則岡麻里絵
(更新)
こんにちは。医薬翻訳者の則岡麻里絵です。
前回の記事では、英語で読みたいサイエンス誌を8誌ご紹介させていただきました。サイエンス誌と一口にいっても、さまざまな分野やレベルがあることをおわかりいただけたかと思います。
各雑誌の特徴を挙げて、ぜひ読んでみてください!とおすすめしましたが、実際に読む際には具体的にどんなことを知っておくとよいのでしょうか?
今回は、英語のサイエンス誌を読むコツを3つご紹介したいと思います。
1つ目のコツは辞書を引かないことです。
ニュース記事などでは、難しい単語に説明がついていないことも一般的ですが、サイエンス誌に出てくる難しい単語は、その場で説明されていることも多くあるのです。何とも親切だと思いませんか?説明文ならではの特徴ですね。
例として、前回の記事でご紹介したナショナル・ジオグラフィック・キッズのウェブサイト(*1)から抜粋した英文を見てみましょう。
一文目に続くカッコ内に、“Vertebrates have backbones.” という説明が書かれています。“vertebrates”(脊椎動物)という単語がわからない場合でも、 ”backbones”(背骨)だったら想像がつく人も多いのではないでしょうか。
「”back”=背中、”bones”=”骨”、だから背骨かな?」
「”vertebrates”というのは、背骨があるもののことだな?」
というふうに、読み解いていくことができますよね。
わからない単語が出てきても、それを頭の片隅に置き、ぜひそのまま読み進めてみてください。辞書を引く手間が省けるだけでなく、これは英語を英語で理解することができるチャンスでもあるからです。
英語で書かれた説明を読み続けることで、英語を英語で考えることができるようになります。そして英語を英語で考えられるようになると、英語で物事を説明できるようになります。
難しい英単語を覚えることもいいですが、簡単な英語を使って説明するスキルは、英語を外国語として使う上で非常に役立つものです。
英語の文章は辞書を引きながらしか読めないので嫌になってしまう、という方にとっても朗報ですよね。読み進めて考えてみたけれどどうしてもわからない!というときのために辞書は取っておきましょう。
2つ目のコツは、”prefix”(接頭辞)と”suffix”(接尾辞)を覚えることです。
日本語ネイティブにも知らない日本語の単語があるように、ありとあらゆる単語を覚えることには無理がありますよね。サイエンス誌では、知らない単語に直面することが多くあるかと思います。また造語が出てくることもあります。
そんなときに知っておくと便利なのが、単語の頭に隠れている ”prefix” と、単語のお尻に隠れている ”suffix” なのです。漢字のように意味を持った文字のかたまりなので、これを知っておくだけで単語の意味を推測することができますよ。
サイエンス誌でよく見かける ”prefix” と ”suffix” を見てみましょう。
例で見ていただけるように、1つの難しい単語に見えるものでも、複数の言葉を組み合わせた単語だということが多くあるのです。
他にもたくさんの ”prefix” と ”suffix” があり、ここには書ききれませんが、サイエンス誌はもちろん、その他の英文を読む際にも大いに役立つのでぜひ覚えてみてくださいね。
3つ目のコツは、主語と動詞を見つけることです。
日本語の文章では主語が省略されてしまうことも多くありますが、英語の文章には必ず主語が入っています(※一部例外を除きます)。主語と動詞は、文章の最も重要な骨組みです。この2つを見つけられれば、その文が伝えようとしていることが見えてきます。
主語と動詞を見つけるためには、明らかに違うものを省いていくというのが一つの方法です。
主語は、名詞(句・節を含む)です。動詞は、Be動詞または一般動詞です。
明らかに違うものには、「前置詞+名詞」や「副詞」があります。関係代名詞以下も名詞を単に修飾している部分ですので、省くとわかりやすくなります。
例として、前回の記事でご紹介したサイエンス誌のポピュラー・サイエンスに掲載されている、”Eating potatoes won't actually kill you(*2)”(ジャガイモを食べることでは実際死なない)から抜粋した一文を見てみましょう。
では、この文章の主語と動詞は何か一緒に考えていきましょう。
文頭の ”At the end of the day” は、「前置詞+名詞」ですので、主語ではありませんね。続く ”people” は名詞ですので、主語である可能性があります。
”who”は関係代名詞です。関係代名詞以下は肉付きである修飾部分なので省いてしまいましょう。もう一つの関係代名詞である ”that” 以下も修飾部分なので省きます。(”that” に続く ”make” に ”s” がついていないので、この ”that” は代名詞ではないですね)
副詞である ”almost” と ”certainly” も省いてしまいましょう。
残った部分は、”people are going to have other habits”(人は他の習慣があるでしょう)となります。
これがこの文章の骨組みとなる部分です。ここまで削ると、主語は ”people”、動詞は ”have” であることが簡単にわかりますよね。
※"be going to"は準助動詞
最初に主語と動詞を見つけることで、内容を素早く理解できるようになります。練習を重ねると、こういった方法を意識しなくてもすらすら読めるようになりますので、ぜひやってみてくださいね。
今回ご紹介した「辞書を使わない」「”prefix”と”suffix”を覚える」「主語と動詞を探す」という3つのコツをつかむだけでも、サイエンス誌はぐっと読みやすくなるのではないでしょうか。
最初は難しく感じても、たくさんの記事を読んで英文に慣れていくことで、内容を素早く理解できるようになりますので、自分のレベルに合った記事を根気強く読み続けてみてください。
単語を一つ一つ訳さなくても文章全体を理解できるようになってくると、読むことがより楽しくなってきますよ。コツをつかんで、英語でしか手に入らない科学情報を入手してみましょう!
【参照】
(*1) http://kids.nationalgeographic.com/animals/hubs/reptiles/
(*2) http://www.popsci.com/potatoes-bad-for-you#page-2