K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「過去形の使い方」についてご説明します。
英語をマスターするための重要なことがらに「時制」というものがあります。
これは簡単に言えば「いつの話か」ということで、大きく【現在】、【過去】、【未来】の3つに分けられます。
これまでにご紹介してきたbe動詞と一般動詞の使い方は、基本的には全て【現在】時制を使ったものです。
たとえば、
Do you drink coffee every day?
「あなたは毎日コーヒーを飲みますか?」
(一般動詞の疑問文)
これらはいずれも「現在の」状態や習慣としての行為に関するものです。
では、「過去に~だった」とか「過去に~した」のように、現在とは離れた【過去】の状態や行為などはどのように表現すればよいのでしょうか?
今回は英語表現の幅をさらに広げてくれる【過去】をテーマにご説明していきます。
「~だった」とか「~した」のように、過ぎ去った過去の状態や出来事を表したいとき、英語では動詞の形を変えることでこれを表現します。
過去を表現するための専用の動詞の形があり、これを[過去形]と呼びます。
「過去」とは下の図のように、時間の流れを左から右に向かう矢印で表したとき、話し手のいる現在から見て過去方向に切り離されたところの時間だとイメージしてみてください。[過去形]は、現在とは切り離された時間、という意識が大切です。
この「過去」における状態や動作を表すのが[過去形]です。
また[過去形]は、「~した」という単発的な出来事も、「~だった・~にいた・~していた」という一定の時間の幅のある状態も表すことができます。
まずはbe動詞の過去形を見てみましょう。
be動詞の過去形には2つの形があり、次のように使い分けます。
be動詞の過去形にはこれら “was” と “were” の2つしかありません。主語が "you" 以外の単数であれば “was”、 "you" または複数であれば “were” を使います。
意味はいずれも「~だった」(過去の状態)または「~にいた」(過去の所在)を表します。
They were at the beach this morning.
「彼らは今朝ビーチのところにいましたよ」(過去の所在)
現在形のときと同じ意味で、時間だけが過去にズレるわけですね。使い方もbe動詞を “am” や “are” の代わりに置き換えるだけなのでとても簡単です。
ただし “was” と “were” は “I’m” や “You’re” のように主語とセットで短縮することができませんのでご注意ください。
否定文や疑問文についても、これまでにご紹介した現在形のときと同じように作ることができます。
【参考】今さら聞けない《be動詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.1】
be動詞の後ろに “not” を置く。
※ “be interested in~” = 「~に興味がある」
ちなみに “not” と合わせる場合はbe動詞の過去形は短縮することができます。
短縮形は特に口語(話し言葉)で用いられます。短縮せずに “not” を強く発声すると、「~ではなかった・いなかった」の意味がより強調されます。
主語とbe動詞を入れ替える。
→Yes, he was. / No, he wasn’t.
「はい、怒ってましたよ」/「いいえ、怒ってはいませんでした」
人やものを代名詞(“he”、“she”、“it”など)に置き換えるんでしたね。
疑問詞の後ろに疑問文の語順。
→I was at my friend’s house.
「友達の家にいたんだよ」
命令文については、過ぎ去った過去に向かって命令することはできませんから、過去の命令文というのはありません。
ところで、過去形を用いた文章では、「いつのことか」をなるべく分かりやすくするための単語や表現がよく使われますので、ぜひ知っておいてください。
以下はその代表的なものです。
yesterday | 昨日 |
---|---|
at that time | そのとき・その時間 |
then | そのとき・その頃 |
last 〜 | 前の〜 例:last night(前の夜=昨夜) |
〜 ago | 〜前 例:two years ago(2年前) |
次に一般動詞の過去形についてです。
まず、一般動詞の過去形は、主語の人称に関わらず全て同じ形を用います。三単現のsのように、ある条件のもとでは動詞の形が変わる、というようなことがなく、どのような主語の場合でも同じ過去形を使うということです。
一般動詞の過去形の活用のし方は動詞によって違いがありますが、代表的なものは、次のように動詞の後ろに-edを付ける、というものです
「動詞の後ろに-edを付けて過去形にする」のようにある一定の決まりに従って活用する動詞のことを「規則動詞」と呼びます。
規則動詞の過去形の活用には他に以下のようなパターンがあります。
He played the guitar for her at the party.
「彼はパーティーで彼女のためにギターを弾きました」
また、こうしたパターンに当てはまらず、独自に過去形の活用をもつ動詞もあり、これを「不規則動詞」と呼びます。
など、多数の不規則動詞が存在します。
不規則動詞の中には、過去形が原形と同じ形のものもあります。
規則動詞も不規則動詞も、いちいちパターンに当てはめて考えようとするととてもややこしく複雑に感じてしまいます。
とりわけ不規則動詞の不規則さゆえに、わけが分からなくなってつまづいてしまったり、英語が嫌いになってしまう方も少なくありません。
これを回避するためには、「この場合はこうやって過去形にする」と理屈で考えようとするのではなく、go-went-gone(←goneは過去分詞と呼ばれるもので、これはいずれご説明します)のように(とりあえず過去分詞も含めて)リズムよく何度も声に出して言えるようになることです。
文法参考書をお持ちの方は、巻末付録などに動詞の過去形・過去分詞形の活用が一覧にまとめられていると思いますので見てみてください。
中学生向けの易しめのレベルのテキストを購入するのも良いと思います。もちろん辞書にも載っていますので、そちらもご参考にしてください。
そして上記のような例文を参考に、やはり何度も繰り返し音読することで、考えなくてもパッと過去形が口をついて出てくるようになるまで慣れてしまうことです。
音読やリスニングにあたっては発音も大切です。
過去形の-edは、動詞の音によって[d]、[t]、[id]のいずれかの発音になります。
例:moved、stayedなど
※有声音とは、喉の振動を利用して発する音のこと
m / v / g / zなど
(発声しながら喉元に手を当ててみると、小刻みに震えているのが確認できます。)
例:worked、watchedなど
※無声音とは、喉の振動を利用せずに発する音のこと
s / k / f / pなど
(発声しながら喉元に手をあててみても、震えは確認できません。)
例:needed、visitedなど
もちろんこれらの理屈も大切ですが、CD音声などを頼りに実際の発音を真似するように繰り返し声に出すことも、正しい発音を早く身に付けるために役立つ方法です。ぜひ実践してみてください。
最後に、一般動詞の否定文や疑問文に過去形を使う場合はどのようにすれば良いのか、ご説明していきます。
実は基本的な形は現在形の場合と同じなので、現在形の否定文や疑問文を身に付けていれば、とても簡単に過去形に応用することができます。
【参考】今さら聞けない《一般動詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.2】
“do” または “does” の代わりに “did” を用い、さらにその後ろに “not” を置く。
He did not come to the game last night.
「昨夜の試合に彼は来ませんでした」
現在形の場合、主語によって “do” また “does”(三単現)を使い分けなければなりませんでしたが、過去形ではいずれも “did not” の形となります。
また “did” を用いる場合には、動詞は原形のままであることにも注目してください。
ちなみに “did not” は短縮することができ、“didn’t” となります。短縮形は特に口語(話し言葉)で用いられます。短縮せずに “not” を強く発声すると、「しなかった」の意味がより強調されます。
<(doまたはdoesの代わりに)did+主語+一般動詞の原形+?>
Did Akari pass the test?
「アカリはテストに合格しましたか?」
こちらも現在形の場合と同様の疑問文の作り方を基本として、“do” または “does” を “did” に置き換えることで過去の疑問文にすることができます。
作業としてはそれだけなのでとてもシンプルですね。
否定文の場合と同様、“did” を使うと動詞はやはり原形のままであることや、疑問文では末尾にクエスチョンマーク(?)を置くのを忘れないでください。
発音は、末尾を上げ調子で尋ねるのが普通です。
答え方も同じ理屈で、
Yes, she did. / No, she didn’t.
という具合です。
<疑問詞+(doまたはdoesの代わりに)did+主語+動詞の原形+?>
疑問詞を使った疑問文についても、“do” または “does” を “did” に置き換えるだけで、過去の疑問文にすることができます。
【参考】今さら聞けない《疑問詞を使った疑問文》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.3】
② Who did he meet at the café?
「彼はカフェで誰に会いましたか?」
③ Who broke the vase?
「花瓶を割ったのは誰?」
※疑問詞が主語になる場合には、“did” を置かずに動詞の過去形(ここでは“broke”)をそのまま使います。
疑問詞を使った疑問文では、末尾を下げ調子で言うのが普通です。
答え方としては過去形を使ったり、文脈によっては省略したり “did” で受けたりしながら答えます。
② (He met) Jeff (at the café).
「(カフェで)ジェフ(に会いました)」
③ Jack did.
「ジャックがやりました」
命令文については、be動詞(過去形)の場合と同様、過去に向かって命令することはできませんから、一般動詞の場合もありません。
いかがだったでしょうか。
今回は表現の時間的幅を広げてくれる過去形についてご紹介しました。
過去形の活用についてはややこしいところもあるので覚えるのが大変かもしれませんが、何度も目にしたり言ったりしているうちに自然に多くの過去形を身に付けることができますから、焦って嫌いになってしまわないように、まずは今日ご紹介した例文などを通じて分かりやすいところから取り組んでみてください。
活用を覚える以外のところでは、否定文も疑問文も現在時制の場合と作り方は基本的に同じですから、とてもシンプルで身に付け易いと思います。
ぜひ過去形を身に付けて、ご自身の体験や面白いストーリーなどを英語で共有できるようになってください。