K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「未来表現の使い方」についてご説明します。
前回の記事で「過去形」についてご紹介しました。
では過去形とは逆に、まだ実現していないこと、つまりこれから訪れる【未来】についてはどのように表現すればよいのでしょうか?
これから何かをする予定や何かをしたいという気持ちなど、人に伝えたり確認したりすることも日常ではたくさんあります。
今回はそんな【未来】をどうやって表現するかをご説明していきます。
勘違いされている方も多いので最初に断っておきたいのですが、英語の動詞には「現在形」と「過去形」はあっても、「未来形」はありません。
たとえば "play" という動詞の現在形は "play(s)" で、過去形は "played" ですが、未来形は何でしょう・・・?
思い当たるものがありません。辞書などで動詞の活用を調べても見当たりません。
「え、でも "will" や "be going to" を使うのが未来形だと習ったんだけど…」
と思われる方もいらっしゃると思います。
確かにそれらを指して未来形と呼ぶ人も多いのですが、厳密には、"will" や "be going to" という別の言葉の力を借りて未来を表しているだけであって、動詞そのものが未来を表す形、つまり未来形に活用しているわけではなく、あくまで便宜的にそう呼んでいるだけなのです。
だから「未来形」ではなく、未来を表すための「未来表現」という呼び方がより適切です。細かいことですが、用語はなるべく正しく理解しておくべきだと私は思います。
なお「未来表現」は、大雑把には次の図のように、「現在から見た未来を表す」とイメージされると良いでしょう。
先ほどチラっと出てきましたが、未来を表すのに活躍する代表的な表現が2つあります。
一つは "will"、もう一つは "be going to" です。
使い方は、
という具合に、どちらも動詞の原形をすぐ後ろに置いて未来を表します。
例文を見てみましょう。
"will" または "be going to" に "rain(雨が降る)" や "buy(買う)" といった動詞の原形を付けることで未来を表しています。
ただし、どちらも同じように未来を表すとは言っても、その意味やニュアンスには違いがあります。以下に "will" と "be going to" をそれぞれ解説しますので、その使い分けを確認して下さい。
未来を表す "will" には大きく2つの使い方があります。
※ "will" の短縮形は~ "’ll"
このように、話し手の主観として「きっとそうなる・必ずそうする」と思っていることがらについて述べる場合の使い方が一つです。
この "will" の使い方を「意志未来」と呼びます。
"will" は「~だろう・~でしょう」という日本語訳が当てられることが多いため、なんとなく実現可能性の低い中途半端な未来だと思っている方が多くいらっしゃいます。
ですが、"will" は「意志」というどちらかと言えば明確な気持ちを表すため、実際にはかなりの確信をもって未来の出来事や振る舞いについて述べていることになります。
こちらについても、雨が降ることについて話者には相当の確信があると思っていただいて大丈夫です。
もう一つ例を見てみましょう。オバマ元アメリカ大統領の就任演説の中に、次の一文があります。
この "will" にも、「悪には屈しない」という強く明確な意志を見て取ることができますね。
もしあまり確信が持てないようであれば、次のように「おそらく」とか「思う」といった単語や表現を組み合わせることで、これを表します。
また、"will" の持つ「意志」のニュアンスから、「その場で決めたこと」についても "will" を用いて表現するのが普通です。
「電話に出る」ことや「マイクに聞いてみる」ことはその場で咄嗟に決めたことですね。
ここで "be going to" を用いると、詳しくは後述しますが、あたかも事前に決めてあったことであるかのような印象を与え不自然です。"will" を用いてこそ「今決めた感」が演出できるわけです。
"will" のもう一つの使い方は、このように「話者の主観に関わらず、放っておいてもこのままいけば確実にそうなる」ということがらに対するものです。
この使い方を「単純未来」または「自然未来」と呼びます。
"be going to" にも大きく分けて2つの使い方があります。
一つは、このように主語の人が「そうする」と決めていることを表す場合の使い方です。
例では、ニューヨークや京都への訪問を前提に予定が立てられているニュアンスを生んでいます。
また、"be going to" は意志というよりもどちらかと言えば客観的な意味での予定や計画について言及する文脈で用いられることが多くあります。
なお、be動詞を "was/were" にすることで過去の時点での予定を表現することもできます。
ただしその場合、「~するつもりだった(でもしなかった・できなかった)」のように実現しなかった予定や計画というニュアンスでつかわれるのが普通です。
"be going to" のもう一つの使い方は、このように「そうなりそうなこと」や「そうなってしまいそうなこと」に対するものです。
「気温が下がり分厚い雪雲が空に広がってきている」とか「水が足りなくて花がしおれている」といった何らかの兆候や気配が認められる場合にこの使い方ができます。
※くだけた会話では "going to" を "gonna" と言うことがあります。「ガナ」のように発音します。
こんな状況でもこの "be going to" を使うことができます。
①も②も、「一連の流れに乗っている」様子を想像してみると分かりやすいかもしれません。たとえるなら、「動く歩道やエスカレーターに乗っている」ようなイメージです。
「ニューヨークを訪問する」とか「雪が降る」というゴールに向けて、準備を進めたり天気が変化したりと、すでに動き出している。
そうした一連の流れに乗っている様子を表すのが "be going to" の役割だと思えば、そのニュアンスを正しくつかめるのではないでしょうか。
この項目の最後に1点補足があります。
“will” と “be going to” が最も代表的な未来表現と言えますが、それ以外に “be ~ing” という形でも未来を表現することができる、ということを加えておきます。
この “be ~ing” は「現在進行形」と呼ばれるもので、この形でも「これから行おうとしていること」を表すことができます。文脈としては、比較的近い未来のことがらについて言及することが多いです。
“be going to” も結局はこの「現在進行形」の形を取っていますので、その仲間のようなものだと思ってください。詳しくはまた別の記事でご紹介する予定ですが、少し頭の片隅に置いておいていただければと思います。
ここで、「未来のいつのことか」を表すためによく使われる表現をいくつかご紹介しておきます。
「~しないだろう」、「~するつもりではない」のように、未来に対することがらを否定する方法をご紹介します。
このように、"will" または "be" の後ろに "not" を置くことで否定の意味を表すことができます。
ちなみに、 "will not" は短縮すると "won’t" になります。
「~しますか?」、「~するつもりですか?」を尋ねる文の作り方をご説明します。
このように、 "will" を用いた文では "will" を文頭に出すとyes/no疑問文になります。
その作り方は、以前にご紹介した一般動詞における "do" や "does" を用いた疑問文の作り方と同じです。
"be going to" を用いた文でも、通常のbe動詞を用いた疑問文の作り方と同じで、"be" を文頭に持ってきて主語と入れ替えることでyes/no疑問文を作ることができます。
さらに、どちらの場合も疑問詞を用いた疑問文を作ることも可能で、その作り方はやはり以前にご紹介した疑問詞を用いた疑問文の作り方と同じです。
【参考】
今さら聞けない《一般動詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.2】
今さら聞けない《be動詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.1】
今さら聞けない《疑問詞を使った疑問文》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.3】
"will" を用いた疑問文でも、“Will you~?” については別の意味が生まれてしまうので注意が必要です。
このように、“Will you” の後ろに何らかの行為を表す動詞を置くと、相手に「~してもらえませんか?」とお願いする意味の文になります。
これは相手に「あなたは~する意志はあるか」と問いかけることで、間接的に依頼を表すことになるためです。
依頼についてはいろいろな表現方法があり、今後の記事でもご紹介したいと思います。
いかがだったでしょうか。
基本的な未来表現は "will" と "be going to" の2パターンです。
ですがこれらを「どちらも同じ」とか「どちらでもいい」と勘違いしている人は少なくありません。
あるいは、「同じではないようだがどう使い分ければいいか分からない」と悩まれる方も多くいらっしゃいます。
今回ご紹介した大きな意味の使い分けやイメージを参考に、正しく使いこなせるようになっていただければ嬉しいです。