「枕ことば」は英語でも表現できる! おもてなしの心で一流接客英会話表現

みなさんこんにちは。
フリーの通訳・翻訳家として活動しております、りほと申します。

今日は、日本語の特徴のひとつである「枕ことば」についてです。
文章の先頭で、相手への配慮やへりくだる気持ちを伝え、
次に続くことばの印象を和らげる効果があるこの「枕ことば」は、
英語でも表現することができるのでしょうか。
そのあたりのお話をさせていただきます。

「枕ことば」で日本が誇る最高の接客を

日本のコンビニエンスストアの接客のレベルは、
海外の一流ホテル並みとも言われています。
それを可能にしているのは、見返りを求めない、
日本ならではの美しい心なのかもしれません。
これは日本の誇るべき文化のひとつと言えるでしょう。

そして、世界に誇る日本のおもてなし文化を、
英語で表現できないのはもったいないと思うのです。
他言語で自国の文化は再現しにくいと思われがちですが、
言葉は無限の可能性を秘めています。限界などありません。

結論として、日本流「おもてなし」は英語でもできるんです!
では、どのようにしてそれが可能になるのか。
日本の「おもてなし」の心を、
接客シーンにおける自然な英語で再現していきます。

枕ことば1. “Unfortunately,…” “I’m afraid…”

どうしてもお客様の要望に応えられないときってありますよね。

例えば、鞄が重量オーバーだったときに、
アメリカの航空会社だと

“You’re over. Gotta take some out.”
(超えてるね。ちょっと中身ださなきゃ。)

という言い方で済ませてしまうことがありますが、
日本流の「おもてなし」で、丁寧に表現したいところです。

“We only accept luggage up to 23 kilograms.”
(23キロまでのお鞄しか受け付けません。)

これで少しだけ丁寧になりました。
でも、日本語ならもっと優しく言えそうですよね。
そこで「枕ことば」の出番なのです。

“Unfortunately, we can only accept luggage up to 23 kilograms.”
(あいにくですが、お預かりできるお鞄の重量は23キロまでです。)

日本らしさ、出ています!
日本語ではよく「あいにくですが~」、「残念ながら~」、「恐れ入りますが~」
などの枕ことばが使われますが、
英語でも同じ意味の前置きをすればいいのです。

例えば、

“Unfortunately,…”
(あいにく~)

“I’m afraid…”
(残念ながら~/恐れ入りますが〜)

が同じ効果をもたらします。

“I’m afraid we can only accept luggage up to 23 kilograms.”
(残念ながら、お預かりできるお鞄の重量は23キロまでです。)

でもOKです。
お客様にどうしても言いづらいことを伝えなければならないとき、
ぜひ使ってみてくださいね。

枕ことば2. “If you don’t mind…”

例えば、お客様が寒そうにされているとき、海外なら

“Want me to go get you some blankets?”
(毛布持ってきてあげようか?)

このように言うかもしれません。
ちょっと自分の手間を強調しすぎているようで、
日本人なら自然と気が引けてしまう表現だと思います。

それではこの表現はどうでしょうか?

“May I bring you a blanket?”
(毛布をお持ち致しましょうか?)

とても丁寧な表現で素敵だと思います。
しかし、これならば海外の方でも少し丁寧な方なら思いつく表現です。

日本には、相手への好意を「自分勝手なこと」と捉え、
お客様のご迷惑でないかを伺うような謙虚な心遣いがあります。
これこそが見返りを微塵も求めない、美しき「おもてなし」の心です。

この気持ち、できることなら海外のお客様にも感じとってもらいたいですよね。

日本語なら、「差支えなければ~」や「よろしければ~」
なんて言葉を添えることが多いですが、英語では

“If you don’t mind…”
(差支えなければ〜)

を使用すると良いと思います。

“If you don’t mind, may I bring you a blanket?”
(差支えなければ、毛布をお持ち致しましょうか?)

とても謙虚な雰囲気が出ていますね。

ちなみに、“If you don’t mind”とは直訳で、
「もし構わないのならば」という意味ですので、間違っても

“No, I don’t mind if you do.”
(君がそうしてくれるなら構わないよ。)

と言われても、
断られたと思って立ち去らないでくださいね!

枕ことば3. “May I ask you to…”

お客様にお手数をお掛けしてしまうときや、
ご協力をお願いしなければならないときには、
できるだけへりくだった表現を使いたいところです。

例えば、館内のWi-Fiへのアクセス方法を聞かれて、
事前にメールアドレスの登録にご協力いただかなければならない場合。

“Excuse me, how do you access the network?”
(すいません、どうすればネットワークにアクセスできるんですか?)

とお客様に聞かれたとします。海外なら、

“You’re gonna have to register your e-mail.”
(メールアドレス登録しなきゃだめだよ。)

なんて軽いアドバイスで済ませてしまうかもしれません。
この“You’re gonna have to〜”(〜しなきゃだめだよ)のような表現は、
海外ではよく聞くフレーズです。
友達に言うぶんには良いのですが、あまり接客向きではありません。
ここは日本らしく、丁寧に表現してみましょう。

“Please register your e-mail address to access the network.”
(ネットワークにアクセスするには、メールアドレスをご登録ください。)

これでとても丁寧な言い回しになります。
どこでも万能な”Please”を使わない手はないのです!
そして、さらに謙虚さをプラスするには、

”May I ask you to…”
(よろしければ~)

という丁寧な言い回しも使えます。

“May I ask you to register your e-mail address to access the network please?”
(よろしければ、ネットワークにアクセスするのにメールアドレスをご登録いただけますでしょうか。)

これで、「お手数をお掛けします」という、下手に出た気持ちが表現できます。
お客様も快く受け入れてくれるでしょう。

枕ことば4. “Rest assured Mr./Ms. ○○.”

例えば、お客様が飛行機に乗り遅れてしまったとき。
海外の航空会社なら、

“One sec. Let me see if I can rearrange it for ya.”
(ちょっと待ってね。再手配できるか見てあげるから。)

このように言われるかもしれません。
日本語で言われるとフランクすぎてびっくりしますよね。
しかもどこか他人事のような表現です。
日本のサービスらしく、スマートかつフォーマルに伝えるなら、

“I will arrange your transfer flight right away.”
(すぐに振替便を手配いたします。)

と伝えられます。この、”Right away”という表現は、
「お客様のために急ぎます!」という気持ちが表せるので、とてもよく使えます。
これでサービスに重厚感が生まれました。

しかし、お客様に共感してあげることこそ、
日本の接客の素晴らしさですので、
この言葉を加えて少しでも安心感を与えられるようにしましょう。

“Rest assured Mr./Ms. ○○.”
(○○様、どうぞご安心ください。)

“Rest assured Mr./Ms. ○○. I will arrange your transfer flight right away.”
(○○様、どうぞご安心ください。すぐに振替便を手配いたします。)

日本人らしい気遣いと優しさが生まれましたね。

枕ことば5. “Excuse me, sir(男性)/madam(女性)”

お客様に注意をしないといけないとき。
これほど言いづらいことってないですが、
こういうときこそ日本の「おもてなし」をフル活用してみたいですね。

例えば、静かなラウンジ内でお子様たちが騒いでいて、
他のお客様のご迷惑になっているとき。海外のサービスなら、

“You have to ask your kids to calm down.”
(子供たちにちょっと落ち着いてもらわなきゃだめよ。)

なんてスッパリ言ってしまうものです。
でも、このままだとちょっと傷ついちゃいますよね。
もう少し優しく伝えてみましょう。

“Ummm… I have to tell you something… your kids are kind of loud…”
(えっと…ちょっと言いたいことがあるんだけど…あなたの子供たち、ちょっとうるさいかもしれない…)

あれ、これじゃ負け腰なだけですね…。
エレガンスから程遠くなってしまいました…。
やっぱり、ここは気合いを入れて、枕ことばを三重で使ってみます!

“Excuse me, sir(男性)/madam(女性), I’m afraid… may I ask your children to lower their voices?”
(お客様、すみません。恐れいります…よろしければ、お子様のお声を少し沈めていただけませんでしょうか?)

なんということでしょう。とっても丁寧になりました!
これで逆ギレされたりせずに済みそうです。
これでだめなら、自分の運命を恨みましょう…。

また、お客様に話しかけるとき、
日本語では「すみません」や「恐れ入ります」などと言いますが、英語では

“Excuse me, sir(男性)/madam(女性)”
(すみませんが〜/恐れ入りますが~)

という前置きのフレーズを使います。

男性ならば“sir”、
女性ならば“madam”もしくは“ma’am”(発音注意:メヤム)
と付けることで、より丁寧な接客向きの表現となるのです!

「大和ことば」を英語で再現!

漢語や外来語、濁音を抜いた「大和ことば」もやわらかい印象を与え、
サービスではよく使われる手法です。
もちろん、英語に「大和ことば」は存在しませんが、
同じようにやわらかく聞こえる言葉はたくさんあります。

英語では、そのような響きの良い単語を選ぶという習慣があまりないので、
日本人ならではのテクニックとして、ぜひ英語でも習得したいところ。

“Certainly” = 「もちろん」

「何事もお客様のご要望には快く応えたい」という、
心がこもったこの言葉。響きもやわらかいですよね。
お客様のご要望にはまず、この“Certainly”を使うと好印象です。
“Of course”や“Alright”よりも丁寧な表現なのです。

例えば、お客様に

“Can you tell me the way to the bathroom?”
(お手洗いの場所を教えてもらえる?)

と聞かれた場合、

“Certainly, sir/madam. It’s right over there, beside the smoking area.”
(もちろんです、お客様。あちらの喫煙室の横にございます。)

などと答えることで、
「おもてなし」の心を伝えることができます。

“My pleasure” =「どういたしまして」

「あなたの喜びは、私の喜び」
という気持ちがこもった応え方です。

例えば、お客様のなくしものを長時間探した末に見つかったとき。
お客様から、

“Thank you so much for your help.”
(手伝ってくれて本当にありがとう。)

と言われたら、
“You're welcome.”や“No problem” などよりも、
“My pleasure”と伝えると気持ちが晴れやかになりますよ。

難しい言葉をあえて簡単な言葉に言い換える

言葉の響き以外にも、大和ことばの良さといえば、
「小難しい漢語をやわらかく言い換えられる」という点があります。

日本人の耳から聞いて難しいと感じる言葉は、
英語を母国語としている人からしても少し堅苦しく感じることが多いので、
無理に使用するのは逆効果だったりします。

例えば、

“Assist”(援助する)
は、
“help”

と言い換えられます。

“Shall I assist you to the gate, sir/madam?”
“Shall I help you to the gate, sir/madam?”
(ご搭乗口までお手伝いいたしましょうか?)

ですと、後者のほうが親しみやすい印象になります。

その他にも、

“Necessary”(必要)
は、
“Need”

と言い換えられます。

“ESTA is necessary for traveling to the U.S.”
“You need ESTA to travel to the U.S.”
(アメリカに渡航するにはESTAが必要です。)

こちらも後者の方がやわらかく聞こえますね。

このように、難しい言葉を簡単な言葉に置き換えることによって、
会話の響きをやわらかくするということは、海外でも使われる手法です。

わざと難しい言葉を使うよりも、
もともと知っていた言葉で工夫して話すことで、
好印象をもたらすことができるのです!

最後に

お客様の立場に立って、優しく言葉で包み込む。
その日本流「おもてなし」精神を英語に乗せるのは、
意外と簡単なことです。

なによりも大切なのは、
言葉を選ぶ際の「心遣い」と言えるでしょう。

日本で育ったからこそ伝えられる優しさを、
臆することなく、
自信を持って海外にも発信していきましょうね!