映画のあのシーンから、使える英語フレーズをばっちりいただき!

英語がわからない。会話がぜんぜん聞き取れない……そう悩んでいる方も多いのでは? 無理もないです。わたしもそうでしたから。中学高校大学と10年間も勉強したのに、どうしてこんなにわからないんだろうって。そりゃ悩みましたよ。

でもある時、気づいたんです。Newsweekなんかの記事の英文も、映画のセリフも、よくよく見れば、大部分は高校英語の文法で説明できる構造になっているってことに。

じゃあなぜわからないかと言うと、最大の理由は、わからない単語が多いこと。一段落でわからない単語が1つや2つなら、文脈から意味を類推することもできますが、5個も6個もわからない単語があればもうお手上げです。まあこれは単語を覚えるしかありません。

でも理由はもう一つあります。それは、慣用句のたぐいです。慣用句は、表面的な語句の並びと実際のニュアンスが大きく違うことが多いので、そこで「???」と頭がパニックになってしまうのです。日本語でも「置いてきぼりを食う」とか言いますよね。それを文法で理解しようったって無理なことです。

ならどうするか? そこで映画です。

映画は基本的に会話で進みますから、日常会話表現の宝庫です。しかも動画だから、状況は一目瞭然。映画のシーンで耳にした慣用句や定型表現は、それだけ覚えやすいってことなんです。

映画のシーンでフレーズを覚えましょう。いったん覚えれば、シーンが頭に入っていますから、すぐに応用できるようになりますよ。

映画『スクール・オブ・ロック』がオススメなわけ

そこでさっそく取り上げるのは、2003年のアメリカ映画『スクール・オブ・ロック』。ロックへの熱すぎる情熱が災いしてバンドを首になった男が、ひょんなことから私立小学校の臨時教員になり、名門校の行儀正しい生徒たちにロック魂を叩き込むという痛快コメディです。

この映画がオススメなのは、ストーリーが派手で面白いのももちろんですが、何よりセリフがとても聞き取りやすいから。主人公のロックンローラー教師デューイをはじめ、はきはきした歯切れのよい喋り方をする人ばかりなので、他の映画より格段に聞き取りやすいんです。

ではさっそく行きましょう。親友のネッド・シュニーブリーになりすまして臨時教員の職を得た主人公デューイが初登校し、校長先生(上品な女の人です)に連れられて教室入りするシーンです。校長先生が教室の扉を開けるところから始まります。

校長先生とデューイの会話

校長先生:(生徒たちに向かって)

“Children. Please take your seats. I'd like to introduce Miss Dunham's substitute. This is Mr. Schneebly.”
「みなさん、着席して下さい。ダンハム先生の代わりの先生を紹介します。シュニーブリー先生です」

校長先生:(デューイに向かって)

“Why don't you write your name on the board. ”
「黒板にお名前を書かれてはどうかしら」

デューイ:(校長先生に向かって)

“Yes, I will.”
「ああ、そうするよ」

デューイ:(生徒たちに向かって)

You know what ?  Why don't you all just call me "Mr. S".”
「やあみんな、俺のことは、『S先生』と呼んでくれればいいからな」

校長先生:(生徒たちに向かって)

“Mr. S has never taught here at Horace Green, so I want you all to be on your best behavior. ”
「S先生が、このホレス・グリーン校で教壇に立つのは今日が初めてです。ですからみなさん、お行儀よくして下さいね」

校長先生:(デューイに向かって)

“So the curriculum is on the desk. And do you have any questions ? ”
「じゃあ、時間割は机の上にありますから。ほかに何か質問は?」

デューイ:(校長先生に向かって)

“Yeah, when's lunch ? ”
「ええと、昼メシはいつだい?」

校長先生:(デューイに向かって)

“The children just had their lunch. Is there anything else you need ? ”
「生徒たちはちょうどランチを終えたところです。ほかには何か?」

デューイ:(校長先生に向かって)

“I'm a teacher. All I need are minds for molding. ”
「俺は教師だ。必要なのは人の道を叩き込む相手だけだよ」

校長先生:(デューイに向かって)

“All right, then. Well, thanks again. You saved the day.
「わかりました。改めてありがとうございます。うまくしのげましたね」

解説

文法で考えてもぜんぜんわからない “You know what?”

この会話の流れで、まず引っかかるのは、主人公の臨時教師デューイが生徒たちに語りかける最初の言葉ではないでしょうか?

"You know what?" の意味は……「あなたは "what" を知っているの」? でもこの "what" って、「何か」を意味する疑問代名詞だから、この場合は、「あなたは何かを知っているの」?? と、文法で解釈しようとしても、さっぱり何だかわかりませんよね。

この "You know what?" は、それ自体が1つの単語のようなものだと思った方がいいです。会話で、話を切り出すときや、相手の注意を引くときによく使われる表現。訳すとすれば、「いいかい?」や、「ねえねえ、聞いて!」、「知ってる?」くらい。

"Guess what?" も同じような意味で使われますので、セットで覚えてしまいましょう。

ちなみに、この場面にはちょっと解説が必要です。主人公デューイは親友のネッド・シュニーブリーになりすましてこの学校の臨時教師に採用されたので、校長先生からはその親友の名前で呼ばれています。それで、黒板に名前を書こうとしたものの、自分の名前じゃなく、おまけに "Schneebly" というかなり珍しい苗字だったものですから、途中まで書いたところでスペルがわからなくなって、ごにょごにょと消してしまうのです。それで開き直って、"Mr. S" とだけ書いたわけですから、なんとも決まりが悪いんですね。その照れ隠しと、最初から生徒たちに舐められちゃいかんという気持ちから、"You know what?" という、ちょっぴり威勢のいい言い方で生徒たちに呼びかけたのかな、とも思います。

なお主人公デューイは、他の場面でもこの "You know what?" をよく使います。彼の口癖でもあるのでしょうね。

直訳すれば、「あなたはその日を救った」? “Saved the day.”

このシーンのもう一つの見所は、校長先生がけっこうノリのよさを見せてくれるところです。前の場面では、給料の前払いはできるかと聞いてきたり、用事があるのでちょっぴり早退したいと言い出したりと、自堕落なロッカーそのままのデューイの言動にあきれ顔だったのですが、ここではデューイが黒板に "Mr. S" と書くと、すぐに合わせて「S先生」と読んでいます。クラス担任のダンハム先生が足を骨折してしまい、代わりの教師が他に見つからないので、こんな相手でもうまくおだてて使わなければという打算も裏にはあるのかもしれませんが、話を合わせるのがうまい人ですね。場面が進んでデューイと生徒たちがステージで演奏をするところでは、この校長先生もノリノリで声援を送ってくれるので、もともとノリがいい人なのかもしれません。

さてこのシーンに戻りますが、最後に校長先生が "You saved the day." と言っています。これってどういうことでしょうか?

直訳すると、「あなたはその日を救った」……なんのことだかさっぱりわかりませんね。これは、「間一髪で窮地を逃れる」「土壇場で勝利する」といった意味の慣用句です。おそらく、勝敗を分ける大決戦で活躍をして、その日の戦いを味方の勝利に導いた、というような表現が一般化して日常の出来事にも使われるようになったのではないかと思います。

インチキ臭ぷんぷんのデューイが名門校の教室に入って、最初の自己紹介でつまずくんじゃないかと危ぶまれるところに、意外にいいことを最後に言ってその場を締めくくり、窮地をしのいだ。そのことに対して校長先生が「うまく切り抜けたわね」というニュアンスで、この慣用句を使ったわけです。

ちなみにここのように主語が "you" になる場合には、「おかげで助かった」というニュアンスもにじむので、ハラハラしていたのはデューイだけじゃなく、校長先生も一緒だったのかもしれませんね。

さいごに

今回は "You know what?" と、"Saved the day" という2つの慣用句を学びました。どちらも教科書には出てこないですが、活きた英語です。映画を活用することで、楽しみながらフレーズを学ぶことができますね。ぜひ何度も繰り返し観て、表現を身につけてくださいね。