西東 たまき
(更新)
英語には大きく分けて「アメリカ英語」と「イギリス英語」という区分がありますが、日本で使われている英語は圧倒的にアメリカ英語です。
私たちの多くが聞き慣れている発音はアメリカ英語ですし、もちろん、学校で習うのもアメリカ英語です。
実のところ、英語発祥の地であるイギリスの英語とアメリカの英語はどう違っているのでしょう?
また、あらためて英語を学ぼうとするときは、どっちを選べば良いのでしょうか?
当記事では、これらの疑問にお答えして行きます!
日本にいるとアメリカ英語が圧倒的とはいえ、世界に出れば必ずしもそうとは限りません。
たとえば、かつてのイギリスの植民地の多くではイギリス英語が使われています。筆者が在住する東アフリカのタンザニアで使われている英語も、もちろんイギリス英語です。
では、アメリカ英語とイギリス英語にはどんな違いがあるのか。具体的に見てみましょう。
文章を目にして、すぐに気付くのはスペルの違い。
パソコンなどのスペルチェック機能では、アメリカ英語かイギリス英語かの設定次第でスペルミスとして認識されてしまいます。
どのように違うのか、いくつか例を挙げていきます。
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
色 | color | colour |
労働 | labor | labour |
隣人 | neighbor | neighbour |
疑い深い | skeptical | sceptical |
タイヤ | tire | tyre |
考古学 | archeology | archaeology |
ライセンス | license | licence |
カタログ | catalog | catalogue |
プログラム | program | programme |
次のような単語は、アメリカ英語かイギリス英語かによって語尾の「e」と「r」が逆になっています。
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
センター | center | centre |
メーター | meter | metre |
シアター | theater | theatre |
ファイバー | fiber | fibre |
リットル | liter | litre |
語尾が「-ze」で終わる英語の動詞はたくさんありますね。イギリス英語では、これらはことごとく「-se」になります。
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
実現する | realize | realise |
特化する | specialize | specialise |
要約する | summarize | summarise |
入院させる | hospitalize | hospitalise |
分析する | analyze | analyse |
認識する | recognize | recognise |
以下の単語では「l」の数が違うのに気付きましたか?
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
travelの-ing形 | traveling | travelling |
travelの-ed形 | traveled | travelled |
fuelの-ing形 | feuling | feulling |
fuelの-ed形 | fueled | fuelled |
cancelの-ing形 | canceling | cancelling |
cancelの-ed形 | canceled | cancelled |
アメリカ英語とイギリス英語では動詞の過去形にも違いがあります。
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
spell「綴る」の過去形 | spelled | spelt |
learn「習う」の過去形 | learned | learnt |
burn「燃やす」の過去形 | burned | burnt |
アメリカ英語とイギリス英語では、言葉自体が異なるものも少なくありません。
イギリス人とアメリカ人が出てくる映画などでは、互いの言葉の違いを面白がるシーンがよくあります!
意味 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
トラック | truck | lorry |
ガソリン | gasoline | petrol |
車のボンネット | hood | bonnet |
車のトランク | trunk | boot |
エレベーター | elevator | lift |
ピリオド | period | full stop |
消しゴム | eraser | rubber |
蛇口 | faucet | tap |
フライドポテト | French fries | chips |
また、イギリス英語では、文章中に使われる言葉や表現のチョイスも硬めのものが多い印象を受けます。
さらには日付の順番も、そして建物の階数の数え方も、アメリカ英語とイギリス英語では異なります。
たとえば、アメリカ英語で日付を書くと「月・日・年」の順番になりますが、イギリス英語では「日・月・年」になります。違いを知らない人が見たら、きっと「間違っている」と思われてしまいますね。
同じように、建物で 1st floor といったらアメリカ英語でも日本語でも「1階」のことですが、イギリス英語では「2階」になります。イギリス英語で「1階」は ground floor です。
また、イギリス英語では「Mr.」「Ms.」「Dr.」などの後ろのピリオドは要りません。
発音面の違いはどうでしょう。試しにイギリス英語のサンプルを聞いたら、発音もイントネーションも明らかに別物であることがすぐ分かると思いますよ!
アメリカ英語を聞き慣れている耳にとっては、イギリス英語は独特のムードがあります。
しかし、聞き慣れてみると、アメリカ英語よりイギリス英語の方が発音が分かりやすいと感じることもあるかもしれません。アメリカ英語では消えてしまいがちな子音の発音は、イギリス英語だときちんと発音されます。
また、私たちが聞き慣れている英語独特の「r」の発音は、イギリス英語だと日本語の伸ばす音「ー」に近いので、発音もしやすいと思いますよ。
思いのほか相違点があるアメリカ英語とイギリス英語。しかし、通じなくて困るなんてことはほとんどありません。
では、どっちを学べば良いか? その答えは「どっちでも好きな方で良い」です。
迷うようであれば、アメリカ英語が使われる環境ならアメリカ英語、イギリス英語が使われる環境であればイギリス英語を選ぶのが合理的です。
ただ、日本で手に入る教材や学習機会はアメリカ英語が多いので、その点、アメリカ英語の方が、学習環境は有利と言えます。
イギリスの教科書には、「どっちを使ってもよいが、文章を書くときはどっちかのスタイルに統一しましょう」と書かれていました。
アメリカ英語とイギリス英語、どっちを選ぶにせよ、この点は頭に入れておいた方が良さそうです。
日本に入ってくる情報はアメリカからやって来るものが断然多いため、アメリカ英語には意識せずとも触れているはず。
テレビの音声を副音声に設定すれば聞こえてくるのは基本的にアメリカ英語ですし、英会話教室なども、特に宣伝がない限りはアメリカ英語が多数です。
それに引きかえ、日本でイギリス英語に触れたいと思ったら意識的に機会を探す必要があります。
でも、インターネットを使えば、下記のようにさまざまなソースに簡単にアクセスできますね。
アメリカ英語とイギリス英語、それぞれの違いを楽しんでみてください。
アメリカ英語とイギリス英語、日本にいると意識する機会がほとんどありませんが、学校で教わり正しいと思っていた英語が実は唯一のものではないということは伝わったのではないでしょうか。
それどころか、世界にはこの2つ以外にもたくさんの英語が存在します。どっちかが正解というわけではありません。
世界中の人が英語という共通言語を、それぞれの自国語の影響を交えながら使ってコミュニケーションしています。
「アメリカ英語」ばかりにとらわれず、そんなグローバルな英語の世界に思いを馳せてみてください。