Naoya Okada
(更新)
今回のトピックは「英語のリエゾン」。
フランス語の「liaison(連結)」に由来する音声現象で、英語圏では「リンキング(linking)」と呼ばれるのが一般的です。
リンキングをマスターすれば、発音力が強化され、カタカナ英語を脱する助けになります。それに、リスニング力UP、そしてなんと速読力もつくので、習得しない手はないですよね。
今回はこの「リンキング」について、メリットからルールまで解説します。
本題に入る前に、まずはリンキングが起きている文章を聞いて、[ ]に入る音声を聞き取ってみましょう。
【クイズ:リスニングにチャレンジしてみよう】
答えは後ほど。
見て理解できることと、聞いて理解できることはまるで違います。
例えば「旅行」を意味する travel は、アメリカ英語を中心に「トゥラヴォ」と発音されます。
「トラベル」という音を期待してリスニングすると、travel っぽい語が聞こえたときに「今のなに??」となってしまうのです。
音声を聞くとき、頭のなかでは「音の処理」と「内容理解の処理」が同時に行われています。
発音が苦手な場合は、脳が音の処理に集中しようとして、内容理解に精力を割けなくなるのです。そうすると、内容が入ってこなくなってしまいます。
リンキング等の「英語の音のルール」のマスターは、内容を瞬時に把握できるようにするための土台とも言えるのです。
「音の処理、内容理解の処理」の詳細はこちらを参考にしてみてください。
こちらはカフェで注文するの際の超定番表現ですが、皆さんはどのように発音しますか?
このセンテンスにはさまざまな音声ルールが含まれていますが、リンキングに限って言えば、Can I は「キャナイ」、get a は「ゲタ」(または「ゲダ」「ゲラ」)と発音します。
センテンスになったときのリンキングも見てみましょう。
英文の下に書かれているカタカナ通りに声に出してみてください。
1語ずつ切ってしまったカタカナ英語より、リンキングを意識した発音の方が、圧倒的に英語っくありませんか?
私たちは英語を読むときに、内容理解をしながら、頭のなかで音声再生をしています。
先ほどの例文でイメージをしてみましょう。
後者の方が尺が短いため、読解スピードが速いですね。前者は1語1語をぶつ切りで発音するため、多くの間ができてしまい、時間がかかってしまうのです。
一般的に、発音の得意な英語学習者は、読解スピードが速いと言われています。
リンキングをすることで、話すスピードと読解スピードが上がるだけでなく、発話とそれに伴う会話にリズムが生まれます。
これによって機械的なカタカナ英語よりも、もっと会話をはずませることができるのです。
この会話について、リンキングをしない場合とした場合で、違いを比べてみましょう。
【リンキングをする前】
【リンキングをした後】
どうでしょう。違いを明確にするために多少大袈裟にはしていますが、リンキングをしている後者の方が、会話が弾んでいる感じがするはずです。
リンキングとは、ある語とある語がくっついて発音される現象です。
具体的に言うと、ある語の最後と次の語の最初がつながることを指します。
「連結する、つなぐ」ことを英語で link というため、linking(リンキング)と呼ばれます。
なぜリンキングが起きるのか。
その理由の1つは「省エネ」です。
例文のように「サンク ユー」と言っていては、発話に時間もかかりますし、面倒ですよね。
自然なスピードで会話をするうえでの発音の省エネは、日本語でも「分からない」を「分からん」と言うように多く存在しているのです。
英語初級者の方はまずはこのルールをおさえてください。
「ある語の最後の子音」が「次の語の最初の母音」とつながるリンキングの基本です。これを意識するだけで発音がガラッと変わりますよ。
例をもとにこのルールを見てみましょう。
これは、「起きる」を意味する get up の t と u がつながり、「タ」に変化している例。実際には「ゲダッ」「ゲラッ」となることが多いです。
※母音に挟まれるtが「ダ行」「ラ行」で発音されるFlapping(フラッピング)、語の最後のpを発音しないReduction(脱落)という発音現象が起きるため。
それでは具体的にどのようなパターンがあるのかを確認しましょう。
口を閉じてスイカの種を吐き出すような音を「破裂音」と呼びます。
このルールを見て気づきましたか?
DJやラッパーが使っていてよく耳にする「チェケラ」は、Check it out の省エネ発音なのです!
「摩擦音」とは空気の摩擦によって出す音のことで、日本人が苦手とする音と言われています。
静かにしてほしいときの「シィ〜」の口の形で生まれる音です。これを得意にすることで、発音が一気に英語っぽくなりますよ。
英語の摩擦音には、下記のようなものがあり、それぞれが「有声音」と「無声音」に分かれます。
※有声音とは「声帯を振動させる音」で、母音や濁った音のこと。
無声音は「息だけを出し、声帯が振動しない音」です。喉に手をあてると振動の有無が分かりますよ。
※because の se は「ズ(z)」と発音します。
apple のように語尾にある e は「サイレントe」と呼ばれ、発音しません。そのため、実質は l で終わっている語だと考えます。
Did you など、中学英語で自然と身につけているものが多いのが子音+子音のパターン。
また、d+y は「ジュ」、t+y は「チュ」、 s+y は「シュ」のように、通常のリンキングよりも音が大きく変わるのが特徴です。
「母音+母音」でのリンキングは、余分な音が付加されることが多いのが特徴です。
前の語の語尾の音が、「ウー」「オウ」+母音の場合、wの音が入ることが多く、「エイ」「アイ」「オイ」「イー」+母音の場合、ヤの音が入ることが多いのです。
それぞれ付け加えられる音に気づきましたか?
それではここで、冒頭のクイズの答えの確認です。
kind of は「まあね、そんなところだね」のように、質問の答えをぼかす定番表現。中学英語では kind は「種類」、of は「の」と習いましたね。
of のような前置詞は、情報として相手にはっきり伝える必要のない語のため、「短くぼやっ」と発音されます。実は「オブ」ではなく、「ゥブ」「ゥ」と発音するのが基本なのです。
その結果、「カインダ」と聞こえることも多く、この発音から kind of を省略した kinda という語さえも生まれて、一般的に使われています。
この例文では、But I が「バタイ」(または「バダイ」、「バライ」)、think it が「スィンキッ(ト)」になります。
英語は日本語以上に発音のルールが体系化されている言語。そのため、学習初期段階でルールを覚えておくと学習効果が高まります。
今回ご紹介したルールを、何度も声に出して練習してみてください。また、オンラインレッスンで発音教材を利用するのも非常に効果的なのでおすすめ。
ディクテーションをすることで、自分の得意・苦手とする音声をビジュアル化することができます。
書きとれなかった部分の音声の特徴を自分なりに分析したうえで、何度も声に出して自分のものにしましょう。
英語は「音声言語」と言われるほど、「音」が重要な役割を持ちます。英語学習をするときは、常に音とコンビにして進めましょう。
音読・シャドーイングの詳細はこちら
海外ドラマや海外映画は、とてもナチュラルな音を仕入れることのできるツールです。
特に気に入った場面は、モノマネ芸人のように俳優のモノマネをするのがおすすめ。
洋楽は省略やスラング、中学英語では対応できない表現が多いため、途中で挫折する学習者が多いようです。
しかし、リンキングなどの発音強化といった面では、活かせることが多いんです。
例えば、Backstreet Boysの「I Want It That Way」は、発音ルールが適用できる部分満載でおすすめ。
英語の音読を定期的に録音しましょう。
客観的に自分のクセを把握でき、何を矯正すればよいのか確認することができますし、成長記録にもなりモチベーション維持につながるでしょう。SNSやYouTubeに共有してもいいかもしれません。
いかがでしたか?
リンキングをマスターすることで、発音レベルが上がるだけでなく、リスニング力、さらには速読力も格段に上げることができることが分かりました。
英語学習は音声とセットにすることで劇的に効果が上がります。
まずは今日から、リンキング(リエゾン)を意識した音声練習を始めましょう。
それでは良い1日を!
Have a nice day!(ハヴァナイスデイ!)