K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「助動詞の使い方」についてご説明します。
現在形や過去形は、主語がどういう状態である/であったのか、どのようなことをする/したのかという事実を述べるときに使う動詞の形だと学習してきました。
たとえば、
は「ジョンは科学を教えます」という意味で、ジョンが日常的に行っている教えるという行動を事実として伝えています。
このように事実をありのままに伝えることはもちろん大切なことですが、一方で「ジョンが科学を教えるべきだ」という具合に話し手である私たち自身がそのことについてどのように思っているか、を伝えたいと思うこともよくあります。
今回は、この「~すべき」のように話し手の主観的な思いや気持ちを伝えたい場合に、どのように表現すればよいかということについてご説明していきます。
※なお、中学の学習内容と切り離さない方が都合が良いと判断したものについては、高校英語の学習内容も含んで解説しています。
先ほどの「~すべき」のように、話し手が思っていることを伝えるための言葉を助動詞と呼びます。
助動詞は<助動詞+動詞の原形>という組み合わせで使い、動詞の意味に対する話し手の思いや判断などを表します。
助動詞には主に以下のようなものがあります。
これらのうちから適切な助動詞を使って、冒頭の例文「ジョンが科学を教えるべきだ」を英語に直すとどのようになるでしょうか?
となるわけですね。
思いを運ぶ大切な言葉、それが助動詞です。
ではここから1つずつ見ていきましょう。
まずは “can” です。
「~できない」と否定的な意味にする場合には “not” を用い、“can’t” または “cannot” とします。よほど “not” を強調したい場合を除いて、“can” と “not” は切り離さずにくっつけます。
「~できますか?」と尋ねる場合には主語と助動詞を入れ替えます。
“can” を使って「~できますか?」と尋ねる場合、相手の能力を直接的に問うことになるため、「あなたに~できるの?」というニュアンスになり、失礼に思われることもあります。
ですから、たとえば “Can you speak English?(英語が話せますか?)” と尋ねるよりも、日常的な行為として “Do you speak English?” と相手が普段から英語を話す人であるかどうかと、現在形で尋ねた方が無難である場合もあります。
「能力」「可能」から発展して次のようないろいろな場面で使うこともできます。
なお、“can” の過去形 “could” を用いることで、より丁寧なニュアンスで許可を求めたり依頼したりすることができます。
これは過去形を用いることで、相手との心理的な距離感が生まれ押しつけがましさが軽減されるためで、決して過去のことを表しているわけではありません。
逆に “cannot” は可能性を否定することから「あり得ない」という「確信」の意味で使われることもあります。
このように “can” は多くの文脈で使われます。
慣れないうちは大変に感じるかもしれませんが、「能力」と「可能」の基本的意味を中心に意味の広がりをイメージしてみてください。
“can” の代わりに “be able to” という表現を使って「~できる」という能力を表すことができます。
“be able to” は過去に「(実際に)~できた」ことを表したり、“will” などその他の助動詞とともに使うこともできます。
ちなみに過去形の “could” を過去の文脈で用いると、「能力があった・可能だった」を表します。
助動詞は二つ以上同時に用いることができないため、“will can” とはなりません。
次は “may” です。
このように “may” も “can” と同様に許可を与えたり求めたりすることのできる助動詞ですが、“may” の方がより上下関係や権限の有無を意識させるためのニュアンスになります。
過去形 “might” も同様に推量を表します。一般に “may” よりも確信度合いが低いことを表しますが、実際には “may” と大差がない場合も少なくありません。また、過去のことについて言及しているわけでもありません。
“may” の持つ「してもよい」と「かもしれない」の二つの意味には一見つながりが見当たりません。
しかし、「してもよい」とは「妨げるものはないから自由にすればいい」という意味で、この「妨げるものがない」という意味が「可能性を閉ざすものがない」という解釈に結びつき、「可能性がありえる」つまり「かもしれない」という意味へと発展したわけです。
続いて “must” です。
このように “must” は「義務」「必要」をまず表します。
親しい間柄の人同士では、「しなければならない」が転じて「絶対にするべきだ」、「ぜひしてほしい」という具合に強いおススメの気持ちを表すこともあります。
非常に強制力の強い “must” ですが、その強さから否定文では「~してはいけない」という「禁止」の意味になります。
“have to” は “must” とほぼ同じ意味を表す重要な表現です。
“have” は「ハf」のようにfの音で発音します。三単現では “has to” となります。
“must” は過去を表すことができないため、「~しなければならなかった」と「過去における義務」を表したい場合には次のように “had to” を用います。
このように “have to” の否定形は「必要が無い」を表し、「してはいけない」の意味にはなりません。
“be able to” のように、その他の助動詞と一緒に使えるのも “have to” の特徴です。
ところで、“have to” と “must” のいずれであっても使えそうなケースでは、どちらがより頻繁に使われているのでしょうか?
実は “have to” の方が圧倒的に上回っていると言われています。
「~しなければならない」という日本語を思い浮かべるとき、真面目に勉強した人ほど “must” が真っ先に思い浮かぶものだと思います。
ですが “must” は相手に対して命令的な響きがあり、より客観的な視点に立って「状況的に~しなければならない」と述べている “have to” の方が一歩引いた感じが伝わるため好まれるのです。
強制力のある “must” はある状況を指して「~でなければならない」→「~に違いない」という「確信」の意味で使われることもあります。
ちなみに “must” はこの「~に違いない」の意味で使うことの方が日常的には多くあります。
また、“have to” も同じ意味で使うことができますが、こちらの方が何らかの根拠に基づいた客観的な視点に立っているニュアンスです。
次は “should” です。
“must” のような強制的なニュアンスではなく、「~した方がいい」くらいの意味でアドバイスを与えるようなときに使うことが多くあります。
“should” とほぼ同じ意味を表す表現に “ought to” があります。
否定文では “ought not to” という語順になることに注意が必要です。
“ought to” は “should” よりも強めのニュアンスがあります。ただアメリカ英語ではあまり使われることはありません。
“ought to” も同様に使うことができますが、普通は “should” を使います。
最後に “will” です。
前回解説した未来を表す “will” がこれにあたります。
「意志」の “will” は否定文ではこのように「どうしても~しない」という「拒絶」を表すこともあります。
疑問文では「~してもらえますか?」と「依頼」を表すことができます。
“can” のときと同様、過去形 “would” を用いることで丁寧なニュアンスにすることもできます。
“will” を用いた「依頼」は、相手の意志に直接問いかけ、「してほしいんだけど」という具合に命令的なニュアンスになることがあります。
その場合、「状況的に可能かどうか」を問いかける “Can/Could you ~?” の方が相手に配慮したニュアンスとして好まれることもあります。
このように来訪者がやってくることが事前に想定されているような、状況を予測できる場面でかなり確信度の高い「推定」を表すことができます。
いかがだったでしょうか。
高校英語の内容に踏み込んだ部分もありますが、どれも英語に欠かせない重要な助動詞ばかりです。
それぞれの助動詞に複数の意味があって難しい、と感じられる方が多いのですが、たとえば “can” の「能力」「可能」や “will” の「意志」といった基本的な意味をまずは押さえて、その他の意味での使い方もイメージすると理解の手助けになると思います。“must” の持つ強制的なニュアンスなどもそうですね。
これなら自分にも使えそうだと思える表現から使い始めて、徐々に慣れていくのも良いと思います。
焦らずに少しずつ身に付けられるように取り組んでみてください。