming" に近い感覚だと考えるといいでしょう。
「 大丈夫ですか?何かお探しですか?」
意味:ありがとう(Thank you)
この言葉はブリティッシュイングリッシュでも使われるスラングで、「ありがとう」という意味です。
語源はあかちゃんが喜んでいるときの声の真似といわれていて、ウェールズ地方でよく使われるようです。
「 塩とってくれる?」
「 どうぞ」
「 ありがと!」
意味:よくやったね
「 1位だったよ!よくやったね!」
意味:業者さん(a tradesman)
業者さんにも色々な種類がありますのでそれぞれを勉強してみましょう!
「 職人として手に職があると儲かるらしい」
意味:れんが積み工(Bricklayer)
レンガの "brick" に "ie" をつけたパターンですね。覚えやすい!
「 れんが積み工はあの壁を作るのに時間をかけすぎている」
意味:トラック運転手(Truckdriver)
"Truck" に "ie" をつけたパターンです。
職業ではないですが、同じように "bike" に "ie" をつけて "bikie" にするとバイク乗りのギャング=日本でいう暴走族やアメリカのバイカー軍団の意味になります。
「彼のおじいさんはトラック運転手だったんだって」
意味:電気工(Electrician)
電気などでおこる閃光を "spark" といいますが、それに "ie" をつけたパターンですね。ちょっとポケモンの名前みたいです(笑)。
「壊れてるよ。電気工をよばないと」
意味:ゴミ収集業者(Garbage collector)
"Garbage(ゴミ)" に "-o" をつけたパターンです。
「ゴミ収集がくるまえにゴミを出してきて」
意味:大工(Carpenter)
大工仕事をすると必ずでるのが木片や木くず。
それらを "wood chip" というところから、"chip" に "ie" をつけたパターンです。この呼び方はオーストラリアだけでなく、ブリティッシュイングリッシュ圏では広く通じるようです。
「今日は大工さんはお休みです」
意味:ピックアップトラック(Utility vehicle, pickup truck)
"Utility" の頭だけをとって "Ute"。
もはや縮めすぎて語源がなんだかわからないレベルですが、私は世界で通じる言葉だと思って使っていた言葉の一つです。
「レンガ積み工が今日の午後ピックアップトラックでうちにやってくる」
*意味:午後(Afternoon)
意味:カンガルー(Kangaroo)
日本でも roo tote というカバンのブランドがありますよね!
なお、カンガルーは体長も体重も人間くらいありますので、うっかり車で引いてしまうとボンネットもフロントガラスもぐしゃぐしゃになりかねません。そのため車を守るバーを付けるのですが、これらは "roo bar" と呼ばれています。
同じバーが "bull bar(アメリカ)"、 "moose bumper(カナダ)"、 "cattle pusher(アメリカ)" など、国によって車でひきがちな動物の名前に代わるのがおもしろいですね。
「あそこにカンガルーがいるよ!」
意味:赤ちゃんカンガルー
「ポケットの中に赤ちゃんカンガルーがいるのがみえるね!」
意味:蚊(Mosquito)
「蚊に刺されちゃった!」
意味:クロバエ(Blow fly)
「帽子がないとハエが顔に当たってくるんだ」
意味:午後(Afternoon)
なお、土曜の午後は "Saturday afternoon" なので、"sarvo" と省略されます。
「午後は犬を散歩に連れて行くんだ」
意味:バーベキュー(Barbeque)
"Put Another Shrimp On The Barbie" というフレーズがクロコダイルダンディー(*1)によって世界的に認知度の高まったオージー英語です。
なお、オージーは "prawn" より "shrimp" を使う人が多いようですよ。
*1…オーストラリアのコメディ映画。
「ジョン、今日の午後にやるBBQくる?」
意味:ガソリンスタンド(Gas station)
アメリカではガソリンを "gasoline/gas" といいますが、オーストラリアでは "petrol" といいます。
「ガソリンスタンド」も "gas station" ではなく "service station" なので、それを省略すると "servo" になります。
「場疎林スタンドによらないといけない」
意味:トイレ(Toilet)
"Dunny" は "dung(糞) house" を省略してできた言葉です。イギリス系スラングの "loo" と同じくらい頻繁に耳にすると思います!
「ガソリンスタンドでトイレ貸してくれるかな?」
意味:酒屋(Bottle shop, liquor store)
お酒の瓶がたくさんあるので "bottle shop"、それを省略すると "bottle-O" となります。
「酒屋でビールのたるを引き取りにいかないとね」
意味:24本入りのビール(24-pack of beer)
"Slab" とは本来石・木・金属などの四角く幅の広い厚板のことを指します。
日本でも6本入りを4セットいれた箱でビールをまとめ買いできますよね。その箱が石板のようなので "slab" と呼ばれるようになりました。
「24本入りのビール買っちゃえばいいかな?」
意味:375ml瓶のビール
"Stub" とは短いものを表すときにつかわれる単語ですので、短い瓶のビールは "stubbie" となります。
「このビールは375mlボトルで売ってますか?」
意味:Stubbie の冷たさを維持するカバー(Koozie/cooler)
「熱いから冷たさを維持するカバーが欲しいな」
意味:クーラーボックス(Cooler, insulated food and drink container)
「酒屋にいって24本入りのビールを買ってきたからクーラーボックスがパンパンだ」
意味:~一杯の
「クーラーボックスはパンパンだ」
意味:水着
"Bathing suit" を省略した言葉です。
「体育の授業が水泳だから水着を持ってこなくちゃ」
意味:男性のビキニ型水着
日本ではこの水着をブーメランということもありますが、ブーメランの本場では "budgie smuggler" といいます。
"Budgie" とは "Budgerigar(セキセイインコ)" のスラングで、"smuggler" は密輸人です。
つまり、水着の中にセキセイインコを忍ばせているようにみえるため、このように呼びます。
「ボディーボード用に水着持ってきた?」
「うん」
「まさかそのブーメランで泳ぐつもりじゃないでしょうね!」
*意味:ボディーボード(Body board)
意味:ボディーボード(Body board)
「サーフィンはできますか?」
「いいえ、ボディボードしかできません」
意味:三日月湖、水路にある流れの無い水溜まり
オーストラリア生まれのサーフブランドの名前でなじみのある人もいるかもしれませんね!
「カンガルーは水飲み場の近くでみつかったって」
意味:アメリカで言うところのレッドネック、教養のない人、田舎者(Redneck, an uncultured person)
一般的にはフランネルのシャツ(Flanno)を着ていて、髪型がマレット(前が短く後ろが長い)、歯がなくて、自分で彫ったオーストラリアや南十字星のタトゥーがあるような人を指す言葉です。
「いつもビーサン履いてるのよ。ホント田舎者よね」
意味:クイーンズランド人(Queenslander)
クイーンズランド州はバナナの生産地として有名ですが、そんなクイーンズランドに住んでる人は「まっすぐに生えてきたバナナをきゅっとカーブさせる仕事をしている」というジョークから、「バナナを曲げる人」="banana bender" と呼ばれるようになりました。
「出身はどこですか?」
「クイーンズランドです」
意味:マクドナルド
東京の「マック」、関西の「マクド」のような話ですが、オーストラリアではマクドナルドのことを "Macca’s" といいます。
アメリカでは "Mickey D’s"、 カナダは "McDick’s"、スコットランドでは "McD’s" というそうです。
「マックによってお昼食べようか?」
意味:オーストラリア(Australia)
オージーが発音したオーストラリアがこう聞こえるため、このようなつづりが浸透し始めました。
”meanwhile in straya” で検索すると、いろいろなオーストラリアあるある写真が見られて面白いですよ。
「そのころオーストラリアでは…」
以上、オージー英語をご紹介してきましたが、オーストラリアのスラングは基本 ”-o” か ”-ie” をつけて省略するというパターンがわかりやすいですね。
筆者がオーストラリアで暮らしていたころ、父は「オーストラリアでアメリカ人とオージーが英語で話しても何を言っているのかお互いに理解できないから、日本人の自分が通訳することがある」と言っていました。
このスラングリストをみるとありえなくない話だとわかりますね。
ちなみに、我が家には広辞苑くらい分厚い Strine の辞書がありましたよ!