Naoya Okada
(更新)
英語を話すうえで、「英語っぽくない」ことが大きな悩みの1つである人は多いのではないでしょうか。
この悩みの主な原因の1つは英語のイントネーション、つまり「抑揚」です。
日本語は「棒読み言語」、英語は「リズム・波乗り言語」と呼ばれ、イントネーションに大きな違いがあります。
「英語っぽく」会話をするためには、この日本語と英語の言語上の違いを理解したうえで、ルールを把握して練習をするという流れが必要です。
今回は、英語のイントネーションを劇的に改善する方法をご紹介します。
まずはウォーミングアップです。次のセンテンスを自然だと思う英語で音読をしてみてください。
【答え】
詳しい解説は後述しますが、1つ目は "going, Starbucks, tonight" が強く発音され、文末は下げ調子で発音できればOKです。
2つ目は、"Which, like, better, city, country" が強く発音され、better を下げ調子、the city を上げ調子、the country を下げ調子で発音できればOKでしょう。
日本語は「棒読み言語」、英語は「リズム言語」や「波乗り言語」と呼ばれます。
「こんにちは」の言い方を例にとって見てみましょう。
日本人は一般的に単調に発音するのに対し、外国人の方が「こんにちは」と言うのを耳にすると、強弱をつけて発音していることが多いのに気づいたことがあるはずです。
強く発音している部分は「アクセント」(英語圏では「ストレス」と呼ばれます)がつけられ、通常「長くはっきり」発音されます。
逆にアクセントのない残り部分は「短くぼやっと」発音するのです。これが英語特有のリズムを生みます。
皆さんがよく知っている言葉を例にとると、「マクドナルド(McDonald’s)」は英語圏では「マクダ−ノーズ」のように発音されるわけです。
上述した例は単語単位で発生するアクセントで、「語強勢(word stress)」と呼ばれます。
一方、1つのセンテンス単位でもアクセントをつける部分が複数あり、これを「文強勢(sentence stress)」と呼びます。
イントネーション(抑揚)とは、後者の文強勢によってセンテンス全体に音の上げ下げが生まれるリズムのことを指します。
音の上げ下げのイメージを見てみましょう。
この音の強弱はどのようにつければいいのでしょうか?
イントネーションを作り出す音の強弱のルールは、実は非常にシンプル。
「相手に伝えるべき重要な情報かどうか」が基本です。
「今晩スタバに行かない?」という提案をする上うえで外せない情報はなんでしょうか。
答えは「いつ、どこで、何をする」を表す「今晩」「スタバ」と「行く」の部分です。
極端に言えば、この3つの単語さえ聞き取ってもらえれば、言いたいことは伝わりますよね。
センテンス内で強弱をつけるときには、これらを長くはっきり、そして強く発音するのです。
実はこの強弱を決めるときは、品詞によってある程度体系化することができます。
英語では相手にしっかり伝えたい情報を含む語のことを「内容語(Content Words)」、センテンスを作るうえでは必要だが、伝えなくても何とかなる語のことは「機能語(Function Words またはGrammar Words)」と言います。
TOEICの受験を予定している人は、「品詞」問題が出題されますのでこれを機会に、品詞について知識を深めてもよいかもしれません。
先程のセンテンスであれば次のようになります。
"Going Starbucks tonight?" のみでも聞き手は十分に話者が言いたい内容が分かるものの、文法は正しくないため、機能語の "about" や "to" が必要なのです。
※通常、疑問詞の "how" は内容語ですが、"how about" とコンビで使われるときに機能語とみなされるケースが多いため、この例では「弱」としています。
また、「弱」にあたる機能語の発音方法は「弱形(weak form)」と呼ばれ、その中に含まれる母音の多くは「あいまい母音(schwa)」という形で発音されます。
①口に力を入れずリラックスして②口を半開きにした状態で、③暗くこもった感じで「ア」と言うことで、発音することができる。
英語の発音にはアクセントがおかれていない母音は、基本的にシュワー(schwa)で発音するというルールがあります。とても弱く暗くこもった発音のため、ほぼ聞こえないほど。
昔アメリカ人を「メリケン人」と言っていた時代がありましたが、これは "American" のアクセントが "e" にあり、"a" が schwa になることで昔の日本人には聞き取れなかったためなのです。
機能語であいまい母音が適用される場合に先ほどの例文をとると、"of" は「オブ[ɔv]」 ではなく、「ァブ[əv]」、"to" は「トゥー[tu:]」ではなく「タ[tə]」となります。
強調したいときに限っては、前者の「オブ」や「トゥー」のような「強形(strong form)」で発音することが可能です。
イントネーションのルールは、上述した品詞による分類以外に、主に2つのパターンがあります。
まずはセンテンスの種類によって上げ下げが「固定」されるパターンを確認しましょう。
「趣味は音楽を聞くことだよ」
「小説を読むのは好きじゃないな」
「趣味は何?」
Do you…? など Yes/No で答えを言うタイプの疑問文です。
「音楽を聞くのは好き?」
聞き取れなかったときや、確認のための聞き返しの際には文末が上がります。
「実は、ジョニデが大好きなんだ」
「ジョニデ?」
"and" と "or" は列挙した複数の語の最後は下げるのに対して、それ以外は上げ調子で発音します。資格試験ではTOEIC(SW)の音読パートでの出題が有名です。
「映画、例えばSF、ラブコメ、アメコミ映画が大好きなんだ」
「現金払いかクレジットカードの利用ができますよ」
「都会と田舎どっちが好き?」
ここでは話者の意図や感情により上げ下げが「変化」するパターンを確認しましょう。
本来は重要度が低いため「短くぼやっ」と発音すべき語が、重要度が高いため「長くはっきり」と発音されることがあります。何らかの対比を意識するケースが多いです。
「これは彼のスマホ?」
「いやこれは『私』の」
"his" と "my" が対比されていて、my が重要な情報なので強く発音されます。
イントネーションを変えることで、違った意見を表明することができます。
「【まぎれもなくこれが】私のスマホだよ」
「これは【まぎれもなく私の】スマホだよ」
「驚き」など、感情を伴った場合に上がる場合があります。
「SaraがJunichiと別れたんだ」
「え、マジ?」
「うん、マジ。それにShunと付き合い始めたよ」
「えっ?」
"Really?" や "What?" は驚きを表すため、上がります。
同じセンテンスでもイントネーションの上げ下げにより、話し手の感情や態度をガラッと変えて表現することができます。
「もう1回頑張ってみて」
「もう1度やりなさい」
励ましの言葉をかけるときには文末を上げることが多く、それにより「前向き」な印象をもたせることができます。
逆に文末を下げると「冷たい気持ち」や「高圧的でマウントをとっている」ような雰囲気が漂うのがわかるはずです。
このようにイントネーションによって、本来の意図とは違うメッセージが相手に伝わってしまう場合もあります。イントネーションをマスターすることは、コミュニケーションを円滑に進めるためのマナーを知ることでもあるのです。
同じセンテンスや表現でも、イントネーションの上げ下げにより意味を変えることができます。
「もう一度言ってもらえますか?【聞き返し】」
「ごめんなさい【謝罪】」
「もう一度言ってもらえますか?【聞き返し】」
「失礼します【席をはずす】」「すみません【尋ねる】」
「〜だよね?」という念押しのニュアンスを出す際に、文末に "〜, are you?" や、"〜don’t you?" 等が置かれたセンテンスを付加疑問文と言います。
通常は文末を下げますが、リアルに質問をしたいという意図がある場合は上げます。
「(こっちはわかっているけど)疲れているよね」
「(リアルに質問したいんだけど)疲れているのかなあ?」
"〜,are you?" 等は “right?” や “huh?” で代用されることが多いので、覚えておくと活用できるでしょう。
肯定文は本来文末を下げますが、上げることで疑問文と同様の意味を持たせることができます。疑問文を作るのが面倒な場合に、よく使われます。
「彼はジョニデが好きなんだ【事実の伝達】」
「彼はジョニデが好きなの?【Does he like Johnny Depp? と同じ意味】」
英語は日本語以上に、発音のルールが体系化されています。今回ご紹介したルールを理解し、何度も声に出すことで自分のものにしましょう。まずは強弱を意識するところからスタートするといいですよ。
英語は「音声言語」と言われるほど、「音」が重要な役割を持ちます。英語学習は常に音声活動とコンビにして進めましょう。
重要なのはスピーキングの機会を意識して作り、声に出すことです。
オーバーラッピングなど音声練習の方法の詳細はこちら。
海外ドラマや映画はとてもナチュラルなイントネーションを仕入れることのできる最強ツールです。気に入った場面は、モノマネ芸人のように俳優のマネをするのがオススメですよ。
自分の発音を定期的に録音しましょう。
客観的に自分のクセを把握でき、何を矯正すればよいのかを確認することができます。また成長記録にもなり、モチベーション維持にも役立つはず。SNSやYouTubeに共有してもよいでしょう。
英語のイントネーションをマスターすることは、カタカナ英語からの卒業、より「英語っぽく」話すこと、さらには「感情や意図」を適切に伝えるための手助けもしてくれます。
今日からイントネーションへの意識を高めて、練習を始めていきましょう。
Give it a try!↗
「チャレンジしてみてください!」