永沢りょうこ
(更新)
英語学習をしている方の中には、TOEIC や各種試験の英文だけでなく、自分の興味のある分野の英文を読みたい!と思っている方も多いと思います。趣味の本やビジネスに関する本も、英語で読めたら楽しいですよね。
そのためには「リーディング」のスキルを身に着ける必要があります。
しかし残念ながら、多くの人が非効率なアプローチをしがち。代表的なのが、昔、学校でやったような「和訳」を頭の中でしながら読むこと、いわゆる「返り読み」です。
これをどんなにやっても、読解力の向上には結び付きにくいのが実情です。また、単語や熟語の意味をひたすらつなげていっても、英文を読めていることにはなりません。ではどうしたら「真の読む能力」を効率よく培うことができるのでしょうか。
今回、詳しく解説していきます。後半には実践練習問題もありますのでぜひチャレンジしてみてくださいね!
本記事では「返り読み」を以下のように定義します。
例えば上の英文の意味を和訳としてとらえるまでに、頭の中では「I → an interesting novel → read」というように、英語の語順を“わざわざ”日本語の語順に置き換えて訳してから、意味をとらえています。
このくらいやってもいいじゃないかと思うかもしれませんが、このプロセスの最大の欠点は「時間がかかる」という点です。
英語はこのような単文ばかりでないのは皆さんもご承知かと思います。例えば、ちょっと長い文だとどうなるでしょうか。
この文を見て、和訳「私は10年前に高校で教えていた国語の先生に会った」と解釈するまでに、返り読みしている人の目線はこう動いたと思います。
このように、一つの文を前から、後ろからひっくり返して並べ替えたり、同じところを2度、3度読むのも、時間がかかる原因。また、この作業をどんなに早く行えたとしても、結局「英語から並べ替えた日本語」を作り、英文の「和訳」を理解しているので、英語そのものを理解しているとは言い難いです。したがって、このクセがついている人は早めに直す必要があります。
では、英語そのものを読解していくには何がベストなのかと言うと、いちいち並べ替えて訳さずに、やはり英語の語順のまま前から読んでいくことです。
英語のネイティブスピーカーたちは、生まれたときからどっぷり英語環境にいますので、特に文法や構造など意識せずに前から読んでいます。私たちが日本語を読むとき日本語の文法など考えないのと同じです。母国語特有の「感覚」でいけるんですね。
しかし、外国語を読む際にはこの「感覚」が自分の中にありませんから、まずはそこを作ってあげないといけません。それは何かと言うと、英語の構造を理解する力、つまり英文法力。
文法は文法、読解は読解で別個のものではなく、文法が読解の土台になっています。文法があやふやだと思うかたは、今一度、面倒でも基本的な文法を参考書や問題集で一通り押さえておくことをお勧めします。
特に、英語構造の基本である文型は、リーディングに必須。主語「誰が」・動詞「どうした」・目的語「何を」・補語「(主語や目的語の説明語句)」といった英文の構造のパターンを文型でしっかり押さえておきましょう。
以下が第1文型から第5文型のパターンです。
ぱっと見長い英文でも、実は単なる「誰が、どうした」の主語・動詞の文型だったりすることもあります。文型は5つしかありませんので、必ず把握しておいてください。
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一通り英文法を学ぶと、英語は単語と単語が結びついて、一つのかたまりを作っていることがわかります。
例えば、先ほどの例文「I read an interesting novel.」で言うと、この文の中で、【an interesting novel】は、形容詞と名詞がくっついて、ひとつのかたまり(語句)を作っています。こうしたかたまりはバラバラにせず、かたまりごとにとらえていきます。
さらに、先述の文法学習で把握した文型に、このかたまりでのとらえ方を乗せていきます。
すると、頭の中の処理としては、
と、前から順に読めるわけです。きれいな日本語に訳さず英語の語順のままでも理解できますよね?
これが「英語の語順のまま理解する」ということです。そしてさらに、文型がしっかり頭に入っていれば、「ここまでが主語ということは、次は動詞が来るはずだ」とか、「これが動詞だから次は目的語が来るはずだ」と、ある程度予測をしながら英文を読むことができます。その「予測」も入れていくと、さらに早く読めるようになります。
例文②「I met a Japanese teacher who used to teach us at high school 10 years ago.」を予測を入れて読んでいくと、次のように脳内で処理できてきます。
このように英文の構造が頭に入っていれば次に来るものの目星がつくため、多少長い文に出会っても焦らず前から後ろへ読み進めることができます。しかも、目線が一つの英文の中で何度も行ったり来たりしないので、その分、読解スピードとしても速くなるというわけです。
いくつか、長めの文にもトライしてみましょう。
これを頭から読むには、脳内で以下のように処理します。
これを頭から読むには、以下のように処理します。
このように、文の構造ごとに区切りつつ、かたまりはバラさずに、前から処理していきます。ポイントは、先にも述べましたように、文の構造である文型をとらえつつ、単語同士のかたまりを正しくとらえて、前から処理するということです。
とはいえ、特にこの「かたまり」を正しくとらえるにはある程度の練習が必要です。単語同士のかたまりをとらえる練習を、実際にいろいろな文を読みながら行っていきましょう。いきなり洋書や英語の記事などを読むのではなく、単語レベル的にも難しすぎず、解説がついているリーディング用の教材本などを使うのもよいでしょう。
ではここまででの説明をもとに、返り読みせずに英文を読めているかどうか、実際にいくつか英文を読んで確認してみましょう。
② The manager of our IT department used to be a chef at a famous restaurant.
③ The guy standing at the corner started the project to improve the computer system in the company.
いかがでしたか?
英語の語順のまま、前から読めましたか?
各例文を英語の語順のまま理解する思考回路は以下のようになります。
和訳と比べて、英語の読み方だと、前から読んでいっているのがお分かりいただけるかと思います。
以上、英文を返り読みをせずに早く読み解くためのポイントを解説しました。
かつては頭の中で和訳して理解していた方でも、このようにして英語を英語の語順のまま読む練習を続けていくと、ある段階から和訳することが面倒にすら感じてくるはずです。日本生まれの日本人(筆者もですが)が、最初はどうしても日本語を介して英語を理解しようとするのは仕方がないことです。
しかし、こうした練習を根気強く続ければ、ある時点からふと、英語を英語のまま理解できる回路が出来上がります。この回路を身に付けるのは簡単ではありませんが、リーディングだけでなくリスニングの際にもとても役立ちますので、ぜひ少しずつ身に着けていってください。