Naoya Okada
(更新)
日本人が苦手と言われる発音の代表例、「R」。
これは日本語の音に英語のR音に相当するものがないという言語的な違いが苦手とする理由の1つですが、実はもっと根本的な原因が2つあります。
それはRの発音をするときの「舌の使い方」と「口の構え」です。
そこで今回は、日本人にとってRの発音との識別が難しいと言われる「L」の発音の原理とも比較しながら、R音の正体を解説していきます。
まずはクイズでウォーミングアップをしましょう。
次の1から5までの発音を聞いて、R音かL音かを判定してください。
Let’s get started!
いかがでしたか?
文章ではないので、文脈がなく難しかったかもしれませんね。このあとR音とL音の解説をお読みいただくと、かなりスッキリするはずです。
それではいよいよRの発音について、詳しく見ていきましょう。
日本では従来、英語の授業で「Rの発音は巻き舌」ということが強調されてきました。
しかし先述のように、これは実際のRの発音とは「舌の使い方」と「口の構え」が異なります。
英語には、日本語にはない舌の動きがたくさんあります。
例えばRや日本語の「ラリルレロ」とも似ているLの発音は、舌先を上前歯の裏につけることで発声がされます。
ではここで、実際に「ラリルレロ」と発音してみてください。舌は上前歯の裏ではないところについているはずです。
このように、日本語と同じような舌の使い方で英語を発音してしまうと、違った音に聞こえてしまいます。Rの発音をするときも、同様に舌の使い方に注意が必要なのです。
英語で使う口の構え(口や唇の形)は、日本語のそれとは大きく異なります。
例えば、Wは「唇をすぼめて突き出す」ように発音します。そのため、「水」を意味する water は「ウォーター」ではなく「ゥウォータ」のような発音になるのです。
Rの発音をするときの口の構えも、日本人の私たちがイメージするものとは異なります。
相手にしっかり英語を聞き取ってもらい、わかってもらうためには、このような正しい口の構えの知識が欠かせません。そのためにも、一度腰を据えて発音ごとの舌の位置や口の構えを学習することをオススメします。
こちらの記事に体系的にまとめられているので、ぜひ活用してみてください。
日本では一般的に「Rの発音は巻き舌」と習いますが、厳密にはほとんどの場合、Rは「巻き舌」では発音しません。
Rの発音のポイントは「舌を(舌の根っこから)引く」こと。そして「喉の奥で発声するため、こもって響く」のです。
一方、日本人が混同しがちなLの発音に必要なのは「舌先を上前歯の裏につける」こと。
このように発音すると、Lの音はこもったRとは異なり、「クリア」に聞こえるようになります。クリアに聞こえるLのことは「Light L」と呼ぶので覚えておくといいですよ。
「舌の使い方」の基本や「口の構え」が普段使う日本語と異なるわけですから、日本人がRの発音を苦手だと感じるのは当然ですね。
ここで一旦、ご紹介した舌や口の使い方を意識しながら、実際の音声で聴き比べてみましょう。RとLの順番で流れます。
それではさらに細かくR発音の特徴を確認していきましょう。
早速、R音の特徴を確認、といきたいところですが、その前にL音の特徴を見てみましょう。
先述のように、R音は日本語の「ラリルレロ」やL音と似ています。そのなかでも、特にL音は「ラリルレロ」と舌先の位置や口の構えが近いため、日本人にとって習得しやすい音。
普段日本語で話すときに使う舌の動きや口の構えを脱却するためにも、「急がば回れ」でL音のマスターをすることが、R音習得への近道になるのです。
また、LとRの音は「light」や「right」のようにまぎらわしいものが多いので、コンビで攻略するのがオススメですよ。
Lの音は、舌先を上前歯の裏につけて日本語の「ラ行」のように発声することで発音できます。ここでは、口をリラックスさせておくことがポイントです。
舌 | 舌先を上前歯の裏にくっつける |
口の構え | 自然体(口や唇はリラックスさせて開く) |
音の特徴 | クリアな音で、Lで始まる語は最初に「ン」が入っているように聞こえる |
【light の発音】
日本語の「ラ行」を発音するときは、舌先が英語のL音よりも少し後ろの位置にあります。
「ラリルレロ」と言ってみると、ちょうど上の歯茎の裏側に舌先があるはずです。ここを舌ではじくことによって、「ラ行」の発音ができるわけですね。
このように舌を置く位置が異なるため、出る音も当然響きが変わります。
英語のLの音は日本語の「ラ行」と似ているものの、舌の動きによって「クリア」に、「Light L」のような音になるわけですから、「舌」を意識して発音することが重要なのです。
【Light L】
ほとんどの L の発音がクリアで明るい「Light L」になる。厳密には L が母音の前に登場して「L+母音」の順になったときに「Light L」の発音になる。
例: large/light/like/black/block
【Dark L】
「暗い」印象の音になるLの発音。ルールは「L+子音」だが、おおまかに「語末のLはDark Lになる」と覚えておくのがオススメ。
「Dark L」はRととてもよく似ており、舌を根本から引くことで発音される。
・語末がLの場合
例:cool/girl/novel/travel/will
・語末がL+サイレントEの場合
語末にEが来る場合、「サイレントE」と呼ばれ、このEは発音されない。そのため、実質は語末がLで終わっているように捉えられる。
例:apple/people
・語中のL+子音
例:old/milk
Lの音についておさらいしたところで、Rの発音方法を確認しましょう。
Rの発音は巻き舌をするのではなく、唇を突き出して根元から舌を引くことがポイントです。
舌 | 舌を引き、付け根あたりが盛り上がっているような形にする。舌はどこにも触れない |
口の構え | 唇を突き出す。アニメの登場人物がキスをねだるときに唇を丸めて「ちゅ〜」とする形 |
音の特徴 | 最初に「ゥ」のような音が入り、こもっている |
【right の発音】
アメリカ英語を中心に多くの地域の英語でRは巻き舌で発音しません。その代わりに、R を発音するときの舌は「根本から全体を引いて盛り上がる」のが自然な動きです。
一般的にRの発音は「巻き舌」と言われるのは、舌を引こうとすると舌先が上を向くため。一見巻き舌のように見えてしまうわけです。
そして「舌を引く」ことで喉の奥で発声した音を響かせて発音するので、Rは正しいフォームで発音すると少しこもったような音になります。
L音では「舌先」が発音の要ですから、ポイントとなるところが異なるわけですね。
Rの発音をするときには、「唇を突き出す」と「舌を引く」の2つのポイントをおさえておきましょう。
英語の母音の発音方法にはいくつかの種類があり、その代表格となるのが「長母音」と「短母音」です。ここにアメリカ英語では特に「R音性母音」という種類が付け加えられます。
「R音性母音」とは、girl/sister/turn/earth などに見られる"ir/er/ur/ear"のスペルだったり、アクセントのおかれていない"ar"のスペルに出現する音のこと。
母音を発音した状態で、舌を後ろに引くことでRのような音になるため、唇を突き出す必要はありません。
例えば girl ならば、「ガー」の部分を発音する口の形のまま舌を引くことで、Rのような音ができるのです。
アメリカ英語と異なり、イギリス英語ではRの発音をしないことで有名です。どういった原理があるのでしょうか。
イギリス英語では、Received Pronunciation(容認発音)、通称RPという、イギリスで標準英語とみなされる発音があります。
現在は様変わりしていますが、女王のエリザベス2世や公共放送BBCニュースのアナウンサーが使うような格式高い発音がRP発音の代表例です。
階級社会とも呼ばれるイギリスにおいて、Cockney(コックニー)という労働者階級が使用する発音が発展していった一方で、上流階級向けに標準英語としてルール化されたRPはかなり洗練された上品なイメージを持ちます。
そしてこのRPでは R音を発音しないことが多いのです。イギリス英語におけるR発音の特徴を簡単に見てみましょう。
【単語の最後にくるR音】
単語の語尾にあるRは、多くの場合発音されません。
【母音と子音に挟まれたR】
母音+R+子音のように、Rが母音と子音に挟まれた場合は、発音されません。
【Rが単語の頭にある場合】
単語の頭がRの場合は、しっかりと発音します。
最後にアメリカ英語とイギリス英語での発声の違いを確認してみましょう。
音声はアメリカ英語、イギリス英語の順です。
「公園に女の子が何人かいたよ」
日本人にとってRとLは混同しやすいので、リスニングのときに2つの識別で苦労されている学習者の方は多いと思います。
RとLの識別のために注意するべきポイントをおさえておきましょう。
例:Turn right. といえば turn(曲がる) から light ではなく right(右) だと判定できます。
先述のとおり、Rの発音をするときには通常は唇を丸く突き出します。そのため、R 音の前に「ゥ」のような音が入るのです。また、喉の奥に響かせるため、音もややこもり気味になります。
Lは舌先で上の前歯の裏をはじくようにするため、クリアな音「Light L」になります。
苦手だからといって、避けるわけにはいかないRとLの音。それならば、しっかり対策をとって苦手意識を取り除きましょう!
ディクテーションは、発音矯正に特に効果が高いといわれている学習方法です。具体的には、耳で聞いた英語を紙に書き取ったり、パソコンに打ち込みます。
この練習を通して聞き取れなかった音が、皆さんの「苦手な音」です。皆さん自身がイメージする音と実際の音との間に存在する「ギャップ」であるといえます。
英語は「音声言語」と言われるほど「音が重要な役割を持つ言語」ですから、覚えたいセンテンスやフレーズは最終的には声に出して腑に落としてください。
声を出す練習を組み込むことがLとRの音の識別だけではなく、英語のあらゆるスキルの底上げにつながります。
詳しい方法はこちら。
Tongue Twisterは発音の練習に加えて、発音やアクセント、イントネーションの矯正、流暢さの改善に有効な方法だといわれています。
こちらの記事ではオススメの早口言葉を紹介しているので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
「Youglish」というWebサイトをご存知でしょうか。
「Youglish」は、さまざまな言語の発音の検索サイト。このWebサイトのすごいところは、発音を知りたい語句を検索すると、YouTubeのビデオのなかからその語句が使われている特定の場面を表示してくれるところです。
さらには語句を検索する際に、アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語などアクセントを指定することも可能。
自分の目的に合わせて発音やアクセントを確認できるのは、英語学習者にとって嬉しい機能ですね。
実際に「girl」という語句をイギリス英語で検索すると、次のような動画が画面に表示されます。
人によっても発音やイントネーションは異なるので、「次へ」ボタンを押して数人の発音を確認してみるといいでしょう。
30代である筆者は、このR音の発音の仕方は学生時代に「R音は唇を突き出して舌を根っこから引く」と習いました。
同世代はほとんど「巻き舌」で習っているので私が特別な環境にいたのかもしれませんが、「巻き舌」という言葉を発音の教科書で初めて見たときに「何だ?」となった覚えがあります。
大人になるにつれて、ネイティブスピーカーから「巻き舌」で発音するように指導を受ける機会もあり、これを自然と受け入れるようになりました。一方でアメリカに行ってみると、「巻き舌は絶対しない」という人々が大多数でした。
今回「巻き舌は間違い!」というタイトルをつけましたが、自分自身の経験から発音方法を決めつけてはいけないと思っています。
発声にはそれぞれの国の言語の違いが反映されており、口の形も舌の動きも異なるもの。また、英語は時代とともに急速な変化を遂げています。それにがっつり巻き舌を好む人もいるわけです。音声って多様性があるんですね。
しかし、それでも本質的には「舌を引く」ことと「喉の奥で響かせる」ことの2点は変わらないR音の特徴だと考えています。この特徴はRの発音をするときや聞き取りをするときに、頭の片隅に置いておくといいでしょう。
いかがでしたか?
Rの音は「舌を引いて喉で発音」というシンプルな発音である一方、イギリス英語のように「発音なんてしない」という場合もあることが分かりました。
ここで大切なことは、発音にはルールはあるけれど絶対的なものではなく、国や地域の発声メカニズムや言語や文化の影響を受けているため、違っていて当然だということです。
「Japanese English(日本語訛りの英語)」は、ときとして日本人の英語発音の不自然さを指し示すことがあります。しかし、宗教や人種、髪の色、性別が異なるように、英語も違っていて当たり前です。みんな違ってみんな良い。
多様性があるからこそ、英語の面白みが増すのではないかと思います。
もちろん、せっかく英語を学習するならカタカナ英語を卒業してネイティブスピーカーのようになりたいという向上心は学びにとって必要なものですが、違っていることは当たり前のことなんだ、ということを忘れないでください。