西東 たまき
(更新)
日本に住み、仕事でも日本語しか使わないなら、「英語なんて必要ない」と思ってしまうのも分かる気がします。
確かに、日本で普通に暮らしている限り、英語が出来なくて困る状況などまずないと言って差し支えないでしょう。実際、学校を卒業して以来、英語を使っていないという人も珍しくないのではないでしょうか。
英語力は、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4つの能力をバランス良く身につけることが理想ですが、そのうちの「読む」ができるだけでも既に膨大なメリットがあるということは是非知っておくべきです。
当記事では、「英語を読めるだけで変わる情報格差」についてご案内します!
日々の暮らしにおいて、日本語の情報が少なくて不便を感じることはかなり稀だと思います。
インターネットを検索すれば、あらゆる分野の情報が日本語で手に入るし、海外発の本やニュースも軒並み日本語訳で読むことができます。
外国の雑誌も日本版が発売されているし、映画やドラマも日本語字幕や吹き替えで楽しめますね。
また、SNSやショッピングサイト、口コミサイトなど、インターネット上の主なサービスにも別途日本語版があったり、「日本語表示」を選ぶことができます。
でももし、「日本語でもこれほど豊富な情報が得られるのだから、英語が読めなくたってデメリットなどない」と思っているなら、それは「井の中の蛙(かわず)」と言うべきかもしれませんよ。
あらゆる分野の情報が網羅されていて、調べ物の際は多くの人が真っ先に頼りにするインターネット上の百科事典 Wikipedia。そこには5,100万本を超える記事が存在します(以下、記事数はいずれも2019年11月時点)。
しかしながら、「英語学習者の強い味方! Simple English Wikipedia(シンプル英語版ウィキペディア)をご紹介」の記事でも触れたように、日本語で書かれている記事数はそのうちの約2.3%(117万本強)に過ぎません。
最も記事数が多いのは英語版で、全体の約12%(600万本)を占めています。
「情報が多くて頼れる」と思われた Wikipedia も、日本語で得られる情報量は英語で得られる量に比べるとわずか1/6ほどでしかない(*1)のです。
引用:Wikipedia
もちろん、情報規模の差は Wikipedia だけではありません。
2019年9月時点で、インターネット上にあるサイト数の54.4%が英語のサイトとなっています。つまり、インターネット上の膨大な情報の半分以上は英語で提供されているということです。
次いで2位はロシア語のサイトですが、その割合はグンと下がってわずか6.7%。日本語のサイトも6位と健闘しているものの、全体の割合から見ればほんの3.4%に過ぎません。(*2)
英語を読むことさえできれば、どれほど多くの情報にアクセス可能になるかは一目瞭然です。
逆に、発信者側にすれば、英語で発信できるとそれだけ多くの人にリーチ可能になるということでもあるわけです。
*1…参考:Wikipedia
*2…参考:Languages used on the Internet
有利なのは情報の「量」だけではありません。
試しに、上記の出典元リンク Languages used on the Internet には「インターネットにおける言語の使用」という日本語版のページもありますので、そちらを開いてみてください。
Wikipedia 記事の多くには日本語ページも存在するので、言語が変わっても同等に情報が得られているような気がするかもしれません。
しかし、上記、英日両ページの内容量を見比べてみましょう。日本語ページの情報量は英語ページの半分以下です。
しかも、英語ページに掲載されている資料は2019年付なのに対し、日本語ページのものはそれより6年も古いものでしかありません。
一見同じように情報が得られているように見えても、比べてみると実は量だけでなく質も劣っていることが分かります。
ニュースも英語でオリジナル記事が読めれば、より深く知ることができます。
例えば、2019年11月6日、日本語版CNNのサイトに「メキシコの国境地帯、母子らの車が襲われ炎上 9人死亡」という記事が掲載されました。1本の動画と644文字の比較的小さな記事です。
もともとは、“Woman whose sister-in-law was killed in massacre near the US-Mexico border says cartels have targeted them before” のタイトルで英語のCNNサイトに同じ日にリリースされたニュースです。
英語の記事は1,291語(ワード)とかなりボリュームがある上、5枚の写真、1枚の地図、1本の動画とともにニュースの背景まで詳しく解説されています。
一般に英語1語は日本語の2文字程度で換算されることが多いので、この記事の場合、文字情報だけでもざっと4倍もの差がある計算になります。
そもそも、日本語ユーザーにとって関連・関心が薄いと思われる情報は翻訳されることもありません。
あなたが日本語だけで情報を得ているなら、特定の視点で選別されたものだけの供給を受けているのだということにも気付く必要があります。
ものごとを多角的に捉えたいなら、自国だけでなく他国視点の意見や情報は欠かせませんね。そのために最も効率が良い言語が「英語」ということになります。
BBC や CNN といったメジャーな国際ニュースサイトを継続して見ていると、そこで掲載されたニュースが日を置いてやっと日本語で配信されていることに気付くでしょう。
新聞であれば内容により数日の差がある場合がありますし、スピードがウリのインターネットでさえ翌日扱いになるのも珍しくありません。翻訳が必要なため、日本語版のリリースはどうしても遅れてしまうのです。
本などの出版物においては、より顕著な差として現れます。邦訳本が出るまでには数ヶ月単位の時間がかかります。
2019年8月、アメリカの前ファーストレディーであるミシェル・オバマの自伝『マイ・ストーリー』が日本で発売されました。アメリカでは発売からわずか15日間で「2018年にアメリカで最も売れた本」となりニュースになった話題の本です。
原題 Becoming という名のこの本がアメリカで発売されたのは、2018年11月。全世界で1,000万部を突破したこの本が邦訳で読めるようになったのは、実は1年近く遅れてのことだったのです。
世界を熱狂させている本の存在を知っても邦訳を待たなければ読めないなら、感動を一緒に共有することはできません。
しかし、英語が読めれば海外の旬の情報を時差なく入手することが可能になります。日本語だけを情報源にしている人に比べたら、どれほど有利かは明らかでしょう。特に、仕事や研究においては情報の遅れは不利益につながります。
世界の最新情報を求めるなら、日本語に訳されたものを読んでいる時点ですでに遅れているかもしれません……。
たとえ、英語を書けなくても、話せなくても、聞き取れないとしても、「読める」だけで圧倒的な情報格差がつきます。
「英語を話す相手がいない」、「使う機会がない」からといって英語の勉強はムダだと考えるべきでないということがお分かりいただけたでしょうか。
「英語を書く、話す、聞く」の能力は相手がいないと上達が難しいですが、「読む」力なら自分一人でも伸ばすことが可能です!