西東 たまき
(更新)
今では日常的に話す人が世界に存在しないラテン語ですが、実は英語と密接な繋がりがあります。
多くの辞書には単語の意味のほかに語源も書かれていますが、そこに注目してみると、英語にはラテン語から派生した言葉がとても多いことに気が付きます。
ラテン語から派生している言葉もあれば、ラテン語そのままの表現もあります。その中には私たちにとってお馴染みの言葉も少なくありません。
今回は、英語で使われるラテン語と、ラテン語由来の言葉についてご紹介していきます!
ラテン語がもとになっている言葉を、身近な表現を中心に挙げていきます。みなさんの知っている単語はいくつあるでしょうか?
まずは、ラテン語そのままで使われている表現です。
A対Bのように、2つの物ごとの対立や比較を表すときによく vs. という頭文字が使われますね。
この vs. というのは、ラテン語 versus を略した表記です。versus は「対」や「向きを変える」といった意味があります。
また、vs. は v. と書くこともできます。この略語は法律的な文脈でよく使われ、裁判では、vs. の代わりに v. が使われることが多いです。
「メメント・モリ」という言葉に聞き覚えのある人もいるでしょう。これはラテン語で Remember to die「いつか死ぬということを忘れるな」という意味です。
日本語の文章で「原文ママ」という表記を見たことがありますか? 原文に誤字があるが、そのまま記載していますという意味の断り書きです。
英語の文章でそれにあたる表記が sic。通常、角括弧で挟んで [sic] のように表記します。例えば、下記の例文の your は you’re の間違いですが [sic] を挿入することで、あえて原文通りに記載していることが分かるようになっています。
ラテン語で around「約、だいたい」にあたる言葉で、「約〇年頃」という意味を表すときに使います。approximately「約、だいたい」 の言い換えとして歴史や過去を記述する文章でよく出てきます。
午前・午後を表すのに私たちも日常使っていますね。それぞれ ante meridiem/post meridiem というラテン語の頭文字です。before を意味する ante と、after を意味する post が正午を意味する meridiem と組み合わさった作りになっています。
英語の文章の最後などに N.B. と書いてあったら、それは「注、注記、備考」の意味です。ラテン語 Nota Bene の頭文字で、英語にすると Note well「よく注意するように」のことです。「N.B.」 はたいてい大文字で書かれます。
2つの事がらについて述べた内容が、立場を逆にしても当てはまるという状況を「逆もまたしかり、逆も同様である」などと言うことがありますね。英語では、turn/turned を意味するラテン語 vice versa が使われます。
アメリカでは「履歴書」を résumé と呼びますが、イギリスでは curriculum vitae、略して CV という表現が使われます。ラテン語で course of life という意味があります。
ラテン語で et は and、cetera は the rest、それらを合わせた et cetera で「その他いろいろ、等々」という意味になります。日本語でも「エトセトラ」と言うことがありますし、「etc.」 という省略表記もよく知られていますね。
英語に直訳すると the state in which、日本語では「現状、現況」の意味になります。ニュースなど硬めの文章でよく出てきます。
直訳英語で of fact、日本語だと「事実上」という表現にあたります。これもニュースなど堅めの話題でよく出てきます。
capit は「頭」、per は「〜ごとに、~あたり」の意味です。つまり日本語の「一人頭=一人当たり」という表現に一致します。経済などの話題でよく使われますよ。
ちなみに、パーセント「%」も per cent「100あたり」という、ラテン語で文字通りの表現になっています。
次は、由来がラテン語の言葉や表現を紹介していきます。
英語 library(図書館)は、「本」を意味するラテン語 liber がもとになっています。
こんな初級の英単語にもラテン語由来の言葉があります。Anima はラテン語で「生き物、生命」を表し、 animate「生命を吹き込む、活気づける」から animation「アニメーション、活気」などの語彙に広がります。
「言語」を意味する language は、ラテン語 lingua「舌」が基になっています。
アクアリウム「aquarium(水族館)」や、アクアマリン「aquamarine」など、アクアという言葉も馴染みがありますよね。ラテン語で「水」を意味します。
風を通したり換気をする装置がベンチレーターです。感染症予防の換気のために公共施設でも多く使われています。「風」を意味するラテン語 ventus がもとになっています。
種族としての「犬」を意味するこの英語は、ラテン語 canis「犬」から来ている言葉です。もし、歯の話題で canine が出てきたら、そのときは「犬歯」を指します。日本語でも英語でも同じ表現になっているのは面白いですよね。
Hair(毛)を意味するラテン語 capillaris から来ている言葉です。日本語でも「毛」という漢字が入っているところが共通していますね。
ラテン語で「すべてを網羅した教育」を意味しています。円・周などの意味を持つ circ の部分が circle「丸」や circuit「回路」とも共通しています。オンライン百科事典『ウィキペディア「Wikipedia」』は encyclopedia をもじった命名であることが分かります。
冬という意味に通じるラテン語 hibernare から来た言葉です。ラテン語にルーツを持つフランス語で、「冬」を表す hiver という音が含まれています。
ラテン語で「年」を意味する annus と、最初に挙げた versus が持つ「回転」の意味が合わさって、「年ごとに巡る=記念日」という意味になっています。
例えば、星占いに興味を持っていなくても、多くの人は自分の星座を知っているかと思います。
通常、英語で星座名を表すときはラテン語名が使われます。「ふたご」座なのに twin ではないし、「魚」座なのに fish ではありませんよね。星座の一覧表で名前を見比べたら英語とはまったく違うスペルの言葉になっていることに気付くでしょう。
ヒトの学名「ホモサピエンス」をはじめ、生物の学名もラテン語です。
例を挙げればキリがないほど、英語にとってラテン語は切っても切り離せない関係にあります。
英語を学習すると言ってもそれだけでなく、他の言語との関わりを意識することで、より学習を深めることができますよ。
今回の記事をきっかけに、興味を持ってもらえれば幸いです。