嶋津 幸樹
(更新)
日本人が最も苦手とする IELTS のスピーキングセクション。
4技能の日本人平均スコアの中で、最も平均点が低いのがこのスピーキングなのです。今回は IELTS スピーキングの基本情報とパート毎の戦略、そして IELTS スピーキングで僕が実際に8.5を取得した時の経験談をお伝えします。
17歳の時に起業してからこれまで、500名以上の小中高生に海外進学に必要な英語を教えてきた指導者としての経験と、日本の英語教育を受けて IELTS の勉強をしてきた学習者という2つの視点から、皆様のスコアアップに役立つ情報をご紹介します。
スピーキングテストはネイティブスピーカーの IELTS 認定試験官との約14分間のテスト。コンピュータに話しかける TOEFL ibt とは違い IELTS は対人型のスピーキングテストです。試験は下の表のように、パート1からパート3で構成されていています。
そして録音されたスピーキングテストは、パート毎に下の4つの評価基準で2人の IELTS 認定試験官が採点します。
IELTS スピーキングでは言語力を評価しているとされていますが、内容も軽視できないということを覚えておかなければなりません。この4つの評価基準を意識しながら、記事の後半部分で紹介します「コロケーション&テンプレート」「背景知識」を身につけてあらゆる質問にも対応できるようにしておきましょう。
パート1で出題される質問は全て予想することが可能であり、点数を落としてはいけないセクション。対策次第で誰でも満点を取ることができます。過去の出題問題を分析してみると「Family」「Travel」「Sports」「Television」「Clothes」などの約30トピックから同じような質問が出題されていることがわかります。
このような30個のトピックに対して自分なりの回答を用意しておきます。シンプルな質問にも最低2~3文で答えるようにしましょう。複雑な構文を用いたり、低頻出語彙を1語以上使うと高得点を狙えます。
ただし、ここで気をつけなければならないことは「間違った表現」の使用を避けることです。そのためには無理に自分で文章を創造するのではなく、ネイティブスピーカーを使用したフレーズや表現をコピーするよう日々心がけましょう。
パート2では、1つの指示文と3つの内容文が書かれたカードを渡されて1分間で準備するように伝えられます。
1分間の準備を終えた後、1分〜2分間を使って指示文に従いながら一方的に話す必要があり、ここで大切なことは与えられた内容文に対して質問順に全て回答すること、そして面接官に止められるまで話し続けることです。さらにここでは、カードに書かれた質問文とは違う単語を使ったり、表現を言い換えたりしてパラフレーズすることが大切です。
「影響を受けた先生」について、1〜2分の文章を作る上で気をつける点をお伝えします。
まず指示文 「Describe a teacher who has influenced you.」 に対しての回答は 「The teacher who had a great impact on me was…」 というように influence を impact などの同意語に言い換えて文章を作成します。
また、指示文に書かれている「出会った場所」「教えてくれた教科」「特別なこと」は経験話を混じえながら試験官に止められるまで全て回答するようにしましょう。
僕が指導してきた高校生の中で高得点を獲得する生徒の特徴は、談話標識(Discourse Marker)の使い方が上手だということ。談話標識とは会話をスムーズに行うための文と文をつなぐための言葉です。
例えば 「you know…, well…, kind of…, actually…」 のような、日本語で言う「えーと」「あの」「なんか」と言ったような直訳できないフレーズです。多用は厳禁ですが、1~2分のスピーチで談話標識を全く使用しないのも不自然です。ネイティブが話す動画を視聴し談話標識がどのように使われているかを分析し、適材適所に談話標識を使うことを心がけましょう。
なんか、それは SV のような感じです
えーと、私が A を好きな理由は SV です
えーとですね、私の控えめな意見として SV だと考えます
パート3で最も重要なことは、英語で自分の意見を論理的に発表すること。
ここでは普段考えたこともないような質問を受けることがありますが、どのような質問に対しても、話を自分なりに展開させて解釈を加えていかなければなりません。そこで必要となってくるのが英語力に加えて背景知識です。
パート3ではそれぞれのトピックに関して、事前に背景知識を身につけておくことが大切。この背景知識の有無が IELTS 7.0~8.0 の山を越えられるかどうかを左右します。
またこのパートでは、話の流れに一貫性を持たせて、自分の意見を英語で次々と展開していくスキルが評価されると考えています。どんなに英語の発音が良くて流暢さに長けていたとしても、シンプルな文法しか使わず短文で一貫性がないものは高い評価を受けません。
もちろん IELTS6.0~7.0 を狙う場合には、難しいことを言わずにシンプルに終わることも可能ですが、ここで差をつけるためにはバラエティー豊かな背景知識を英語で発表することです。日頃から英語で情報を入手して自分の意見をまとめるようにすることと、それに関する知識を構築しておくことがパート3で高得点を取るための秘訣です。
*SVは主語(Subject)動詞(Verb)を示す
IELTS スピーキングでは、自分の意見を表現する様々なテンプレートを用意しておく必要があります。日本人はよく 「I think…」 で文章を始めますが、それを繰り返すと高得点は取れません。
SVが私が考える主な理由の一つです
私の見解からすると、これは重要な問題であり、それはSVだからです
違いを聞かれた時にすぐに 「The difference is…」 と始めるのではなく、以下のように自然な会話の流れを作るようにしましょう。
AとBの違いを考えると、私はSVでしょう。
以下のように文章を切り出すことで、that 以降の文章を考える時間を稼ぐことができ、かつ主語動詞を含んだ長めの文章を作ることが可能です。
私が最も感謝しているのはSVである
仮定法を使用することにより、必然的に定型表現を使うことになります。 また時制を過去にすればするほど、丁寧な表現となります。
もし機会があればVするでしょう
もし機会があったらVしていたでしょう
Part 2 や Part3 では考える必要がある問題が出題されます。質問を受けた直後に沈黙するのではなく、考える時間が必要な場合はこのようなフレーズで凌ぎましょう。
このようなトピックについて考えたことはないですが、SVです
この質問に関係があるかはわかりませんが、一つの可能性としてはSVです
このトピックについて考える時、私はSVだと信じています
1度聞き直すことで減点はされません。質問の内容が不明確だった場合には、これらの表現を使って聞き直しましょう。
質問を繰り返してくれますか
もう一度お願いできますか
もう一度繰り返していただけますか
ライティングでも同じことが言えますが、副詞を使用することは豊かな表現として捉えられ得点アップにつながります。実際にネイティヴは自己主張の時に副詞を多用します。
この考えには全く反対です
私の考えとは全然違います
これらのテンプレートを活用してどのような質問にも瞬時に答えられるように対策しましょう。大切なことは自分のオリジナルのテンプレート集を作り様々な場面で実践を繰り返すことです。
私が IELTS スピーキングで8.5を取得した時、パート3の最後に質問されたのが「音楽教育についてどう思いますか?」という質問でした。
好きな音楽の種類から始まり、日本の学校教育における音楽の役割まで様々な質問を受けた後、この質問に対して私はこのような回答をしました。
まずは Music の語源について。英単語にはそれぞれ語源があります。
music の "mus" の語源は「見る」という語源で「音楽は聞くものではなく見るものだったのです」という話をしました。
そして museum 「博物館」や musical 「ミュージカル」は本来見るためのものである、と述べました。
このように英単語の語源について知識を持っておくことで幅広いトピックに対応できます。
さらに「音楽」に関連付けて暗記していた以下のテンプレートがたまたま有効活用できました。
このようなテレビのニュースや新聞で見かけた表現を、日頃から盗み自分のものにするようにしましょう。
ネイティブが使う表現をよく観察して自分のものにできれば、自ずと正確さ(accuracy)も向上していくはずです。
いかがでしたか。
日本人は特にスピーキングが苦手と言われていますが、今回ご紹介したようなことを意識しながら日々の学習に取り組めば、ハイスコアも夢ではありません。
スピーキング対策においては、実際に英語を口に出して練習することが何よりも大切なので、オンラインレッスンなどを通して外国人の講師相手に英語を話すのもおすすめです。
ちなみに、中・高6年分の英単語を語源とコロケーションで効率的に学べる私の書籍『英単語Roots(Jリサーチ出版)』が、全国書店にて発売中です。
こちらには、私がIELTSで実際に活用した表現をたくさん掲載しています。語源を使って英語を学び直したい大人の方にもオススメですのでぜひお手に取ってみてくださいね!