英単語帳を開くのが億劫なあなたに! 英単語学習を「自動化」するテクニックをご紹介します。

「単語を覚える」

これは英語(言語)学習において最も初歩的な命題の一つです。

単語学習は、少し荒っぽい言い方にはなりますが、「ただ覚えて頭に入れていくだけ」という意味ではとてもシンプルで手を出しやすいはずのものです。

これをお読みの方の中にも「とりあえず単語から覚えていこう」とチャレンジした経験がおありの方はいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし一方で「なかなか覚えられない」、「たくさんあってしんどい」、「手っ取り早い覚え方を教えて欲しい」といった悩みや相談は後を絶ちません。

そこで今回は、単語を覚えていくにあたり、英語講師の私なりに有効だと考えられる覚え方などをご紹介させていただきます。
 

定着の基本は反復

単語の覚え方に関して、実にいろいろな方法論やアイディアが巷に溢れています。

関連書籍、学校や塾などの先生、成功者…それぞれによって多様な覚え方が紹介、実践されています。だからこそ「どうすればいいのか分からない」という悩みも生まれるのでしょう。

ただ、そうした単語の覚え方の多くには、注目すべきある共通点があります。それは「繰り返すこと」

まずはこの「繰り返し」について頭に入れておいていただきたいと思います。
 

反復記憶

記憶の種類の一つに、「反復記憶」と呼ばれるものがあります。文字通り「繰り返していたら覚える」というタイプの記憶です。

たとえば日常生活の中で、顔と名前をはっきりと覚えている人もいれば、逆にあの人誰だったかなと、なかなか思い出せない人もいると思います。

一度会って互いに自己紹介はしたものの、それきり連絡も取らなくなった相手のことはすぐに忘れてしまいます。でも普段から顔を合わせていたり、頻繁に仕事で会ったりしているとその人の顔も名前も自然に忘れなくなっていきますね。

これが「反復記憶」です。

そしてこの反復は、その再会の頻度が高ければ高いほど記憶の定着が促されます。

英単語学習においても、どのようなやり方をするにしろ、「繰り返しその単語と再会することが定着に向けた重要な手立てになる」ということをまずは知っておいてください。
 

単語と触れ合う行為を「自動化」する

反復して覚えることが大切とは言っても、単語学習のための時間を確保することは意外と骨が折れます。

「〇時から△時までは単語を覚える時間にしよう」と計画を立ててみても、そのときのモチベーションによっては、単語帳を手元に用意して、該当のページを開くことすら億劫になることもあります。

暗記作業には苦痛を伴いがちで、だからこそ、単語学習を習慣として確立することに苦労しておられる方も多いことと思います。

そこで提案したいのは、「単語と繰り返し触れ合う行為を自動化する環境を作る」ということです。

わざわざ単語を覚えるための時間を作ったり、単語帳を取り出してページを開いたりすることなく、単語と触れ合う行為が自動的に行われるように、生活の一部に組み込んでしまうのです。

たとえば、まず単語帳の中から覚えたい単語20個ほどを用紙1枚のリストに書き出します。これを家のトイレの壁(便座に座ったときの正面の目の高さの位置)などに貼り付けておきます。

単純なことですが、こうしておけば、毎回トイレで用を足すたびに、20個の単語に触れることができます。

洗面所の鏡に別の20個のリストを貼り付けておくのも良いでしょう。歯を磨いたり、お風呂上りに髪の毛を乾かしたりしながら単語を見ることができます。

要するに、人間は起きてさえいれば(目が覚めてさえいれば)どこかにその視線は向かっているはずですから、日常生活の中で、普段何気なく目の行き届く場所に覚えたい単語を用意しておくと、単語学習を自動的にやらざるを得ない状況を作り出すことができるというわけです。

以下に、私が実践してきた単語学習自動化のアイディアをご紹介します。
 

単語リストを身の回りに貼り付ける

上でご紹介したトイレの壁や洗面所の鏡の他、部屋や玄関のドアなどにも貼り付け、部屋の出入りや家から出て行くときなどに毎回確認します。

一通り覚えられた頃に新しいものと交換します。
 

付箋をさりげなく貼り付ける

電気のスイッチ、テレビのリモコン、ドアの取っ手部付近、PCの端っこ、職場のデスク周辺など、視線の行く先に覚えたい単語を書いた付箋を貼り付けてその都度確認します。

これも覚えたらどんどん新しい付箋と交換していきます。
 

スマホのホーム画面

スマホを利用する際、ホームボタンや電源ボタンを押すとパッとロック画面やホーム画面が立ち上がりますが、その背景画像に予め撮影しておいた単語リストを設定しておきます。

単語を確認してからロックを解除するようにすると一日に何度も単語に触れることができます。覚えたらまた新しい画像を用意しましょう。
 

いっそのことIDやパスワードにしてしまう

SNSやメールなどを利用しておられる方は多いと思います。

どうしても覚えられない単語やぜひ覚えておきたいマニアックな単語などがあれば、いっそのことご自分のアカウントIDやパスワードにその単語を組み込んでしまってはいかがでしょうか。かなりの確率で覚えられます。

ただ、覚えるたびに毎回IDやパスワードを変更するのは手間ですし、忘れてしまった場合ログインできないという不利益が危惧されますのでお気を付けください。
 

油性ペンで手に書いておく

古典的なやり方ですが、手のひらや手の甲に油性ペンで覚えたい単語を書いておきます。

人間は無意識に自分の手を見ることも多いですから、その癖を利用します。油性ペンで書いておけば、軽く洗う程度では数日は消えません。

やがてインクが消える頃には覚えています。そしてまた新しい単語を書きます。
 

机や黒板に書いておく

学生さんであれば、教室の自分の机に鉛筆でいくつか書いておくと頻繁に目に触れることができますね。

学校の方針で(また一般的マナーとして)「机に落書きしてはいけない」と言われることもあるかと思いますが、先生に許可を得られればやってみる価値はあります。もちろんテストのときにはカンニングと疑われないようにきれいに消しましょう。

また、先生に許可を得た上で、黒板の端っこの方にいくつか書いておいてもらうのも良いです。英語以外の授業のときにも目に入るのでかなり覚えられます。過去に私も学校教員をしておりましたが、その頃には自分が担任をしているクラスの黒板を使って少しでも生徒が覚えられるように実践していました。
 

繰り返しますが、「単語を覚える」という命題においては、日常的にすでに習慣になっているところに単語を抱き合わせることで、触れ合う機会を増やし、反復記憶によって定着を目指すことができます。

これを念頭に、どのようにご自身の生活環境を利用すれば単語との触れ合いを自動化できるか、という視点で工夫してみてください。
 

音声を忘れてはいけない

さて、ここまでに述べたやり方は基本的に視覚的に単語と触れ合う方法ですが、実際にこれらを利用する場合には、可能な限り声に出して読み上げながら覚えていくようにしてください。

言語の本来の姿は音声にあります。読む、書く、話す、聞くという言語の4技能において、音声を伴わないものはありません。

黙読するときも、黙って何かを書くときも、頭の中では音声が再生されているはずです。正しい音声認識無しに言語を正しく使うことはできないと心得てください。

家の中では問題ないと思いますが、屋外やオフィスなどでは周囲の人の目も気になるかもしれません。その場合は、ぼそぼそと小さな声でつぶやくだけでも、口を動かすだけでも構いませんから、とにかく音を意識することを忘れないでください。

もちろん、事前に準備をする段階で単語帳などに付属されているCDを利用し、正しい発音をしっかりと確認し、練習しておきましょう。
 

音声と触れ合う行為を「自動化」する

では次に、音声を自動的に耳に入れるようにするためのアイディアをご紹介します。
 

CDデッキのタイマーを使う

CDデッキをお持ちであれば、電源タイマーを使うことができます。

起床する際の目覚まし時計代わりに単語の音声が流れてくるようにするとか、帰宅時間にセットしておいて、家に帰るともう勝手に部屋の中に音が流れている状態にしておくとか、不気味と思われるかもしれませんが、これをやるとCDを再生する手間が省けて非常に楽です。
 

スマホのアラームや着信音に利用する

スマホのアラーム機能を目覚まし時計代わりに使っている人も多いでしょう。

単語音声をアラーム音として利用してみてはいかがでしょうか。(そんな音では起きられないという方は気をつけてください)

また、着信音に単語音声を設定するというのもありですね。ただ、人に聞かれて恥ずかしい思いをするリスクがあります。
 

車のオーディオにセットしておく

車を運転される方であれば、はじめからCDやiPodなどに入れたものをオーディオにセットしておけば、エンジンをかけると同時に音声が聞こえるようにできますね。
 

ポータブルプレーヤーを利用する

電車に乗っているときなどにスマホやiPodなどのポータブルプレーヤーを利用して音楽を聴く習慣があるという人は多いと思います。

音楽を楽しむ前に、少しでも英語音声を聴くことを習慣化するために、プレイリストの1曲目は必ず英単語音声を入れるなど工夫してみてください。

1曲好きな音楽を聴いたら次のトラックは英語音声、その次は好きな曲、そしてまた英語音声、のように交互に入れて、音楽を楽しみつつ英語の音にも触れる、といったこともできると思います。
 

「自動化」にも更なる工夫を

このように、私たちの日常生活に目を向ければ、英語を自動化するチャンスは工夫次第でいくらでも増やすことができることが分かります。

単語リストや付箋を用意するとか、スマホの設定を変えたりタイマーをセットしたりといった初期段階での準備はもちろん必要です。ですが、それさえやってしまえば、あとはほとんど自動的に単語を学んでいくことができます

単語との日常的な触れ合いを増やすために、あえて「単語学習時間とモチベーション」にこだわらず、行動的にも精神的にも可能な限り労力と手間を省いて自動化を目指していくという、ある意味で「楽ちんな単語学習」を目指した方が効果が上がると私は考えています。

こうしたやり方に工夫を重ね、さらにやる気も結びつけて単語学習に励む強者もいらっしゃいます。

私の生徒さんの中には、トイレの入り口ドア(外側)に100単語ほどもあるリストを貼っておいて、用を足したくなったときに、その100単語を全て確認するまでは絶対にトイレに入ってはいけないというルールを自分に課し、驚くほどの語彙力を身に付けた人がいました。

また、ある女子高校生の生徒さんは、数百ページ分ある単語帳が重くて腕が疲れる、かさばるという理由で、単語帳を引き裂いてページ数を極端に減らしてカバンに入れて持ち歩いていました。一日で全てのページを勉強するわけではありませんから、必要なページ分だけ持ち歩いていたのです。

そしてカバンから何かを取り出すたび、ペラペラに薄くなった(元)単語帳も一緒に取り出して(表紙も取り外しているのでいちいち開かなくても単語が丸見えの状態で)さっと目を通す、という反復を行っていました。結果的に、彼女は難関大学への合格を果たしました。

本を破ることが良いかどうかという教育的議論は別として、単語学習は必ずしも既成の形を維持しなければならないものではないという、ある意味で既成概念を破壊するような発想が功を奏することもあるのだと教えてくれる良い例だと思います。

ぜひ自分なりの意識や状況に応じて、更なる工夫を考えてみてください。
 

単語をマスターするとは?

単語学習を続けた結果として、どういう状態になっていればその単語をマスターしたことになるのでしょうか?

単に日本語訳を覚えただけでは、その単語をマスターしたとは言い切れません。適切な文脈の中で、適切な文法のもと、適切な発音で正しく、かついつでも瞬時に相手に伝えたり逆に意味を受け取ったりできるレベルまで達すれば、その単語は完全にマスターできたと言えるでしょう。

単語学習の最終目的地は本来ここにあります。しかし、はじめから一つ一つの単語についてそこまでのレベルを求める必要は必ずしもないと私は思います。

よく「フレーズで覚えよう」とか、「センテンスでその単語の使い方も一緒に覚えるべき」ということが言われます。それらは全く正しい指摘です。

単語はフレーズやセンテンスという文脈に乗ることで意味が運ばれるものだからです。自動詞や他動詞の区別といった文法・語法的な正確さを求めるためにもフレーズやセンテンスは必要です。

一方、その覚え方には相当の時間がかかることも事実です。センテンスで覚えること自体が負担になったり、特に初級者の方の場合、例となるセンテンスの中にそもそも他の知らない単語が含まれていることもあり得ます。

単語帳などに掲載されているフレーズやセンテンスでは量が少なく、英語経験値としてはどうしても不足してしまうとも言えるでしょう。そうしたデメリットに落ち込んでしまえば、逆に非効率的にさえなり得てしまいます。

ですから個人的には、適切な文脈における使用というのはもう少し後でも構わないと思っています。

まずは一つ一つの単語の意味を集中的に、見たり聞いたりしたときにパッと分かるくらいになるまで覚えましょう。「やった、覚えた!」という実感が得やすいのもメリットです。

もちろん、はじめからフレーズやセンテンスごとに覚えた方が早いとか効率が良い、決して負担にはならないという方もいらっしゃると思いますから、ご自身で判断していただければと思います。
 

まとめ

いかがだったでしょうか。

単語学習には、実に様々な方法論が提唱され、アイディアが紹介され、実践されています。覚え方の是非に関する議論や意見も様々でしょう。

人によっては、書かないと覚えられないとか、音は一度聴いたら分かるからあとは目で覚えるだけ、という具合に、そのレベルや能力、得意不得意に応じてアプローチのし方が異なることもあるでしょう。

そのどれが正しくてどれが間違っているのか、ということではありません。

今回は単語学習に必要な反復を「視覚と音声的に自動化する」というテーマを中心にご紹介してきましたが、それも含めて、大切なのは「自分に合ったやり方はどんなものなのか」を見極めることです。

ご自身の学習段階はどこか、知識量や負担はどうか、日常生活のバランスから継続的に取り組みやすそうか、頭に入り易いかどうか、必要とされる技能や目指す目標に役立つやり方かどうか。

千差万別の状況の中で、「絶対にこのやり方でしか取り組んではいけない」という学習方法はありません。

ただ大きく言えば、「覚えるためには反復によってインプットをし、使えるようになるためには音読や英作、会話などによって繰り返しアウトプットをすること」が単語習得の、ひいては英語習得の基本となります。

今回ご紹介した「自動化」という方法論も、これを実現するための一つのアイディアとして試していただいたり、有効活用できそうなところがあればぜひ使っていただいて、自分に合った方法を見つける材料としていただければと思います。