西東 たまき
(更新)
言語が変わると、同じ意味を表す言葉や表現が別の言葉にない、ということがよくあります。
言葉は文化の表れであり、その文化にない概念は、当然それを表す言葉もないからです。
例えば、日本語の「いただきます」や「ごちそうさま」の直訳表現が英語にないのも、その発想がないから。
したがって、あえて翻訳が必要なら「それに相当する表現」を使って対応することになります。
今回ご紹介する「ただいま」「おかえり」も、そういった例の1つです。英語だとどんな表現になるのか見ていきましょう!
「ただいま」の英語表現というと I'm home や I'm back といったフレーズが知られています。
これらはもちろん、「ただいま」の意味で間違いありませんが、日本語の「ただいま」と比べると少しニュアンスが違います。
みんなが帰りを待ち望んでいるところに「戻って来たよ!(I'm back!)」と伝えたり、「誰もいないの? 家に帰って来たんだけど!(I'm home!)」と知らせるような状況で使うのがこれらの英語フレーズです。
よって、日常的な外出から帰ったときに使うには少し大げさに聞こえてしまいます。
実は、日本語の「ただいま」の感覚で使うのにピッタリなのは、Hi/Hello/Hey などです。
これらは外で人に会ったときに使う挨拶フレーズのはずですよね。でも、戻って来たときに使えば「ただいま」に相当する表現になりますよ。
続けて相手の名前を言うように心掛けましょう。より英語らしくなります。
「お母さん、ただいま」
「お父さん、ただいま」
英語の「ただいま」は、随分シンプルでしたね。次は「おかえり」を見ていきましょう。
「おかえり」の英語表現として多くの人が記憶しているのは Welcome back や Welcome home ではないでしょうか。
そしてこれらもまた、日本語の「おかえり」とは少しニュアンスが違います。
たとえば、長期休暇から戻った仲間をむかえるときの Welcome back!「おかえり!」や、久々に帰宅した家族を迎えたたときの Welcome home!「おかえり!」のように、しばらく留守にしていた人がやっと帰って来たときに歓迎して使うのがこれらのフレーズです。
なので、朝いつも通りに家を出ていつも通りに帰宅した人への日常挨拶としては、やはり大げさに聞こえます。
日々の外出から帰って来た人にちょうどよい「おかえり」の英語表現は次のようなものです。
なんと、「ただいま」と同じですね。帰ってきた方も迎える方も、お互いにこれらのフレーズを交わします。
続けて相手の名前を言うようにするのを忘れずに。これはマナーといってもよいでしょう。
「おかえり、マミ」
「ただいま、アイシャ」
できればこれだけで済ませず、さらに以下のようなフレーズを重ねて行きましょう。
直訳すると「あなたにとってどんな一日でしたか?」です。日本語の会話でも、「おかえり。今日はどうだった?」なんて言いますよね。
「今日はどうだった?」
「うん、いい一日だったよ」
学校から帰ってきたのであれば、「学校はどうだった?」と具体的に聞いてみるのもいいでしょう。
「今日、学校はどうだった?」
「悪くなかったよ=結構楽しかったよ」
仕事帰りであれば、「仕事はどうだった?」と言うことができます。
「仕事はどうだった?」
「大変だったよ。今日はすごく忙しくて」
同様に、出張や旅行から帰ってきたのであれば「trip(出張/旅行)はどうだった?」と声を掛けます。仕事だったのなら、これは「ねぎらい」の表現にもなりますよ。
「旅行/出張はどうだった?」
「すごく良かったよ」
楽しむために出掛けて行った人には、「楽しかった?」と聞くことが自然な挨拶になります。
「楽しんで来た?」
「うん、すごく楽しかった」
Did you have a good time? と同じく「楽しかった?」という意味ですが、短い Had a good time? の方がカジュアルな言い方です。
「楽しかった?」
「うん、すごく楽しかったよ」
Did you have a good time?/Had a good time? の言い換え表現で、これもまた「楽しかった?」の意味です。
「楽しかった?」
「いや、全然楽しめなかった」
さて、ここまで挙げてきた「おかえり」の英語表現を見ると、どれも外から戻ってきた人への関心を示す質問形式のフレーズになっていることに気付いたのではないでしょうか。
今回ご紹介した例文以外のシーンで「おかえり」と言いたいとき、同じように考えてみるとよいかもしれません。
今回は「ただいま」と「おかえり」の英語表現を探ってみました。
日本語と同じニュアンスの直訳表現はありませんでしたが、日本語では「ただいま」、「おかえり」の定番フレーズで迎えるのに対し、英語では「〇〇はどうだった?」に始まる会話を続けることが代替表現になることが分かりましたね。
こういった表現の違いから文化の違いを垣間見ることができるのも、外国語を学ぶ楽しみの1つですよね。