西東 たまき
(更新)
「映画で英語を勉強してみよう!」という提案はよく聞きますよね。
好きな映画を観ながら英語が上達するなら一石二鳥です。
「観ているだけで英語が自動的に上手くなる」ようなムシの良い話はありませんが、「生きた英語を身に付けるのに活用する」ことはできます。
この記事では、英語学習に映画をどう活用すれば良いのかについてのヒントをご紹介します。映画談義に役立つ知っておきたい英語表現と、学習者向けおすすめ映画も併せてお伝えしますね!
まずは映画選びのヒントから。
映画にはあらゆるジャンルとストーリーがあり、皆自分の好みを持っていますが、英語学習を目的として映画を選ぶときは少し制限が必要かもしれません。
英語のセリフをできるだけ理解するためには、スピードが速すぎず聞き取りやすい発音のものを選びましょう。自分の英語レベルに合ったもの、かつ親しみを感じられる映画を選ぶのが基本です。
おすすめのジャンルは、日常生活を舞台にしたドラマです。日常的な会話表現が満載な上、外国の暮らしぶりや習慣も知ることができるのが理由です。
また、興味を持って観られる映画を選ぶのが大切です。どのジャンルを選ぶにせよ、関連する語彙を自然に増やせるメリットはあります。
政治や裁判が絡んだ話なら、 “conspiracy(陰謀)” や “prosecutor(検察官)”、 “jury(陪審員)” など、普段なかなか触れられない言葉が自然に覚えられます。学園もの、医療、冒険、職場を舞台にしたものなど、それぞれの分野で生きた表現に触れることができます。
言葉遊びがふんだんで、文化的背景を知らないとピンとこない表現が多いコメディは少し難易度が上がります。でも1本観たら、面白い言い回しをいくつか仕入れることはできると思いますよ。外国の笑いのセンスを知るという効果もあります。
1950~60年代のハリウッド映画なら、スラングがなく丁寧で聞き取りやすい英語に触れることができます。ストーリーも分かりやすいものが多いので、学習に適したものがたくさん見つかるでしょう。
初回は字幕付きで観て、ストーリーを把握することから始めましょう。
この下準備をしておくと、英語で観ているときに「合点が行く」部分が増えるので学習効果が上がります。
「英語で映画が楽しめる」ようになるまでの道は簡単ではありません。最初はおおまかなストーリー把握を目指し、フレーズチェックに重点を置くと良いでしょう。
短いフレーズは覚えどころです。聞き取れたものは覚えてしまいましょう。会話ですぐ使えます。実は、誰かの名言やことわざをもじったセリフだったなんてことが後日判明、といったこともよくあるものです。
フレーズそのものだけでなく、その「口ぶり」にも注目してそのまま記憶してしまいましょう。自分が同じような場面に立ったとき、自然な感じで口にすることができます。
言葉やフレーズの「使われ方」にも注目してください。
つまり、「どんな場面・状況」で、「どんなトーンで話されたか」といった点です。普段の学習で言葉の意味は知っていても、どんな状況でどんな風に使われる表現なのかを学ぶには映画が最適です。
一つのフレーズがトーン次第でいろいろなニュアンスになることに気付くでしょう。
映画のタイトルからも学べることがあります。
最近の映画タイトルは、英語をそのままカタカナ表記にしただけのものがほとんどですが、昔の映画には一つ一つ日本語の題名が付けられていました。
『慕情』『おかしな二人』『ティファニーで朝食を』『風と共に去りぬ』『雨に唄えば』『七年目の浮気』『追憶』…などなど、文学的センスが発揮された往年の映画タイトル、聞き覚えがあるものはありませんか?
名作映画の原題を調べてみるのも良い勉強になります。「元はこんなタイトルだったのか!」という面白い発見がありますよ。『猿の惑星』の原題を知れば、「サル」は “monkey” だけでないことも発見できます!
ちなみに、上記映画の原題は順に “Love Is a Many-Splendored Thing”、 “The Odd Couple”、 “Breakfast at Tiffany’s”、 “Gone with the Wind”、 “Singin' in the Rain”、 “The Seven Year Itch”、 “The Way We Were” です。
タイトルに使われている英語は語呂も良く記憶に残りやすいので、英語表現のセンスを養う助けになります。
映画学習におすすめの映画を3本ご紹介します。
『エーデルワイス』『ドレミの歌』をはじめ、魅力的な歌がたっぷりのミュージカル。
今でも色褪せを感じさせない名作です。家庭教師の主人公と子供たちとのやりとりが中心なので、英語も聞き取りやすくなっています。覚えやすい歌からも英語表現を身に付けられます。
英語が話せない欧州出身の主人公が、思わぬことからニューヨークの空港で長期間足止めされてしまいます。
空港職員たちと連日、顔を合わせているうちに次第に打ち解けて英語も上達していく様子は、英語学習者として親近感を持って観られます。
子供向けでありながら、大人が鑑賞するにも良質の映画がたくさんあるディズニー映画。
どれを観ても聞き取りやすい発音、使いやすい表現がたくさん学べます。ジャンルも幅広く揃っています。好きなものを選んで早速英語の勉強を始めましょう!
映画に関する言葉も少し見ていきましょう。
演技について語るときは、 “performance(パフォーマンス)” もよく使われます。
「ハッピーエンド」は “happy ending” というのが正解です。
昨秋は「ハリウッドの大物」という言葉がひときわ話題になりました。英語で “Hollywood mogul” です。
“Mogul” はかつてのインド「ムガール帝国」を指しますが、小文字で書くと「(主に芸能界の)重要人物、権力者」になるほか、スキー種目の「モーグル」のことでもあります。
The movie is dubbed into Japanese.
「その映画は日本語に吹替えられています」
アカデミー賞(Academy Awards / Oscars)やゴールデングローブ賞(Golden Globe Awards)といった映画・ドラマの授賞式は日本でも毎年大きな話題になりますね。その授賞式自体もまた、英語と文化の学習に最適です。
ユーモアを効かせた司会者のコメントは難しいかもしれませんが、受賞者たちの喜び溢れるスピーチからは、「最上の喜びと感謝の英語表現と、その伝え方」が学べます。
たいていの人が家族を筆頭にあらゆる関係者への感謝の言葉を延々と続ける点など、文化の違いも大いに感じるかもしれませんね。
英語の勉強のために選ぶ映画なら、一番選択肢が多いのはアメリカ映画になるでしょう。
映画の年代・舞台・ジャンルなどによっていろいろな英語に触れることができます。
言葉遣いとリズムが独特の黒人の英語や、イギリス英語の特異なアクセントなどを知ることができるのも映画ならでは。どんなに注意深く聞いてみても、英語にさえ聞こえないような、イギリスやアメリカの方言にも驚くのではないでしょうか。
字幕なしで映画を理解するというのは低くないハードルですが、様々なタイプの英語を耳にして「英語の多様性」を知るだけでも、英語学習者にとって価値があるといえるでしょう。