K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「比較(比較級・最上級・原級)」についてご説明します。
「彼の方が歳上だよ」
「学生時代は俺は誰よりも足が速かったんだよ」
こんな会話ってよくありますよね。誰かと誰かを比べて、どちらがより〇〇だとか、誰々が一番□□だとか。
なにかとランキング好きと言われる日本人にとって、盛り上がる会話のネタとしてもよく登場するのが「比較」。
今回はそんな「比較」、つまり誰かと誰か、何かと何かを比べるとき、英語ではどのように表現すればいいか、ということについてご説明します。
ぜひ英語でも比較ネタで盛り上がってください。
「比較」には大きく分けて3つのパターンがあります。
今回はこれら3つのパターンの基礎を学習していただければと思います。
一つ目は「比較級」です。
これは、ある人やモノを別の人やモノと比べたとき、「・・・(どちらか一方)がより~だ」という意味を表すために使います。
次の二つの文を見てください。
“Tom is tall.”
「トムは背が高い」
ジャックもトムも背が高いのですが、これではどちらがより背が高いのか分かりません。そんなとき、どちらか一方の方がより背が高いことを表すことを可能にしてくれるのが比較級だということです。
比較級を使った構文の最も基本的な形は、<比較級 + than>という形です。
ここで言う「比較級」とは、具体的には「形容詞または副詞に-erをくっつけたもの」です。
先ほどの例で「ジャックの方がトムよりも背が高い」と言いたい場合、比較級を使うと次のようになります。
形容詞 “tall” に-erがついて “taller” になっていますね。これが「比較級」です。
その直後にある “than” は「~よりも」という意味を表し、比較級ではとてもよく登場するキーワードになりますから、ぜひセットで覚えておいてください。
比較級の構文を作る順序を確認しておきます。
まず形容詞 “tall” を比較級 “taller” にします。
これで「ジャックの方が背が高い」という意味ができます。
そして比較対象を表すため、“than” を使って残りの “Tom is tall.” を以下に続けます。
すると今度は「ジャックはトムが背が高いよりも背が高い」という意味の文になります。
(カンの良い方はお気づきかもしれませんが、“than” の後ろに別の文が来ているということは、この “than” は接続詞だということです。「接続詞」については前回の記事をご確認ください。)
ところが、これだと “is tall(er)” のまとまりが2回も登場しているためとてもくどく見えてしまいます。
英語では重複するところは省略してなるべくすっきりさせようという心理がはたらくため、後半の “is tall” を消してしまいます。
すると、
が完成する、という仕組みです。
ではここで練習です。
次の二つの文を使って比較級の文を作ってみましょう。「サムの方が速く走る」と言いたいとします。
“I run fast.”
「私は速く走る」
この場合、比較級にするのは副詞の “fast” ですね。
まずはこのように “fast” を比較級 “faster” にして「サムの方が速く走る」とします。
次に “than” を使って二文目をくっつけるんでしたね。「サムは私が速く走るよりも速く走る」という意味です。
最後に重複する “run fast” を省略して、これで「サムは私よりも速く走る」という比較級の文が完成です。
「私よりも」という意味の文にするとき、最後が “I” で終わることに違和感を覚えるかもしれません。でも前述のような理屈を考えると、“I” で正しいことが分かりますね。
ただ、見てきたように “than” の後ろには “Tom” や “I” のように単に主語だけしか残らない場合が多く、そのため “than” は接続詞ではなく前置詞としてみなされることもあります。
これに伴い、会話などのくだけた場面では “I” の代わりに “me” を置くことも認められています。
何かと何か、誰かと誰かを比べることは日常的にもよくあると思いますから、ぜひこの基本形からマスターしてください。
二つ目は「最上級」です。
これは、3つ(人)以上の範囲の中で、「どれ(誰)が最も~だ」という意味を表すときに使います。
その基本的な形は<the + 最上級 + 比較範囲>です。
ここで言う「最上級」とは、「形容詞または副詞に-estをくっつけたもの」です。
そして「比較範囲」とは、たとえば「3人の中で」とか「チームの中で」のように比較の対象となった人やその集団などのことです。
具体的に例文で確認してみましょう。
たとえば「トムはその3人の中で最も背が高い」を最上級を用いて表すと次のようになります。
この仕組みも確認してみましょう。
この文を基に考えてみます。
最上級になるのは形容詞 “tall” ですから、これに-estをくっつけた “tallest” を “the” と共に置き、“Tom is the tallest”「トムは最も背が高い」とします。
続いて比較範囲 “of the three”「その3人の中で」を加えたら完成です。
比較範囲については、「3人の中で」のように具体的な数字が伴う場合、<of the+ 数字>という形を使います。
「チームの中で」のように、所属する場所や集団が比較範囲になる場合には、<in the + 場所・集団>となります。
前置詞 “of” と “in” を使い分けることがポイントです。
では練習してみましょう。次の文を最上級を使って英語で表してみてください。
「ユキコはそのクラスの中で最も速く泳ぐことができます」
を基に考えてみましょう。
-estをつけて最上級にするのは副詞の “fast” ですから、
とまずはなりますね。“the” も忘れないでください。
そして比較範囲を付け足して、
これで完成です。
副詞を用いた最上級の場合、実は “the” は省略することもできます。ですが、まずは練習のためにも最上級には “the” をつけることを意識するようにしてください。
このように「~の中で最も・・・だ」と言いたい場合に活躍するのが最上級です。これも比較級同様に使える場面はとてもたくさんありますから、基本を徹底して覚えてくださいね。
三つ目の話に進む前に、確認しておきたいことがあります。それは「比較級」と「最上級」の作り方です。
「比較級」は-er、「最上級」は-estをそれぞれくっつけることで表す、と解説しました。
ところが、場合によってはそれとはまた違ったやり方で「比較級・最上級」を作る必要があることがあります。
以下にそのパターンをまとめてみます。
上記パターンの他に、以下のように-erや-estをそもそも使わず、比較級では "more"、最上級では "most" をつける、というものもあります。
※early-earlier-earliestのように、一部異なるものもあります。
※「音節」とは簡単に言えば「一まとまりに発音される音」のことで、たとえば “famous” は “fa・mous” の二つの音のまとまりに区切られます。これを2音節と数えます。辞書を引くと、見出し語に音節が示されていますので確認してみてください。「・」このマークが音節の区切れを表しています。
さらに、上記のいずれにも該当せず、独自の比較級や最上級の形を持つ不規則なものもあります。
動詞の-ingの作り方にいくつかのパターンがあったように、形容詞と副詞の比較級、最上級の作り方にもいろいろなパターンがあります。
どれも全てを暗記しようとして苦しむのではなく、これからたくさんの例文と出会い、練習していく中で自然に身に付けていくことが理想的です。
一見すると大変そうかもしれませんが、あまり重く受け取らずに、「いろいろなやり方があるんだな」くらいの姿勢で気楽に思っていてくださいね。
三つ目は「原級」です。
「原級」というのは-erや-estがつかない、形容詞と副詞のもともとの形のことです。
「原級」を用いた構文では、<as + 原級 + as・・・>の形で「・・・と同じくらい~だ」という意味を表すことができます。
見た目上は二つの “as” が原級を挟み込んだような形になります。
では例文で確認していきましょう。
“Bobby is kind.”
「ボビーは親切だ」
これらの文からマイケルもボビーも親切だと分かりますが、原級を用いて二人ともが同じくらい親切だ、という意味の一つの文を作ってみましょう。
まず、このように形容詞 “kind” に一つ目の “as” を伴わせて「マイケルは同じくらい親切だ」とします。この “as” は「同じように・同じくらい」という意味の副詞です。
では誰(何)と同じくらい親切かを表すために、“as Bobby is kind”「ボビーが親切なのと同じように」と二つ目の “as” を今度は接続詞として用いてボビーの文を加えます。
という意味の文ができます。
ここで、比較級の文のときと同様に、重複している後半の “is kind” の部分を省略してあげます。
これですっきりとした文の完成です。
ここでは細かい理屈よりも、まずは「形容詞や副詞の原級を二つの “as” で挟み込むことで同程度を表す」ということをしっかりと確認しておいてください。
音読の際には、「マイケルは同じくらい親切なんだ」→「ボビーと同じくらいにね」という語順と意味の流れを大切にしてください。
原級を用いた構文では、否定文の意味に注意が必要です。
否定文はこのように “not” を用いて作りますが、その意味に注目してください。
「・・・ほど~ではない」という具合に、例文ではマイケルの方が「親切さの度合いが下回っている」ことを表しています。
原級を用いた構文の否定文では、単に「同じではない」という意味のみを表すのではなく、「前者の程度が下回っている」、逆に言えば「後者の方が優れている」ことを表すことに注意してください。
いかがだったでしょうか。
比較構文は、学習が進めば進むほどややこしくなって混乱を生んでしまいやすい構文です。
でもその全ては今回ご紹介した3つの基本形に基づくことになります。
これら基本形から始めて、形はもちろんのこと、何と何が比べられたらどうなのかという意味も正確につかみ取ることを大切に、次のステップに進む準備運動と思って繰り返し音読など練習してくださいね。