K. Inoue
(更新)
中高で少なくとも6年間も英語を勉強してきたはずなのに、「まったく話せない」と残念がっている人は多くいらっしゃると思います。
確かに6年間というのはとても長い時間で、たとえばスポーツや楽器の演奏など、何かを日常的に6年間も継続してみると、普通はそれなりの実力が身につくものです。
ところが英語については、まるで話せるようになった実感が持てない。
実は、それは6年間という時間が足りなかったからなのではなく、「話す」ための勉強や練習が不十分だったからなのです。いくら知識を吸収して問題が解けるようになっても、実際に使う練習をしなければ話せるようにはなりません。
逆に、はじめから「英語を使うこと」を前提として勉強法を工夫すれば、たった3ヶ月でも驚くほど英語力を高めることができます。
そこで今回は「英語を話せるようになるための3ヶ月勉強法」をテーマに、英語初心者の方々にそのやり方とコツをお伝えしていきます。
3ヶ月の英語学習を始めるにあたって大切なことは、まず「明確な目的を持つこと」。
目的とは「最終的に目指すことがら」のことで、つまりここでは「3ヶ月後にこうなっていたい」というゴールです。
目指すところがないのにやみくもに勉強してもむなしいものですし、目的があればそこに到達したときに喜びが得られ、さらにその先へのモチベーションにもつながります。
など、3ヶ月後には「こんなふうになっていたい」「こんなことがしたい」と思うイメージを言葉にして、それを大きな目的としてください。
目的が明確になったら、今度は「目標」を定めてください。
目標とは、「目的を実現するための具体的な水準や手段」です。
たとえば、
など、数字や行動として表すことができるものです。
こうした具体的な目標は、達成できたかどうかがわかりやすく、進捗度を測るためにも有効です。
また、「1か月で500単語、2か月で1000単語、3か月で1500単語覚える」のように、月ごとに目標を設定するのも良いでしょう。
目標を設定する際、気合を入れすぎて無理な数字を目指さないことが大切です。
たとえば単語力について、教養あるネイティブの人は数万語以上も知っていると言われますが、一般的な日常英会話ではおよそ3000語もあればそのほとんどがカバーできることが知られています。さらに、旅行英会話ではわずか1000語程度で事足りるとさえ言われているのです。
そして日本の中学校の教科書では、3年間で1300語程度の単語を勉強することになっています。また文法についても、中学校レベルの文法でかなりの範囲をカバーできます。
つまり、中学レベルの英語をマスターして話せるようになれば、日常会話の多くの部分をすでにまかなえることになる、ということなのです。
ですから英語初心者の方は、まずは中学校レベル程度の目標から始めることが大切と言えます。
「いやいや、自分は高校レベルからやるぞ!」と張り切ってみても、高校の英語は中学と比べると格段に難しく、文法参考書などおよそ650ページにも及んで詳細に解説されていますから、その膨大な量を前にくじけてしまう可能性が高いです。
また高校の英語学習範囲には、日常会話ではあまり使われないような複雑な事柄も多く含まれるため、やはり最初は中学校レベルの内容を重点的に勉強するべきと言えるでしょう。
詳細で丁寧な学びも大切なことですが、まずは中学レベルの英語を、多少不自然でもどんどん使うようにしましょう。
何事においても、目的を実現するために必要なことは、「継続すること」です。
そして継続することによって、英語を勉強したり練習したりすることを「当たり前の習慣」にすることです。
一度習慣化してしまえば、勉強することが苦痛ではなくなります。そして、楽しく続けられることが何より大切です。
人間の集中力が続くのは90分が限界だと言われています。
したがって、まとまった時間を取って一度に2時間3時間と勉強することは効率的とは言えません。
もちろん、90分と言っても一気に90分ぶっ通しではなく、隙間時間などを活用して1日の合計で90分確保できればいいくらいのスタンスで問題ありません。
また、勉強は時間より質です。
同じ90分でも、質が高く濃密な90分を過ごすのと、のんびりだらだらと90分過ごすのでは学習効果は全く異なります。
計画性を持って、有意義な90分間を作り上げることを意識しましょう。
英語の勉強には、大きくインプット型とアウトプット型の2種類があります。
【インプット型】
【アウトプット型】
スポーツでたとえるなら、教本でルールを学んだり指導者の説明を聞いたりするのがインプット型、実際に身体を動かして学んだことを実践してみるのがアウトプット型ということになります。
90分の中身を考えるとき、これらインプット型の勉強とアウトプット型の練習をセットで組み立てるようにしてください。
たとえば、「最初の1か月は文法を勉強する」と決めて90分間を毎日文法のインプットにあてるのではなく、以下のように、インプットからアウトプットへの流れを作って、その場で学んだことをその場で使えるようになることを目指して90分間の中身を組み立てるのです。
このようにすれば、メリハリのある学習ができて飽きずに続けることができますし、勉強したことをその場で使えるようにすることもできるので、成長を感じやすくモチベーション維持にも繋がります。
また、90分サイクルを回すコツは、インプットよりもアウトプットに重きを置くことです。
ここでは「テストで点が取れるようになること」ではなく、あくまでも「会話ができるようになること」を目指していますので、基本的なことを勉強して覚えたら、あとはどんどん声に出して口を動かしていきましょう。
あまり考えなくても口が勝手に動くようになるくらいまで、時間の許す限り繰り返します。
使用する教材は主に3種類用意してください。
英語の勉強だからと言ってフレーズ集だけで勉強しようとしても、基礎となる文法や語彙力が弱ければ応用がきかせられるようになりません。したがって、文法教材と単語帳は必須です。その上で、ご自身が目指したい目的に近い実践的なものを選んでください。たとえば「3ヶ月後に海外旅行を楽しみたい」のであれば、旅行英会話帳を用意しましょう。
また、「ビジネスの商談やプレゼンなどで英語が必要」という初心者の方は、ビジネス向けの英語フレーズ集で易しめのものを書店などで探してみてください。必ず見つかります。初心者用のTOEIC教材もオススメです。
以下に筆者オススメ教材をご紹介していますので、よろしければ参考にしてみてください。
■ ①中学で習う基本英文法が解説されたもの
・「中学英語を もう一度ひとつひとつわかりやすく。」(学研教育出版)
中学英語の学習内容が、イラストとともに見やすくわかりやすく網羅されていて、練習問題で確認することもできます。さらに文法解説書としては珍しく音読用CDも付属しているので、文法を音声とともに学ぶことができます。
■ ②中学基本レベルの英単語帳
・「ゼロからスタート英単語 BASIC1400」(Jリサーチ出版)
中学レベルの基本英単語を中心に、日常的に必要な単語ばかりが収録されています。面白いのは、旅行、ファッション、ビジネスシーンなど、場面ごとによく使われる単語が分けられているところです。
イラストもあるので、自分が使いたいシーンをイメージしながら単語を覚えていくことができます。音声CD付属。
・「英検5級 絵で覚える単熟語」(旺文社英検書)
・「英検4級 絵で覚える単熟語」(同)
・「英検3級 でる順パス単」(同)
英検対策用の単語帳も、中学範囲の単語や熟語を網羅しているのでオススメ。(英検5級~3級までが中学での学習範囲)
音声CD付属はもちろん、アプリでの音声ダウンロードができるものもあります。
■ ③目的に合わせた英会話フレーズ集や会話帳
・「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」(ベレ出版)
③については目的に応じてお選びいただければと思いますが、こちらは、中学の学年レベル別に、英文やフレーズを口から素早く言えるようにするためのトレーニング教材です。
模範となる音声CDが付属しているのでシャドウイングにもオススメ。
教材を選ばれる際、必ずCDが付属しているか、ダウンロードで音声が手に入るものを選んでください。
音源無しに英会話力を上げようとするのは、ボールもバットもグローブも無しに野球の練習をするようなものです。
それほど音声は重要です。
先ほどご説明した90分サイクルの中に「シャドウイング」を入れていましたが、これは毎日欠かさず取り入れてください。
シャドウイングは音声を流しながら、その音についていくように発音していく練習法。
流れて来る音声に影(シャドウ)のようについていくことからその名で呼ばれています。
聴く(インプット)と(アウトプット)をほぼ同時に行う練習法で、相当な集中力が必要な英語訓練としてはかなり難易度の高いやり方ですが、効果は抜群。
「英語初心者が3ヶ月という短期間で会話力を上げる」ことを目指すのであれば、シャドウイングは最高の勉強法の一つで、英語学習の成功者の誰しもが行ってきた、お墨付きの訓練です。
シャドウイング含め音読練習法については別の記事で詳しく解説していますのでそちらもご覧ください。
目標がどれだけ達成できているか、随時確認しながら英語の勉強を進めてください。
予定より遅れているとか、目標の数値が達成できていない場合には、その原因を探り、目標達成に向けて反省と改善をしていきましょう。
また、逆に進み過ぎている、うまくいきすぎている場合は、新たな目標を設定し直し、モチベーション高く続けられるように工夫してください。
目標は道しるべであり、学習コントロールの要です。
いかがだったでしょうか。
英語初心者が取り組むべきは、中学レベルの基礎力の定着と、それを使ったアウトプット重視型の訓練。
英語は中学レベルの基本内容が全ての土台です。
今後どのような目的やどれだけ高い目標を持つにしても、基礎力無しに英語力の向上はあり得ません。
だからこそ、初心者の方が3ヶ月間で取り組むべきは、基礎の徹底なのです。
しかし従来の学校での勉強と違う点は、インプットの上にアウトプットをしっかりと重ねること。
大量のアウトプットを取り入れて確かな英語力を磨いてください。
最後に、「想起練習効果」という言葉をご紹介しておきます。
これは簡単に言えば「思い出そうとすることが学習効果を高めること」です。
人間は誰でも、覚えた知識はやがては忘れ、身に付けた技術もいつかは衰えていくものです。
でも、そうなる前に「思い出そうとする」ことで食い止めることができ、それどころか、前以上に確かなものにすることもできます。
90分サイクルをご紹介しましたが、90分しか勉強や練習をしてはいけないということではもちろんありません。
道を歩いているとき、電車に乗っているとき、お手洗いのとき…
ふとしたときに「昨日は何を勉強したんだったかな」「一昨日はどんな練習をしたかな」と思い出そうとしてみてください。
「そういえばあれを覚えたんだ」「あのときのシャドウイングはちょっとつまずいていたな」などと記憶が想い起こされたとき、それまで以上に知識は頭に残り、技術は向上につなげることができるようになります。
毎日の90分サイクルの継続と、何気ない瞬間にふと英語を思い出すこと。
みなさんの英語学習の目的と目標、普段の取り組みを日々想い起こすこと。
英語の世界に自分はいるのだと自覚すること。
この意識があれば、3ヶ月の英語学習はより実りの多いものとなるはずです。
みなさんの英語力伸長を願ってやみません。