西東 たまき
(更新)
お正月の料理と言えば「おせち料理」。
毎年12月が近づくと、おせち料理の通信販売の広告が目に付きます。
一様に重箱に詰められた、普段あまり見かけない食べ物の数々、華やかな見た目、ときには万単位の金額が付いているおせち。日本の習慣に馴染みのない人だと、これは一体何だろうと思うかもしれませんね。
時代とともに、食べる人が少なくなってきていると言われるおせちですが、今でも日本のお正月には欠かせないものの1つです。
そこで今回の記事は、「おせち料理について英語で説明するとしたら?」がテーマです。シンプルで分かりやすい英語表現を考えてみましょう!
「おせち」は、英語でもそのまま osechi です。osechi ryori としても構いません。
ただし、それだけでは何か分からないので traditional Japanese New Year feast「伝統的な日本の正月料理」のように説明します。
具体的に理解してもらうためには、もう少し詳しい描写が必要ですね。
「おせちとは、三段の重箱に詰められた料理一式です」
近年、bento「弁当」や bento box「弁当箱、弁当箱入りの食事」といった言葉は海外でもだいぶ知られてきています。
「おせちには、前菜、メインディッシュ、デザートなど幅広い料理が揃っています」
「おせち料理は、美しさが大事です」
「正月休み中に料理をしないで済むよう、おせち料理は数日前に準備されます」
「保存がきくよう、おせちにはたくさんの砂糖を使います」
「かつては、おせちは家で調理されていましたが、最近は出来合いのおせち料理を買う人が増えています」
ここまでの説明で「おせち」の大まかなイメージは伝わったと思いますが、その中身についてさらに詳しく説明するとなると、ちょっと難しそうですね。
どんな料理が入っているのか、こちらもできるだけシンプルな英語表現を考えてみましょう。数あるおせち料理の中から、全国的に共通していて、欠かせない5品をピックアップします。
また、おせち料理の1つ1つに意味が込められていますよね。どんな意味があるのかを説明する英語表現も一緒に考えていきましょう。
「おせち料理の1つ1つに意味があります」
「料理の名前や意味は、大抵語呂合わせになっています」
まずは、華やかな色と独特の質感で存在感を放つ「栗きんとん(kuri kinton)」。
その英語表現を考えるにあたり、英語で「栗」は何と言うかちゃんと分かりますか? マロングラッセの連想から「マロン」が頭に浮かぶ人が多いようです。でも、正解は chestnut ですよ!
で、本題の「栗きんとん」は次のように言い表すことができます。
「栗きんとんとは、栗の甘露煮が入ったピュレ状のサツマイモです」
滑らかな素材感は「ピュレ状(pureed)」と説明すると簡単です。「甘露煮」は candy「砂糖漬けにする、シロップ煮にする」という動詞を使います。
鮮やかな黄色であることから、栗きんとんは金を表しているとされます。「~を表す」と言うには represent が便利です。
「その見た目の色から、金と富を表しています」
「伊達巻(datemaki)」は、英語ではよく sweet rolled omelet「甘い巻物状のオムレツ」のように表現されます。
見た目からは想像が付きませんが、魚のすり身も含まれていますよね。その点にも触れながら説明してみましょう。
滑らかな魚の「すり身」を表すにも、栗きんとんの例で使った動詞 puree が使えます。
「伊達巻とは、白身魚のすり身が入った甘い巻物状のオムレツです」
巻物=書物に見立て、伊達巻は知性を象徴しているとされます。
「~に似ている」という意味の resemble、「~を象徴する」を意味する symbolize を使って伊達巻の意味を説明してみましょう。
「巻物に似ているところから、知性や学業成就を象徴しています」
豆の種類としての「黒豆」は black beans です。
料理名としての「黒豆(kuromame)」は、次のように説明すればどのようなものかすぐ分かります。
「黒豆とは、シロップで煮た黒い豆です」
「豆」は、「まめに」という言葉を連想しています。
「マメは日本語で『豆』の意味であると同時に『マメである』という意味もあります。マメに働けるようにとの願いを込めて黒豆が食されます」
田作り(tazukuri)とは乾煎りし(dry-roast)、甘じょっぱい(sweet and salty)味付けをしたイワシ(sardine)です。
そのまま英語にすると……
「田作りとは、乾煎りし、砂糖と醤油で味付けした小イワシです。味は甘じょっぱいです」
田作りの材料は魚ですが、田畑の豊作を願う食べ物です。その根拠は…
「田作りは豊作を意味しています」
「昔は、米がよくできるようにイワシが肥料として使われていたのです」
「ハス、スイレン」は英語で lotus です。その地下茎である「レンコン」は lotus root と言います。
酢漬けにされた野菜などを英語でピクルス(pickles)と言いますね。pickle「酢漬けにする」という動詞を使えば「レンコンの酢漬け」を説明できます。
「酢レンコンは薄切りにして甘酢漬けにされたものです」
レンコンを食べることは「将来を見通す」という意味に繋がっています。「将来の見通し」は perspective や outlook を使います。
「レンコンにはいくつもの穴があることから、新年の先を見通せる、見通しがきくという意味を持っています」
今回の「おせち料理」のように、深い背景を持った文化や伝統について英語で説明するのは、一見難しそうに感じるかもしれません。
でも、1つ1つ向き合って考えてみると、意外とシンプルに表現することも可能なのだなと思われた方も多いのではないでしょうか。
日本語で言おうとすることをそのまま英訳するのは難しいものですが、言いたいことの要旨を取り出して伝えるようにすると、英語でも説明しやすくなりますよ。