「笑う門には福来る」「猿も木から落ちる」など、日本語にはユニークな言い回しのことわざがたくさんあります。でも、ことわざは何も日本だけのものではありません。国や言語によって、特徴のある教訓や格言はさまざま存在します。
言語を勉強する上で、ことわざを知ることは、その言語圏の文化の背景や、ものの考え方の理解につながります。
そこで今回は、ネイティブが日常会話でよく使うことわざを7つご紹介します。なかには、日本のことわざと意味がそっくりなものも。使う単語を比べてみるのもおもしろいかもしれません。
1. 「〜しないよりはマシ!」なことわざ
Better late than never.
● 遅れても来ないよりはましだ。遅れてもしないよりはましだ。
これはビジネスでも使えますね。しなければならないことが遅れてしまったときや、遅刻してしまったときなどによく使われます。
After finally completing his project, John sighed in relief and thought, 'Better late than never.'「ついにプロジェクトを完成させた後、ジョンは安堵のため息をついて、『遅くともないよりましだ』と思った」
2. 他人の悪事を目にしたときに使うことわざ
Two wrongs don’t make a right.
● 他の人が悪いことをしたからといって、自分も悪いことをしていいことにはならない
行列に割り込む人を見て、自分も割り込んでしまう。そんな場面を見た、第三者がよく使うことわざです。日本語の「人の振り見て我が振り直せ」に少し似ていますね。
Even though Mark cheated in the game, Tim realized that cheating back wouldn't solve anything, because two wrongs don’t make a right.「マークが試合でズルをしたとはいえ、ティムはズルをやり返したところで何の解決にもならないと悟った」
3. 他人の羨んだときのことわざ
The grass is always greener on the other side of the fence.
● 垣根の向こう側の芝生はいつも緑が濃い
日本語の「隣の芝生は青い」とほぼ同じですね。他人の持っているものが良く見えてしまうときに使われます。
After moving to a new city, John realized that the grass is always greener on the other side, as he started to miss his old home.「新しい都市に引っ越したジョンは、故郷が恋しくなり、隣の芝生は青いと悟った」
4. 失敗した相手を励ますことわざ
The 3rd time is the charm.
● 三度目の正直
“charm” とは「魅力・お守り」の意味です。しかし、ここでは「幸運」の意味で訳されます。3回目は幸運が舞い込んでくるということで、失敗した相手への励ましの言葉としてよく使われます。
Despite failing twice before, I reminded myself that the 3rd time is the charm as I prepared for my driving test.「過去に2度失敗しているにもかかわらず、運転免許試験の準備をしながら、三度目の正直を自分に言い聞かせていた」
5. 似た者同士をあらわすことわざ
Birds of a feather flock together.
● 同じ羽の鳥は一緒に群れる
日本語の「類は友を呼ぶ」と同じ意味です。
- a feather:1種類の羽=同種
- flock:群れる
“birds of a feather(同じ羽の種類の鳥)” が主語になりますね。実は、“birds of a feather” だけでも、「似た者同士」という意味になり、どちらかというとそちらの方がよく使われるようです。
John and Mary always enjoyed the same hobbies and had similar tastes in music, truly showing that birds of a feather flock together.「ジョンとメアリーはいつも同じ趣味を楽しみ、音楽の好みも似ているので、本当に似た者同士だ」
6. 事前の準備を促すことわざ
Hope for the best, but prepare for the worst.
● 最善を望み、最悪に備えよ
日本語の「備えあれば憂いなし」と同じ意味。「いざという時のため、前もって準備をしておこう」と注意を促す場合に使われます。
“good” の最上級である “the best” に、“bad” の最上級である “the worst” が呼応していますね。
Even as we hope for the best outcome in our project, it's wise to prepare for the worst by having a backup plan.「プロジェクトで最善の結果を望むにしても、バックアッププランを用意して最悪の事態に備えるのが賢明だ」
7. 好みの多様性をあらわすことわざ
Beauty is in the eye of the beholder.
● 美は見る人の目の中にある
日本語の「蓼(たで)食う虫も好きずき」と同じ意味です。
同じものでも、見る人によって美しく見えたり、そうでなかったりします。つまり、見る人ひとりひとりの基準は異なるということですね。
実は、こちらのことわざを応用させたシャレがあります。
Beauty is in the eye of the beer holder.「美しさはビールを持っている人の目の中にある」
“beholder” を発音の似た “beer holder” に変えることで、「酔っ払えばなんでも美しく見える」とおふざけで皮肉っています。
さいごに
いかがでしたか? 同じ意味のことわざでも、日本語とは使われている単語が違うものが多くありました。
今回ご紹介した他にも、英語にはまだまだたくさんのことわざがあります。特に日本語に直接訳せないものは、もはや英語圏独自の思想そのものといえるでしょう。
普段英語のことわざなんて勉強したことがなかった! という人も、この機会にぜひ覚えて、会話の中で使ってみてくださいね。