Michiru
(更新)
一般的なアメリカ人と言えば、コメディアン並みのユーモアセンス、そして、オバマ前大統領のスローガン ”Yes, we can!” 的な自信に溢れたプラス思考、そんなイメージが強いのではないでしょうか?
まるで決まり文句のように、”No problem!”(問題ないよ!)、”Don’t worry!”(心配ないよ!)、”Great!”(いいね!)、”Awesome!”(すごい!)など、アメリカ人がよく使う表現を、どこかで耳にしたことはありませんか?
このようなポジィティブな表現は、”happy-go-lucky”(楽天的)で ”easygoing”(おおらか)なアメリカ人の国民性を象徴しているようにも思えます。
そんな明るい印象のアメリカ人ですが、逆に「テンションが低い」ときは、どのようなリアクションをするのでしょうか?
本記事では、アメリカ人がテンションが低い時によく使う相槌や英語表現をご紹介したいと思います。
英語表現をご紹介する前に、日本語で「気分が落ち込む」という意味でよく使われる「テンションが低い」の表現について、一つ留意点があります。
実は、日本人同士の日常会話によく出て来る「テンションが低い」は、和製英語。
本来、英語の ”tension” は「緊張感、緊迫感、張力」という意味があり、例えば、「のれん」を付けるときに使う「突っ張り棒」のことを、英語では ”tension rod” と言います。想像してみると、なんとなく ”tension” という言葉のイメージが湧いてくるのではないでしょうか?。
もともと、「テンションが低い」という表現は英語にはなく、別の言い方をします。例えば、”low energy”(エネルギーレベルが低い状態→活力がない、元気がない)や ”depressed”(落ち込んでいる)は、どちらも「テンションが低い」のニュアンスを含む表現です。
和製英語をそのままネイティブに伝えてしまうと、誤解を招き兼ねないので、覚えておきたいポイントですね。
ご参考までに、ネイティブは心の状態を表す言葉の一つとして、「緊張している、堅苦しい」といった意味の ”tense”(tensionの形容詞)を使います。
"tense" は他に「筋肉が張る」という意味もあり、首や肩の筋肉が張った状態を表すときにも使います。
それでは実際に、「テンションが低い」ときのアメリカ人は、どんなリアクションをするのでしょうか?
シチュエーションごとに見てみましょう。
出勤/登校途中、あなたはネイティブの友人を見つけ、声を掛けます。
あなたは会話を盛り上げようとしますが、友人は、”uh-huh”、”yeah/yup”、”right”と、気のない相槌ばかり。
Uh-huh.
「ふーん、なるほど、はいはい」
Yeah/Yup.
「うん、そういうこと」
Right.
「そうなんだ」
どれも似たり寄ったりなニュアンスを含む相槌ですが、このシチュエーションでは、"uh-huh" と "right" は相手の話を「一応聞いているよ」の合図のような返事です。
"yeah" または "yup" は、相手からの質問に対して返答するときの相槌。
このような素っ気ない返事は、会話を続ける意思がないことを示唆するので、「もう話し掛けないで」のサインとも言えるでしょう。
日本語同様、テンションが低いときは、声のトーンも低くなりがち。語尾も下がり気味で、ため息交じりの元気がない口調になります。
「今日は、テンション低いな」と感じ、あなたは思い切って、“Are you OK?”(大丈夫?)と聞いてみることにしました。
すると、ネイティブの友人は、こう答えました。
Could be better.
「あんまりよくない」
I’ve had better days.
「(前はよかったけど)今はあんまりよくない」
通常、"better" は「Aの方がBより良い」と、AとBを比較するときに使う表現です。この場合の "better" は、AとBが逆になります。つまり、今の状態が好ましくない(B)、だから、今の状態になる前(A)の方が "better" という解釈です。
言い換えれば、前はよかったけれど「今はよくない」、今より「前の方がよかった」という意味です。
先ほどのリアクションから、ネイティブの友人に何かあったに違いないと確信し、あなたは何とか原因を聞き出そうと試みます。
”What’s wrong?”(何かあったの?)
すると今度は、こんな答えが返ってきました。
Don’t ask.
「(その話は)聞かないで」
You don’t want to (wanna) know.
「知らないほうがいい(聞かないで)」
“Don’t ask” は、文法的に見ると命令形ですが、威圧的に「聞くな!」と怒鳴っているわけではありません。「それについて話したくないので、聞かないで欲しい」とアピールする表現です。
あなたは、ひどく落ち込んでいる友人をそのまま放っておけず、“Tell me what happened”(何があったのか話して)、“Do you want to (wanna) talk about it?”(話したかったら聴くよ)と立て続けに言ってみました。
友人は、ため息をつきながら、こう答えます。
I don’t want to (wanna) talk about it.
「(そのことは)話したくない」
Let’s not go there.
「そこは触れたくない(話したくない)」
“I don’t want to (wanna) talk about it” は、文字通り、「それについて話したくない」という意味です。
”Let’s not go there” を直訳すると、「そこへ行くのは止めよう」という意味ですが、この場合、「そこへ行くきたくない」理由は、そこへ行くと嫌な気持ちになるから。要するに、思い出すのもうんざりするほど、「その話はしたくない」というニュアンスです。
ご参考まで、"wanna" は、"want to" の砕けた言い方です。親しい者同士のカジュアルな会話では "wanna" を使うことが多いです。職場や学校などのフォーマルな場、または、友人同士の間で深刻な話をする際は、"want to" を使うことをおすすめします。
日本人・アメリカ人に関係なく、「テンションが低い」ときのリアクションは、人それぞれです。
同じ条件下で、同じ ”stressor”(ストレス要因)を与えても、ストレスに対する抵抗力は人によって異なるように、対処法もケースバイケース。
ここに登場したネイティブの友人のように、シャットダウンしてしまう人、自分から「聞いて!」とアプローチする人、時間を掛けて話す人、ため息ばかりの人、百人いれば百通りの反応があります。
また、落ち込んでいる相手の話を聞くときの姿勢も人によって違いますよね。例えば、あなたが悩み事を誰かに聞いて欲しい時は、どんな相手に相談しますか? 相談したいと思う人は、大抵、聞き上手だったり、心の中に詰まっているものを上手に引き出してくれる人ではありませんか?
良き相談相手は、高いコミュニケーション能力を持つ人、”active listening”(アクティブリスニング)を常に意識していると言われています。
”active listening” のポイントは下記のとおりです。
"good listener"(聞き上手)になれるポテンシャルは誰にでもあります。
次回、「テンションが低い」人の相談に乗るときは、意識して練習してみてくださいね!