奈都香
(更新)
日本語を英語に訳すときに困るのが、「よろしくお願いします」「お世話になっております」「いただきます」「いってらっしゃい」「いってきます」「おかえりなさい」など日本語では深く考えずに使っている「お決まり」のフレーズですよね。
言わないと失礼と思われるから、日本人ならほぼ自動的に、半ば無意識に発するこれらのフレーズ。特に日本のテレビドラマ、アニメ、映画、漫画などに字幕を付けるときは省くと映像やコマが合わなくなるため省くことができないので翻訳者泣かせです。
今日はそんな難関英語フレーズの中でも「いってきます」「いってらっしゃい」について考えてみたいと思います。
このフレーズを英語にしようとして引っかかってしまうのは「訳そう」と考えるから。
「いってきます」「いってらっしゃい」というような場面は海外ドラマでもよく見かけますよね。例えば「フレンズ」を観ていたら1エピソードで何度も登場人物が出たり入ったりしています。だから絶対あなたも何度も英語でこのやり取りを見ているはずなんです。
それなのに、自分が英語で「いってきます」や「いってらっしゃい」を言おうとすると言葉に詰まってしまう…。
そんな時は「家を出るときはいってきます、それに対していってらっしゃいと答える」という固定概念を捨てましょう。
もっと俯瞰的に状況をみると、「誰かがその場面を去ろうとしてしていて、お互いに別れの挨拶をしている」というシンプルな状況の会話をすればいいことに気づきませんか?
つまり、いつもどおり別れの挨拶を相手と行先に合わせて言えばいいんです。
それでは場面ごとに具体例を見ていきましょう。
「行ってきます」と言う場合は誰かがそこから去ろうとしているということ。
だとしたら、シンプルに "Bye!“ と言って出ていき、”Bye!” と返せばいいでしょう。より親しみをこめるなら名前をつけるのもいいと思います。
迷ったときはシンプルに!
これが英語での「いってきます」「いってらっしゃい」の基本フレーズということで大丈夫でしょう。
他には "I'm off" とも言います。
“I’m off to the wizard, the wonderful wizard of OZ” という歌詞があるように “off to~” は「~へ行く」という意味の口語フレーズです。
ですので ”I’m off” は「行ってくるね」「出かけるね」といった意味になります。
返答するときも ”Ok. Bye!” などとシンプルにも返せますし、行き先を知っているならこの後に出てくる行き先に合わせた返答をしましょう。
この "See you" 系のフレーズは「またね」「あとでね」ととらえるといいでしょう。
やはり ”Bye!” で答えても全く問題ありませんが、あとで会うことを前提としているので、また会うまでの時間がいいものになるように祈るフレーズや、注意・無事を促すフレーズで返す方がやりとりが自然です。
こちらはより具体的にいつごろ帰ってくるか示した挨拶です。
家族やルームメイト、会社の同僚など次会える見込みを知らせておいた方がお互い都合が良いような相手には、具体的にいつまた会えるのかを伝えることで「いってきます」の代わりにしてもいいでしょう。
答える方は、
などと答えるとよいでしょう。
これは「いってきます」「いってらっしゃい」どちらの立場からも使えるアプローチです。
相手のその後のスケジュールを知っている場合は、具体的にその物事がうまくいくようにと思う気持ちを伝えることで、お別れの挨拶として使えます。
言われた方は、
と返すといいでしょう。
あまりそこから会話を広げてもまた別れにくくなってしまうのでさくっとお礼をいって、”Bye!” と切り上げるのがネイティブらしいと思います。
こちらは移動手段に対して無事や快適さを祈るフレーズですので主に「いってらっしゃい」の意味で使われるでしょう。
返し方は、
と答えた上で、先に紹介したいろいろな別れ際のフレーズを返すといいでしょう。
これらのフレーズは海外ドラマや映画などで親が子供などに使っているのを聞いたことがあるかもしれません。
先ほどの良い一日となるように願うお別れのあいさつに対して、こちらは「トラブルを起こさないで!いい子でいてね!」という冗談と警告両方が込められたあいさつです。
言う方がちょっと上の立場で「いい子でいてね」というニュアンスですので、親が子にいうのはもちろん、家族間やカップル間でちょっとユーモラスに使うぶんには問題ありませんが、本当に目上の人に使うのはよほど親しい間柄じゃないとむっとされてしまうかもしれませんね。気を付けましょう。
言われた人は、
などと答えると自然です。
こうやってみると「いってきます」「いってらっしゃい」という定型文のようなメッセージではなく、ほとんどいつも通りの会話に近いことがわかると思います。
同じように考えれば「よろしくお願いします」「お世話になっております」「いただきます」「ごちそうさまでした」などもうまく英語で伝えられるようになるかもしれませんね!
シーン別でフレーズをご紹介してきましたが、「いってきます」「いってらっしゃい」の語源は諸説あり、「行って、(無事帰って)きます」「行って、(無事帰って」らっしゃい」だとよく言われています。
つまり、出かける人は「無事帰ってきますね」という気持ち、見送る人は「楽しんできてね。無事帰ってきてね」という気持ちを込めれば、どんな英語のフレーズも「いってきます」「いってらっしゃい」と訳して問題ないのではないでしょうか?
相手の一日を思い、そのとき何を伝えたいかを素直に言葉にするのが、一番ナチュラルで正しい英語の「いってきます」「いってらっしゃい」だと思います。柔軟に、そして自信をもって、いろいろな表現を使えるようにしていきましょう。