まいるす・ゑびす
(更新)
川崎宗則というベースボールプレイヤーをご存知でしょうか。
日本では"ムネリン"という愛称で知られ、現在カナダを本拠地に置く"Toronto Blue Jays"(トロント・ブルージェイズ)で活躍しているメジャーリーガー。
「ガーヒィー!」という一発ギャグでインタビュアーを笑わせることでも有名な選手です。
もし、知らない方はとりあえずこちらの動画をご覧ください。
動画を見てお分かり頂けたと思いますが、ムネリンは英語が堪能とは言えません。しかし彼は言葉の壁を物ともせず、こういったインタビューからチームメイトとのコミュニケーションまで積極的に英語を使っています。
なぜムネリンは英語が堪能でないにも関わらず、インタビューに一人で呼ばれるほど人気者なのでしょうか?
チームプレーにはムードメーカー的な役割を担う人を必要とする場合が多いです。ホームのベンチで突然おかしなダンスをするようなムネリンの底抜けた明るさは、チームメイトとの間に積極的なコミュニケーションを生んでいます。ムネリンは言葉が通じなくても「一緒にいて面白い」キャラであり、それゆえにチームメイトやファンに好かれている存在になっているのです。
「人と人とのコミュニケーションは言葉に司る」という考えや主観はさほど重要ではありません。"言葉が何の問題もなく通じる面白くない人"よりも、"言葉は通じないけれどもなんだか面白い人"と一緒にいて楽しいですよね。
「あいつならきっと面白いことをやってくれるに違いない」とチームメイトから期待され、その期待に答え続けているムネリンのキャラはチーム内でも重宝されていることが、インタービューアーとのやり取りからも伺うことができます。
簡単なメッセージを大げさなジェスチャーで何度も繰り返すことにより、ムネリンは自分の伝えたいことが相手にきちんと伝わっているかどうか確認しています。自分の発言が相手に届いたかどうかを確かめる、という行為はコミュニケーションの基本とも言えるのではないでしょうか。
上でご紹介した2つめの動画の中で"It's all about soul."と言葉にしながら、拳を胸当てるジェスチャーを何度も繰り返していました。これは自分の魂の熱さをアピールしている、という印象を受けます。
日本で生活をしていると、あまり見慣れない会話術かもしれませんが、アメリカでは、やたらめったら熱いジェスチャーを送る人に遭遇する場合があるため、ムネリンの大げさ過ぎるようなジェスチャーも、実はそこまで大げさではないんですよね。
そしてエネルギッシュで面白くて、ちょっとクレージーな感じがある人は、どこに行っても好かれやすいもの。
語学力が不十分だったとしても相手と言葉のキャッチボールを確実に一つ一つこなすことにより、人と人との良好な関係性は構築できる、ということをムネリンは教えてくれています。
英語ができないからといって発言してはいけない、ということは決してありません。自分の弱点を隠すのではなく、逆に前面に押し出してみるという作戦もありです。
一度話をして通じなかったとしても、ムネリンのキャラを理解して、彼と話したいと思っている相手ならもう一度必ず言い直してくれます。
更には、もっと分かりやすい簡単な英単語に言い直してくれることもあります。
英語ができないことは弱点ではありません。ムネリンは英語のフレーズ集をお約束通りに持参して周囲の笑いを誘い、それをネタにしてみんなに楽しんでもらおう、という"サービス精神"を持っているのです。英語ができないことに対して同情させるのではなく、それを笑いのネタに昇華させることができるのは、絶対的な強みになるでしょう。
「英語を話すことができない」ことは、むしろ長所にすることができる可能性があるということを、ムネリンは体を張って教えてくれているのかもしれません。
ぜひ、改めて動画を見てみてください。次にご紹介する動画は英語字幕ですが、ご紹介したムネリン流コミュニケーション術が散りばめられていることに気づくことでしょう。
ムネリンから学べることは、お互いにとって気持ちの良い人間関係の大切さ、そこへ飛び込んでいく勇気、英語ができないからと言っても「どうってことない!」という度胸です。
正しい英語かどうかは、英語を母国語とする人たちですら気にしてはいません。むしろ英語を母国語としない人たちが話し合いを行う必要性もどんどん増えている今の世界において、正確な英語を話すことよりも、コミュニケーションをとることが大切。
言葉は基本的なコミュニケーションの手段であり、「言葉を使って何をするのか」の方が重要です。
あなたは英語を使って何をしたいのか? 英語学習を進める上でも大切なことですので、ぜひお忘れなく!