K. Inoue
(更新)
英語力を高めるために「音読は大切だ」とよく言われます。
でも具体的にどうやって音読すればいいのかよくわからないという人のために、前回から4技能を鍛えるための音読実践法をご紹介しています。
今回ご紹介する音読法もぜひ実践して、音読の効果を実感してみてください。
音読で特に意識したいポイントは大きく3つです。
ですが、これら全てをいきなり取り入れるのは難易度が高いので、一つずつポイントを押さえた練習をすることがまずは大切です。
そこで前回の記事では、一つ目の「発音」を意識し、発音力を鍛えるための音読法をご紹介しました。
今回は、二つ目の「文法と意味の理解」を意識した音読練習法をご紹介します。
この練習法は、英語の語順の仕組みと意味の流れにしたがって読む感覚を養うことを目的にしています。
やり方としては、まず用紙に音読素材となる英文を意味のまとまりごとに分け、その区切りごとに日本語で意味を書いておきます。
たとえば以下のような見た目のものがやりやすいでしょう。
【例】
出典:スティーブ・ジョブズ(スタンフォード大学卒業式のスピーチ)
区切る箇所については、上記はかなり細かく分けましたが、もう少し長くても大丈夫という人は長めでも構いません。短すぎず長すぎず、ご自身がわかりやすいように区切ってあげるとよいでしょう。
SVとO、Cの関係、受動態、関係代名詞など、登場する文法の仕組みと意味を正確に理解できていることをしっかりと確認してください。
またこの用紙には、大切な文法箇所や覚えておきたいイディオムに線を引いておくなど、重要なポイントが見てすぐ分かるようにしておく工夫をするのもおすすめ。
さて、用紙の用意ができたら、句切れごとに英語を音読していきます。このとき、一つ目の区切れを読んだらそれを日本語に訳してみます。日本語は実際に声に出しても構いませんし、頭の中で思い起こすだけでも大丈夫です。
それができたら二つ目の句切れに進み、同じように日本語の意味を確認しながら三つ目、四つ目と進めていきます。
要するに、句切れごとに通訳をしていく感覚です。こういう文法だからこういう意味の流れになっている、ということをしっかりと理解しながら進めていきましょう。
大切なのは、語順に従った意味をよく考えることです。
日本語としては多少不自然であっても、英語の語順の流れを大切に、意味を頭から理解していくことが重要なのだと意識してください。
最初はゆっくりでも構いません。十分な時間を取って行ってください。
一通り終われば同じことを繰り返し行います。再び同じことをするわけですが、今度はスピードにもこだわってみましょう。
制限時間を設けても良いでしょう。読み上げた英語を即座に素早く日本語の意味に直し、英語への反射神経を鍛えていきます。
「えっと…ああ…これはどういうことだっけ」などと、詰まってしまうことが全くなくなるまで繰り返してください。
慣れてきたら、句切れの個所を大きくしたり、句切れ二つ分〜三つ分を一気に読み上げてしまうなど、ご自身で難易度を上げていくのも良いです。
家族や友人に確認してもらったり、本物の通訳になったつもりで一緒にやってみるのも楽しいでしょう。
実際の英語力としては、もちろん「日本語を介さない英語力」を目指さないといけません。でも日本語を使ってさえ「えっと…あれ…何だっけ…?」と理解が弱い状態では、日本語を介さない英語力に到達するのは困難です。
サイトトランスレーションでは、まずはしっかりと文法、単語、フレーズの意味を正確につかみ取るようになることを目指していますから、まだ日本語の力の助けを借りている段階だとご理解ください。
サイトトランスレーションを繰り返し、やがて「もう日本語がなくても英語を読んだだけで意味内容がイメージできる。英文の言いたいことが頭から分かる」ようになってくれば英語感覚は一気に伸びていきます。
事前に準備が必要ですが、とても高い効果の得られる練習法なのでぜひ準備からしっかりと行ってください。
サイトトランスレーションで意味の流れが理解できたら、せっかくなので今度は英文を、発音にもこだわりながら読んでみましょう。
前回ご紹介したリッスン&リピートやオーバーラッピングでは、意味よりも発音やリズム、スピード感に重点を置いていました。
2) 一度音声を再生し、スクリプトを見ながら聴き取ります。
3) 一文聴き取ったら音声を止め、今聞き取ったばかりのものをスクリプトを見ながら同じように発音します。
より詳しくはこちら。
逆にサイトトランスレーションでは部分的に、しかも文法や意味を考えながら読み進めていくことになるため、発音がおろそかになりがちです。
そこで、リッスン&リピートとサイトトランスレーションを合わせた練習を行ってみてください。
音声を再生し、意味の句切れやセンテンスごとにいったん止め、それを文法も意味も考え意識しながら正確に発音していきます。
思考と実技を同時に行うわけですから、初めのうちは大変に感じるものです。まずは英文を見ながらで構いません。
両者の練習を十分に行った人には英文を見なくてもそれほど難しくはないかもしれませんが、練習量が足りない人にはとてもぎこちない音読になるはずです。
ご自身の練習量を確認するためにもぜひやってみてください。
さらに慣れてくればオーバーラッピング、スピードオーバーラッピングとも組み合わせてみましょう。
2) 音声を再生し、スクリプトを見ながら模範音声と同時に声を出します。
より詳しくはこちら。
素早く読むことはできても、英文の理解が頭の中で追いつかなければ意味がありません。
遅くとも、通常のスピードと同じペースで口が動いて思考もできるところを目指してください。
ノーマルスピードでこれができるようになると、該当の英文に対する感性はかなり磨かれたことになります。発音ができ、意味も理解しながら読むことができるわけですから、その喜びも相当なものになるはずです。
いかがだったでしょうか。
今回は「文法と意味の理解」にこだわる音読法としてサイトトランスレーションをご紹介しました。
なんとなく適当に流し読みをするのではなく、細かく正確な理解に基づく音読をすることで、英語そのものへの理解が深まり、英語的な発想や感性も身に付いていきます。
私たちが日々日本語を、分かり切ったものとして認識しながら、そして繰り返し発しているように、どれだけ理解が十分であると思える英文であっても「英語を英語として話している」という感覚が得られるまで繰り返し続けてください。
また発音、リズム、スピード、抑揚…こうした音声面も並行して訓練することで発話力はますます向上します。
大切なのは、理解と訓練の繰り返しです。これからも頑張って継続してください。