Naoya Okada
(更新)
突然ですが、発音にまつわるクイズです。
次のうち1つだけアンダーラインの発音が異なるものがあります。どれでしょう?
答えは後ほど。
英語の世界では、スペリングと発音が密接に関連しています。例外となる語は多いですが、そのルールを知ることで多くの発音を予想することができます。
本テーマの「months」の発音が「マンツ」なのかどうかを確かめる前に、まずはクイズの解説を通して、簡単にスペリングと発音の関連性を解説します。
英語では、多くの語の発音はスペリングによって決めることができます。
ここでは「th」の発音について確認してみましょう。
「th」は語の中でどの位置にあるかによっておおむね発音が決まります。2つのパターンがあることを理解しておくとよいでしょう。
thの位置 | 発音 | 例 |
最初と最後 | [θ]「ス」 | think/south |
真ん中 | [ð]「ズ」 | southern/weather |
①頭と尻尾の「th」の多くは「ス」と発音します。
Thank you の「th」とイメージしてください。舌先を上の前歯に軽く触れて摩擦するような音です。
the や they など例外はたくさんあります。
②「th」が間にある場合は「ズ」が基本の発音となります。
「南」を表す名詞の south は「サウス」なのに、形容詞の southern は「サザン」という発音になるのはこのルールで納得ですね。
改めて、次のうち1つだけアンダーラインの発音が異なるものがあります。どれでしょう?
前述の「th」の発音ルールをもとに、考えてみましょう。
よって答えは、3. worth。
スペリングと発音の関係性を理解しておけば、あっという間に判別できましたね。
ちなみに、clothes「衣服」は cloth「布」の複数形と思いきや、clothes という独立した語で、close と同じ発音になります。
それでは本題の「months」の発音をみていきましょう。
months の発音は「マンスィーズ」「マンスズ」とはならず、「マンツ」が非常に一般的です。
どういう仕組みなのでしょうか。
months は month の複数形ですから、まずは month で考えていきましょう。
「th」が最後にありますから、この単語は「マンス」の発音でよさそうです。
それでは、「s」は「ス」「ズ」「ィーズ」でしょうか。こちらも簡単なルールがあります。
発音 | 例 | |
無声音+s/es | [s]「ス」 | likes |
有声音+s/es | [z]「ズ」 | dogs |
[s][z][ tʃ][ dʒ]+e/es | [ɪz]「イズ」 | pieces |
「無声音」という「喉が振動しない音」で終わる語の直後では、その影響を受けて同じく振動しない「ス」になります。
一方「有声音」という「喉が振動する音」の場合は、そのまま「ズ」となります。
このように振動する音は前後の影響を受けます。
日本語だと「アボカド」を「アボガド」と発音する誤りが多いそうですが、濁音の「ボ」と「ド」に挟まれた「カ」だけ濁音じゃないのは、発音がしづいらいですね(その結果、後述する省エネ現象が起き「ガ」になる)。
なお、最後の発音が「ス」などであれば「イズ」になります。
上述したルールに沿うと、month の「th」は無声音「ス([θ])」*ですから、months は「マンスス」となります。
実は、これが本来の発音です。実際に多くの辞書にもそう表記されています。
*喉に手を当てながら、舌先を上の前歯に軽く振れて摩擦させるように「ス」と発音してみて下さい。喉は振動しないはずです。
日本語でもそうですが、言葉には「省エネ」が起きます。
例えば、「むずかしい」は「むずい」、「わからない」は「わからん」。面倒なので発音が消えたりあいまいになったりするものがあるんですね。
英語では、want to「ワントゥ」→wanna「ワナ」、winter→「ウィナー」、center→「セナー」など大量にあります。
(ちなみにこれは、アメリカ英語を中心に「nt」の「t」が脱落するというルールです)
months を「マンスス」と発音するのはめんどくさいですね。
「th」と「s」の発音を変える必要がある(めんどくさい)。
その結果、舌先の動きが要求される「th」の方が消えて、mons「マンス」と発音することになります。
実は「マンツ」だけじゃなく「マンス」もありなんです。
months の正式な発音「マンスス」はやはり難しい、めんどう。
結果的に、最後の「スス」があいまいに発音されます。すると「マンツ」に聞こえます。
正式は「マンスス」、省エネが起きて「マンツ」になる、ということです。
辞書にも[mʌnts]という発音記号が記載されています。
clothes の正式な発音は「クロウズズ」です。
「th」は真ん中なので「ズ」、「es」は有声音の「ズ」直後なので「ズ」です。
ちらも months と同じように、違った音の「ズ」「ズ」の2連続が面倒なので省エネが起きます。
「th」に舌の動きが要求されめんどうなので、抜け落ち「クロウズ」となり、close と同じ発音になるのです。
「es」のパターンではないですが、breath(息)は「ブレス」、breathe(呼吸する)は「ブリーズ」です。
ちなみに、bath(風呂)は「バス」、bathe(入浴する)は「ベイズ」です。
これらの判別の仕方はいたってシンプル。前述した「th」の位置で即決できます。
今回は months の発音をスペリングと発音のルールと関連させながら解説させていただきました。
日本での英語の授業では発音は後づけのような立ち位置にありますが、英語圏では幼い頃にスペリングと発音のルールを体系的に学びます。
だから、初見の語の発音もある程度予想できるのです。
発音が劇的に良くなるだけなく、リスニング力も高まりますので、是非一度腰を据えて発音の学習に取り組んでみてください。
ちなみに、英語の発音とスペリングの関係性について、言語学者にインタビューした記事がございますのでぜひこちらも読んでみてくださいね。
これを読めば、英語への不信感が晴れ、理不尽な英語を少しは可愛く思えるかも?