西東 たまき
(更新)
話すときも書くときも、私たちは「たとえ」という表現テクニックをよく使います。文法用語で「比喩(ひゆ)」と呼ばれるものです。
比喩を使うことで物事がイメージしやすくなったり、意味が分かりやすくなるといった効果があります。また、ユーモラスな言い方をしたいときも比喩が使われますね。英語でもこのテクニックを使うことで、同じ効果を得ることができます。
当記事では、あなたの英語がもっと面白くなるテクニックのひとつとして、英語ネイティブがよく使う比喩表現についてご紹介していきます。
かたくなで融通が利かない人を日本語で「石のように頭が固い」と言ったりしますよね。頑固さを石にたとえたものです。
また、清らかで心優しい人を「〇〇は天使だ」といったりすることもあります。もちろん、実際は天使ではないのですが、優しさを天使にたとえて表現したものです。
このように、別の何かに例えて表現する方法を「比喩」といいます。「たとえ」というと分かりやすいですね。
中でも、最初の例文で「石のように~」といったように、「~のように」や「~のようだ」という言い方をしたものを「直喩」、2番目の例文で「~は天使だ」といったように「~だ」と言い切ったものを「暗喩」または「隠喩」と呼んで区別します。
英語ではそれぞれ “simile(直喩)”、 “metaphor(暗喩/隠喩)” と呼びます。
“simile” はスペルが “smile(スマイル)” に似ていますが、「スィミリー」のように発音するので注意しましょう。“metaphor” の方は、日本語でも「メタファー」と書いて使われていますね。
それでは、“simile” と “metaphor” の見分け方と例を順番にみていきましょう。
ビートルズの有名な曲の一つ “A Hard Day’s Night” の印象的な出だし部分に、“I've been working like a dog”、 “I should be sleeping like a log” というフレーズが出てきます。
“work like a dog(犬のように働く)” とは「がむしゃらに働く」、そして “sleep like a log(丸太のように眠る)” は、「ぐっすりと眠り込む」を意味する英語の定番表現です。
同じくビートルズには、“Free as a bird(鳥のように自由)” という曲もあります。
これらのように、“like” または “(as)~as…” を使って「~のように/~のようだ」を表したものが “simile” です。
さらに例を見ていきましょう。
まずは “like” を使ったものからです。「動詞+like」の後に、自分が「~みたいだ」と思う名詞を続けます。
「赤ちゃんのような喋り方をする」
「赤ちゃんのような喋り方を止めてよ。耳障りだよ」
「ダイヤモンドのように輝く」
「勝者の目はダイヤモンドのように輝いていた」
「壊れたレコードのように聞こえる」
同じ話を何度も繰り返していると、「壊れたレコード」にたとえられてしまいます。壊れたレコードは同じ箇所を際限なく繰り返しますからね。英語でよく使われるお決まりの表現の一つです。
「しつこいのは分かってるんだけど、本当によく考えてみて欲しいんだ」
「陶器屋さんにいる雄牛のよう」
直訳すると「陶器屋さんにいる雄牛のようだ」になるこのフレーズは、「不注意で危なっかしい様子」を表す言い回しです。
ここに出て来る “china” は小文字で始まっていることからも分かるように、「中国(China)」ではなく「陶器(china)」のことです。壊れやすいものがたくさんあるところに、周囲を顧みない雄牛がいたら危なっかしくて見てられませんよね。
「デリケートな場面なんだから、引っ掻き回すようなことしないでね」
「ひとつのサヤに収まった2つの豆のよう」→「似たもの同士」
「私たちって本当に似た者同士。友達になれて、とても嬉しいわ」
「どのチョコレートを食べることになるか分からない」→「予想が付かない」
トム・ハンクスの代表作、映画『フォレスト・ガンプ(Forrest Gump)』に “Life was like a box of chocolates(人生は、箱に入ったチョコレートのようなものだった)” というセリフがありました。
「人生って何が起きるか分からないから面白いんだ」
次は “as” を使ったものを見てみましょう。
「(as)+形容詞または副詞+as+名詞」です。最初の “as” は省略可能です。
「氷のように冷たい」
日本語でも同じ言い方をしますね。“as high as the sky(空のように高い)” や “as light as air(空気のように軽い)”、 “as smooth as silk(絹のようになめらか)” など、日本語と同じ表現はたくさんあります。
「彼女に本当のことを打ち明けたら、彼女の声は途端に氷のように冷たくなった」
「ABCのように簡単」→「とても簡単」
「心配しないで! テストは本当に簡単だから!」
「太陽のように輝かしい」
「彼女の素晴らしい功績は、今後も輝き続けるだろう」
「キュウリのようにクール」→「冷静である」
実際、キュウリは水分が多いため、内部は低温が保たれています。
「腹の中では怒り心頭だったけど、冷静に対処するように努めた」
「パンケーキのように平たい」
「ぺったんこ」な状態は、英語では “pancake(パンケーキ)” にたとえられます。
「私のバッグの中身がぐちゃぐちゃだったせいで、テイクアウトしたランチボックスがペッタンコになった!」
「ドアのクギのように全く動かない」→「完全にダメ」
直訳すると「doornail(ドアのクギ)のように全く動かない」、つまり「完全にダメだ」ということ。シェークスピアの『ヘンリー六世』に出て来る表現として有名です。
「このパソコン、突然動かなくなった」
“metaphor” は、「~のようだ」ではなく、「(まるで)~だ」と言い切った形のことでしたね。
何かを思いがけない物事に結び付けることで印象強いイメージを作り出します。
「生き字引」
色々なことをよく知っている博識な人を「生き字引」と言ったりしますね。日本語では「生きた」と表現されますが、英語では「歩く(walking)」が使われます。
“dictionary(辞書)” の代わりに “encyclopedia(百科事典)” を使うパターンもありますよ。
「彼女は、正に生き字引です」
「ガラスの天井」
性別や出身などを理由にした不当な状況は、しばしば「見えない壁=ガラスの天井」にたとえられます。
「彼らはガラスの天井を破るために奮闘しなければいけなかった」
「夜のとばり」
夜になることを、「垂れ下げた布によって暗くなる」様子にたとえた表現です。
「夜の帳(とばり)が下りたら出発しましょう」
「メールのなだれ=メールの殺到」
“avalanche” は「雪崩(なだれ)」のことです。なだれのような勢いで大量のメールが押し寄せる様子が目に浮かびます。
「休みが明けたら、私の受信箱にメールが殺到していた」
今回は、物事を生き生きと表現するテクニック “simile(直喩)” と “metaphor(暗喩/隠喩)” を英語で使う方法についてご紹介しました。
物事を別の何かにたとえて表現することで、具体的なイメージを伝えることができます。また、どんなものにたとえるかによってユーモアのセンスも発揮できる楽しいテクニックです!
使い方も日本語と同じで簡単でしたね。いつもの英語に取り入れて、自分らしいセンスを表現してみましょう!