今さら聞けない《受動態》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.15】

大人のやり直し英語 受動態

英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。

そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?

中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。

それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「受動態」についてご説明します。

 

はじめに

これまでに学習してきた文章は、基本的には「Sは(が)Vする」という意味を中心に持っていました。

では逆に「Sは(が)Vされる」と言いたいときにはどうすればよいのでしょうか?

今回はこの「される」を表す文法について学んでいただきたいと思います。
 

受動態とは?

受動態とは

ある人やモノが動作の主体となるとき、その主体を主語に置いて、「誰(何)が」「する」の順序で文章を作ります。これを能動態と呼びます。

これまで扱ってきた文法は全てこの能動態の文を用いてご説明してきました。

能動態の文章例

逆に、動作の対象となる人やモノを主語に置いて、「誰(何)が」「される」の順序で作る文章のことを受動態と呼びます。

つまり受動態というのは、簡単に言えば「~される」の意味を表すための文法だということです。
 

受動態の形

受動態の形

では受動態はどのような形で作られるのでしょうか?

受動態は<be動詞+過去分詞(+by動作主)>という形で作ります。

動作主とは中心となる動作を行う人や物事のことで、能動態の文では主語に当たります。

先ほどのビートルズの例文を受動態で表してみましょう。

【例】
“That song was written by the Beatles.”

能動態では動作の対象、つまり目的語(O)であった “that song” が主語の位置に置かれ、動詞 “wrote” が “was written” となります。

“written” は見慣れない形ですね。これが過去分詞と呼ばれるもので、この作り方については次項でご説明します。

さらに動作主 “the Beatles” が “by” を伴って最後に添えられています。

このときの “by”「~によって」という意味を表し、全文で「その曲はビートルズによって書かれました」という意味になります。
 

過去分詞の活用

過去分詞の活用

受動態の文を作るのに欠かせないのが動詞の過去分詞です。

過去分詞には「~される」という受動の意味があり、まさに受動態には無くてはならない存在です。

“write” の過去分詞が “written” であることは上で確認しましたが、それ以外にも様々な過去分詞の形があります。

以下に過去形と共にまとめていますので確認してください。

《規則動詞の過去形・過去分詞形の活用》

※原形-過去形-過去分詞の順に活用

①基本的には、動詞の原形の語尾に-edをつける
例:play-played-played visit-visited-visitedなど
--
②原形の語尾が-eの場合には、-dをつける
例:use-used-used love-loved-lovedなど
--
③原形の語尾が<子音字+y>の場合には、yをiにかえて-edをつける
例:study-studied-studied try-tried-triedなど

※ただし、原形の語尾が<母音字+y>の場合には、そのまま-edをつける
例:enjoy-enjoyed-enjoyed など
--
④原形の語尾が<1つの母音字+1つの子音字>の場合には、最後の子音字を2つ重ねて-edをつける
例:plan-planned-planned drop-dropped-droppedなど
--
⑤原形の語尾が-cの場合には、-kedをつける
例:panic-panicked-panickedなど

また、こうしたパターンに当てはまらず、独自の活用をもつ動詞もあり、これを「不規則動詞」と呼びます。
 

【様々な不規則動詞】
A-A-A型(原形、過去形、過去分詞が全て同じ形のもの)
put-put-put cut-cut-cut hit-hit-hitなど
A-B-B型(過去形と過去分詞が同じ形のもの)
keep-kept-kept say-said-said sell-sold-soldなど
A-B-C型(原形、過去形、過去分詞が全て異なる形のもの)
write-wrote-written break-broke-broken eat-ate-eatenなど

これら不規則動詞の活用は使い慣れていく中で個別に覚えていくしかありません。いきなり全て暗記しようとするのではなく、豊富な例文と練習を通じて英語と触れ合う中で自然に覚えていくのが理想的です。

決して焦って嫌にならないように気をつけてください。
 

練習してみよう

受動態の練習をしてみよう

では受動態の文を作る練習をしてみましょう。

次の文を受動態の文に書き換えてみてください。

受動態の練習

※direct「(映画などを)監督する、演出する、作る」

この文では、主語である “Hayao Miyazaki” が動作主です。

まず、目的語(O)である “the movie” を主語に置き、述語動詞(V)をbe+過去分詞の形にします。

そして動作主を “by” を使って表したら完成でしたね。

【例】
“The movie was directed by Hayao Miyazaki.”
「その映画は宮崎駿によって作られました」

 

by~はいつも必要ではない

byはいつも必要なわけではない

受動態の基本として<by動作主>を使うと解説してきました。

ところが現実の英語使用においては、<by動作主>は絶対に必要なものではありません。

むしろ、これを伴わない受動態の文の方が多いくらいです。

では<by動作主>が必要とされないのはどのような場合でしょうか?
 

①動作主が不明な場合

【例】
“I found that the window was broken this morning.”
「私は今朝、窓が割られているのに気が付きました」

このような場合には動作主が不明なため、言いたくても言いようがありません。
 

②動作主を明らかにしたくない場合

【例】
“All I know is the fact that the cake was (all) eaten.”
「僕が知っているのはケーキが(全部)食べられていたっていう事実だけさ」

話し手はひょっとしたらケーキを食べた犯人を知っているのに、言いたくないのかもしれません。受動態なら主語に犯人を置かなくていいので隠すことができるわけです。
 

③動作主が常識的に考えて明らかな場合

【例】
“English is spoken in Canada.”
「英語はカナダで話されています」

「誰が」英語を話すかというと、もちろん「カナダ人(カナダに暮らす人々)」ですね。「カナダ人によって」などとわざわざ言うまでもありません。

【例】
“It is said that Japan is a safe country.”
「日本は治安の良い国だと言われている」

このような一般に言われている話をする場合も、「誰が」言うかは「一般の人たち」であり、あまり重要な情報ではありません。そこで形式的に “It” を主語に置き受動態にすることで動作主に言及しなくていいようにしているのです。
 

④動作主の影響力が極めて弱い場合

目的語に対する動作主の動作の影響力が弱い場合、<by動作主>を使うととても不自然に響きます。

【例】
× “The museum was visited by me last summer.”
「その博物館は去年の夏に私によって訪れられました」
→〇 “I visited the museum last summer.”
「私は去年その博物館を訪れました」

この人物がよほどの偉人かとんでもない自信家なら話は違うかもしれませんが、普通に能動態の文で言った方が自然です。

逆に、動作主の影響力が強い場合にはbyを用いても自然な文になります。

【例】
“The museum was visited by millions of people last year.”
「その博物館は去年何百万人もの人々によって訪れられました」

事の重大さが伝わってきます。
 

受動態の文はいつ使うのか

受動態はいつ使うのか

能動態の文を受動態に変換できるとは言うけれど、ではなぜわざわざ変換してまで受動態を使う必要があるのでしょうか?

受動態にはどこか堅い響きがあり、学術的な文章やフォーマルな文面でよく見られる傾向にあります。ですから日常会話では能動態の頻度の方が高いです。

ですが単に堅い、フォーマルというニュアンスが必要な場合にだけしか受動態は使われないというわけではありません。受動態にはその構造的にとても大切な役割があります。

では受動態の大切な役割とはどのようなものでしょうか?
 

新→旧→新へと情報の橋渡し

一般に英語は、古い情報(旧情報)から新しい情報(新情報)に流れていくという情報構造を持っています。

たとえば、次の2つの文を見てください。

【例】
“I like John. He is very kind.”
「私はジョンが好きです。彼はとても親切です」

一文目の最後にジョンという人物が登場しますが、これは聞き手に初めてこの人物を紹介したわけですから、新情報です。

ジョンは二文目でも再登場するのですが、今度は “He” に置き換わって文頭に置かれていますね。一文目で登場した彼は二文目ではすでに古い情報なのです。

そして二文目の “very kind” が旧情報のジョンの性格を新たに伝える役目を果たしているため新情報として末尾に置かれているわけです。

これを踏まえて、次の2つの文の情報の流れを見てください。

【例】
“I watched a movie last night. It was directed by Hayao Miyazaki.”
「昨夜映画を見たんだ。それは宮崎駿によって作られたんだよ」

一文目で、昨夜見たのは「映画」だったということが新情報として投げかけられ、二文目ではすでに旧情報となったその映画が「宮崎駿」によって作られたものであるという新情報が加えられています。

この二文目を能動態で “Hayao Miyazaki directed it.” としてしまうと、旧情報であるはずの “it”=「(昨夜見た)映画」が新情報が置かれるべき位置にきてしまうため不自然に感じられます。

こうした情報の流れを自然なものにするために、動作主と対象の位置を入れ替えることのできる受動態は情報の橋渡し的な意味でとても重要な役割を担っているのです。

ちなみに、ここで確認したように文の末尾に新情報を置くことで文末に話の重みを載せること「エンド・フォーカス(End Focus)」と呼びます。
英文のメッセージを読み取る際などに役立つ考え方ですからぜひこの機会に知っておいてください。

日本語でも、たとえばニュースのナレーションなどでこの理屈が生かされているのを耳にすることがよくあります。

【例】
「〇〇の事件で昨夜、警察が追っていた男が逮捕されました。逮捕されたのは、△△市在住の無職□□(名前)」

これが、「〇〇の事件で昨夜、警察が追っていた男が逮捕されました。△△市在住の無職□□(名前)が逮捕されました」ではなんだか気の抜けた報道になってしまいますよね。

情報を文の後ろに付け足していくことで、新情報への期待感から興奮を生み出し臨場感を演出し、聞き手を引き付ける役割を果たすことまでできるのが「エンド・フォーカス」であり、受動態はこれを見事に生かしているのです。

これを利用して、どうしても伝えたい情報がある場合には、あえて受動態にしてそれを強調してやればいいのです。

【例】
“The cake was (actually) eaten by Ace, my dog.”
「そのケーキは(実のところ)エースに、僕の愛犬に食べられちゃったんだ」

「エンド・フォーカス」によって「犬」の存在が際立っています。

重要な情報をしっかりと届けたい、そんな思いも、受動態を使う際の重要な要素です。
 

動作主が不明、明らかにしたくないなどの事情を汲む

前項でも述べたように、動作主が不明だったり、明らかにしたくなかったりする場合には、受動態で表現せざるを得ません。逆に動作主が明らかすぎてわざわざ言及する必要もない、あまり重要ではない場合にも受動態が好まれます。

また、主語にあたる部分が長すぎる場合も、頭でっかちな文になってしまわないよう、全体のバランスを整える意図で受動態を用いることがあります。

受動態はこのようなさまざまな事情を踏まえて用いられるのです。
 

まとめ

いかがだったでしょうか。

受動態と言えば、とかく能動態との書き換えの練習をやらされがちです。

それによって「受動態も能動態も形は違うけど結局意味は同じ」と思ってしまうことは少なくありません。

受動態には、「情報の橋渡し」「エンド・フォーカス」といった大きな役割があります。

日本語の受動態は「財布を盗まれた」(被害)とか「表彰された」(利益)など、一般に被害や損益を表す場合に使われることが多いとされています。

しかし英語の受動態はそれ以上に様々な理由や事情で用いられますから、これらをしっかりと意識して、安易な書き換えや対訳に陥らないよう正しく理解していただければ嬉しいです。