西東 たまき
(更新)
2019年末、トランプ政権下のアメリカに「宇宙軍(Space Force)」が誕生。
翌5月には日本でも「宇宙作戦隊」が発足しました。
SpaceXやBlue Originなど企業家による宇宙ビジネスへの進出、さらには一般人の宇宙旅行の実現など、近年、宇宙界隈(かいわい)が賑やかです。
2022年春にかけては、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が応募資格を大幅に緩和した上で、宇宙飛行士候補者を一般募集したことも話題になりましたね。
宇宙開発といえば国際的な協働が必須であり、詳しく知ろうとすれば英語での情報収集は欠かせません。
そこで、今回は宇宙開発に関する英語の特集です。普段触れることが少ない分野の英語表現の世界に浸ってみましょう!
宇宙開発に関する情報を理解するカギとなる英語表現を、動詞、名詞、形容詞ごとに見ていきます。
この単語は「探検」という意味で覚えている人が多いかもしれません。
しかし、英語で宇宙を「開発する」というときに使うのはこの単語です。Explore には「探査する、調査する」という意味があります。名詞は exploration です。
「ロボットは宇宙探査の重要なツールです」
「私は、宇宙開発にとても興味があります」
名詞では「陸地、土地」のことですが、動詞としては「着地する、着陸する」という意味になります。飛行機の着陸アナウンスでも耳にするはずですよ。
「飛行機は10分後に着陸します」
「1969年7月、ニール・アームストロングが初めて月面に降り立ちました」
人工衛星やロケットを「打ち上げる」というには、この単語が使われます。
ビジネス用語でも、新規サービスやプロジェクトを「ローンチする(始める)」と言ったりしますね。
「SpaceXがスパイ衛星を宇宙に打ち上げたって聞いた?」
ダウンロード、アップロードなどの用語で、すでにお馴染みの言葉です。
Load は「積む、載せる」という意味で、ロケットの話題では、燃料などを「積み込む、充填する」という意味になります。
「液体燃料をロケットに積み込む必要があります」
これら3つの英語はどれも日本語で「宇宙」ですが、宇宙開発の話題で使われるのはもっぱら space になります。
Universe は地球も含めたすべての存在を表し、cosmos は秩序や調和のとれた宇宙を意味する言葉として使われることが多いです。
「ハッブル望遠鏡は、これまで宇宙で検出された中でもっとも遠い星を発見しました」
「科学者たちは、時間を逆行する鏡のような宇宙が存在する可能性があると言います」
人工衛星、探査機、宇宙船など、宇宙で使うために打ち上げられる「移動物体全般」を指します。
「スペースXは、再使用型宇宙船を製造している」
「探る、調べる」といった意味を持つ動詞であり、名詞でもあります。宇宙に関する文脈では「探査機」の意味でよく使われます。
「日本は、火星に宇宙探査機を送る準備をしている」
「火星に生命の痕跡を探るミッションが実施されています」
カタカナでもきっと聞き覚えのある「サテライト」とは、「衛星」のことです。地球のまわりを周る「月」が代表的ですね。
「私たちは、人工衛星からたくさんの恩恵を受けています」
Travel agency(旅行代理店)に international agency(国際機関)、あるいはカタカナでも「エージェンシー」は、よく聞きますね。
宇宙関連で使われるときは、宇宙開発を実施する機関のことを指します。日本の宇宙研究開発を担う「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の英語名「Japan Aerospace Exploration Agency」にも入っていますよ。
「最近、アフリカの宇宙機関が活発になってきています」
Astronaut は英語で「宇宙飛行士」を意味する一般名詞です。
しかし、訓練を受けた国によって異なる呼び方も存在します。ロシアで訓練を受けた飛行士は cosmonaut、中国なら taikonaut です。
astro- は英語で星や天空を意味する接頭語、cosmos は英語と同様に宇宙を意味するロシア語です。では、taiko はどこから来ているのでしょうか?
中国語の「太空」、すなわち宇宙のことです。なお、-naut の部分は sailor、つまり船乗り、水兵を意味します。
「宇宙飛行士たちは訓練中だ」
ちなみに、観光で宇宙船に乗る人は passenger(乗客)と呼ばれます。
「民間の宇宙旅行者には最低限のトレーニングが行われるのみです」
英語で「宇宙旅行」は space tourism と呼ばれます。
「宇宙旅行産業で働きたいんだ」
隕石や宇宙探査機が地球や天体に近付いてそのまま通過する「接近通過」は、英語で flyby です。
簡単な言葉ですが、ちょっと馴染みにくい印象がするかもしれません。
でも、改めて考えたら fly は「飛ぶ、飛行」、by は「~のそばに、~を通って」といった意味ですから、flyby が「接近通過」という意味になるのも納得しますよね。
「近々、小惑星の接近通過があるって聞いた?」
また、flyby は航空機が、ある場所の近くを飛行して人々に見てもらうことを指す場合もあります。例えば、航空ショーでは、イベントのスケジュールの一部として、航空機の flyby が行われることがあるのです。
天体や人工衛星の記述でよく出てくる「軌道」のことです。「軌道を回る」という意味の動詞にもなります。
「サテライトは軌道に入るのに成功した」
「月は地球を回っている」
日本語で「ソーラーシステム」というと太陽熱を利用した温水システムなどを指しますが、英語の solar system は宇宙の「太陽系」のことです。
「太陽系の向こうには何があるだろう?」
「惑星」です。太陽系には水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つがありますね。
「太陽系には8つの惑星がある」
「雰囲気」という意味で知られる英語ですが、宇宙の文脈で使うと「大気、大気圏」を指します。
「サテライトは、あと数分で大気圏に突入するよ」
宇宙での距離の単位「光年」を英語にするには、直訳すればOKです。
「光年は、時間ではなく距離を測るものです」
地球上では、動いている物体について話すとき、weight(重さ)、speed(速さ)、height(高さ)といった言葉を使うことがあります。
しかし宇宙旅行では、より有用な情報を提供するために、mass(質量)、velocity(速度)、altitude(高度)といった単語を使用します。
Mass は、物体の中にどれだけ物質が入っているかを表すもので、重さと違って、重力の大きさによって変化するものではありません。
「太陽の質量は地球何個分?」
Velocity は、速度と進行方向の両方を表す指標で、宇宙船の行き先を計画するためには、この2つがわかっていなければなりません。
「地球の脱出速度はどのくらい?」
そして altitude とは、地球上の海面からの高さを表す指標です。
「高高度飛行試験が行われる」
日本語の文章でも、時折カタカナ書きで見かける「デブリ」。
これは「破片、残骸」のことです。フランス語由来の言葉なので、最後の s は発音しません。
「宇宙ゴミへの懸念が高まっています」
Crew とは乗組員のことです。Crewed で「乗組員がいる=有人の」になります。Manned も同じ意味です。
「火星への有人宇宙飛行は、いつになると思う?」
否定の意味を持つ接頭語「un-」が付くと「無人の」になります。
「無人探査ミッションは1960年代からたくさん行われています」
Solar system(太陽系)の項目で触れた通り、太陽に関する形容詞は solar なのに対し、月に関する形容詞が lunar です。
「この望遠鏡で月面が見えるかな?」
Planet(惑星)の形容詞です。「惑星の」という意味であり、狭義では「地球の」にもなります。
「惑星探査の研究に興味があります」
Planetary に「~の間の」という意味を持つ接頭語「inter-」が加わると、「惑星間の」という意味になります。
「惑星間飛行って可能なの?」
宇宙開発に関する英語表現というと難しい印象ですが、カタカナで聞き覚えのある言葉も意外と多かったのではないでしょうか。
日本語でいう「ソーラーシステム」や、英語の atmosphere など、宇宙関連の話題では、私たちがよく知っている意味とは異なってくる言葉もありました。
宇宙に関するニュースが増え、関連用語を耳にする機会も多い昨今、国際言語である英語での表現も知っていると受け止め方も深まります。
普段の英語とは趣(おもむき)の異なる、宇宙用語の独特なムードを楽しんでいただけたらと思います!