西東 たまき
(更新)
「二重否定」という文法用語を知っていますか?
「知らないとは言っていない」のように、否定の言葉が二つ含まれている表現のことです。
「知らないとは言っていない」の意味は「知っている」なので、素直にそう言えばよいところ。
それなのに、なぜわざわざ二重否定を使うのでしょうか?
こういった言い回しは日本語だけでなく、英語でもよく出てきます。
今回は、英語の二重否定について。
英語ならではの面白い表現なので、ぜひマスターして楽しんでくださいね!
普通、否定語は1つの文に1つあれば十分です。
ところが、ときには1つの文章に2つの否定語が入っている場合があります。そういった文を「二重否定」と呼びます。
例えば、「行きたくないわけじゃない」や「しないことはない」のような言い方がありますね。否定文の形になっているものの、それぞれの意味は「行きたい」であり、「する」です。
否定を否定しているので、結局は肯定になるというわけです。
ではなぜ、こんなややこしい言い方をするのでしょうか?
このような表現をすることで「肯定している」印象が強まるという理由があるからです。
また、ストレートに表現するよりも言葉に含みを持たせることができるという効果もあります。
では早速、英語の二重否定の例文を見てみましょう。
「彼に答えられないことはない」
「失恋を経験したことがない人は誰もいない」
それぞれの文には nothing(何も~ない) や nobody(誰も~ない)、そして not(~ない) や never(一度も〜ない)という否定の言葉が2つずつ入っています。
本来なら He can answer everything (彼は何でも答えらえる)や Everybody has experienced a heartbreak (誰もが失恋を経験したことがある) と言えば済むところですが、二重否定によって「答えられる」と「好き」の意味が強調され、含みのある言い回しになっています。
ここまで、二重否定=結局は肯定であるとお話をしましたが、場合によっては否定の意味を持つことがあります。
映画のセリフや、歌の歌詞などで次のようなセリフを耳にするかもしれません。
「何も知らないんだ」
「自分は、どこにも行かないよ」
こちらもまた nothing 、nowhere(どこにも~ない)という否定の意味を持つ言葉と、 not の組み合わせですが、意味は否定のままです。
これはスラング的表現であり初歩的な文法ミスにも見えるので、きちんとした表現が求められる場面では使うべきではありません。
英語で「何も知らない」「どこにも行かない」という場合、正しくは I don't know anything、 I won't go anywhere ですね。
二重否定には表現を強調したり、ニュアンスを持たせたりする効果があると述べましたが、他にも婉曲表現として言葉の響きを柔らかくする効果があります。
「~ということではない」、「~と言っているのではない」などの言い方は日本語でもありますね。
真正面から断定することを避けた言い方です。
「私たちにとって、それは珍しいことではない」
「彼が正しくなかったと言っているのではない」
英語の二重否定表現のなかには、慣用的に使われるものもあります。
英語らしい表現になるので、適宜使えるようにしておくと良いでしょう。
単語自体が否定の意味を持つ言葉 without(~無しで)を否定文で使うことにより二重否定の形で(〜なしには)という意味になります。
「私の一日はコーヒー無しには始まらない」
これも上記の例と同様に、unless(~しない限り、~でない限り)という否定の意味を持つ言葉と not が一緒に使われた二重否定になっています。
「サインがない限り書類は有効ではありませんよ」
文字通りの意味は「決して~することを失敗しない、決して~し損ねない」ですから、つまるところ「必ずする」ということです。
「あなたは、旅行に行くと必ずトラブルに遭うね」
no doubt(疑い)なく=間違いなく という意味です。 doubt という否定的な意味合いを持つ言葉を no や without と一緒に使うことで二重否定の形になっています。
「彼は絶対それをしなかっただろうな」
「間違いなく彼はそれを好まないだろう」
less(〜以下、より少ない) もまた、それ自体が否定的な意味合いを持っているので、否定文で使うことにより二重否定の形になります。
「10人以上は、ここにいましたよ」
英語の二重否定表現についてお話をしましたが、いかがでしたか?
ややこしい二重否定の形にしなくても表現できるのに、あえてこういった表現をする面白さを感じていただけたでしょうか。
英語だとわかりにくい気がするかもしれませんが、仕組みは日本語と同じです。
使い方に慣れたら、英語の二重否定ならではのトリッキーなニュアンスを楽しんでみて欲しいと思います!