冬に読みたい英語のポエムと俳句8選
英語で何かを読もうとなると、小説あるいはニュースなどの記事を読むことが多いかもしれません。
しかし時には「ポエム」を選んでみると、ほかの読みものとはまったく異なる感覚を体験できますよ。
小説などに比べて短いポエムは想像を働かせて考えたり感じ取ったりする必要があるため、寒さで家にこもりがちな冬は、じっくり英語のポエムに浸るのにぴったりの季節と言えます。
今回は、冬に読むのにぴったりな英語のポエム、そして英語で楽しむ冬の俳句もご紹介します!
冬に読みたい英語のポエム
The North Wind Doth Blow —Unknown
The North wind doth blow,
And we shall have snow,
And what will poor robin do then, poor thing?
He'll sit in a barn,
And keep himself warm,
And hide his head under his wing, poor thing.きたかぜぴゅうぴゅう ふいてます
もうすぐゆきが ふってくる
そしたらこまどり どうするの?
かわいそうな こまどりさん
こまどりきっと なやのなか
じぶんでじぶんを あっためる
あたまをはねに つっこんで
かわいそうな こまどりさん
(谷川 俊太郎 訳)
Words For Life
イギリスに古くから伝わる童謡『マザーグース/Mother Goose』の一編。
The north wind doth blow を「きたかぜぴゅうぴゅう ふいてます」と訳す詩人・谷川俊太郎による和訳のセンスも味わって。
Painting for a Broken Sewing Machine ―Yoko Ono
Place a broken sewing machine in
a glass tank ten or twenty times
larger than the machine. Once a year
on a snowy evening, place the tank in the town square and have everyone
throw stones at it.
こわれたミシンのための絵
こわれたミシンをその十倍若し
くは廿(にじゅう)倍位のガラスの水槽に入
れて一年に一ぺん、雪の晩に広
場に出してみんなで石をなげる。
Museum of Modern Art
コンセプチュアルアート(概念芸術)に分類されるヨーコ・オノの詩集『グレープフルーツ/grapefruit』から。1964年に出版されたこの詩集には、じっくり浸るのにおあつらえ向きの作品がたくさん収められています。
The Dipper ―Kathleen Jamie
It was winter, near freezing,
I'd walked through a forest of firs
when I saw issue out of the waterfall
a solitary bird.
凍てつく冬のさなか
モミの木の森を歩く
滝から姿を現したのは一羽の鳥
It lit on a damp rock,
and, as water swept stupidly on,
wrung from its own throat
supple, undammable song.
濡れた石の上で光ったそれは
水がただひたすらに流れるなか
声を絞り出して歌ったのだ
柔らかで無垢な歌を
It isn't mine to give.
I can't coax this bird to my hand
that knows the depth of the river
yet sings of it on land.
それは私にはできないこと
この鳥を私の手に引き寄せることもできない
川の深さを知りながら
陸で歌うこの鳥を
Poetry Foundation
静かな冬の森の風景が浮かぶ、スコットランドの詩人 キャスリーン・ジェイミ―の作品。「浸すもの、ひしゃく」などの意味を持つ dipper は水に潜る鳥という意味でも使われます。日本語では「カワガラス」を指して使われることが多いです。
Dream ―Langston Hughes
Hold fast to dreams
For if dreams die
Life is a broken-winged bird
That cannot fly.
Hold fast to dreams
For when dreams go
Life is a barren field
Frozen with snow.
夢をあきらめないで
夢を失った人生は翼の折れた飛べない鳥のようなもの
夢をあきらめないで
夢を失った人生は雪に凍てつく荒野のようなもの
Poetry Foundation
アフリカ系アメリカ人の詩人・小説家であるラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)による作品です。一年を振り返り新たな心持ちで新年を迎えようとする時期に、励ましをもらえる気がしませんか。
冬に読みたい英語の俳句
5・7・5という独特のリズムで表現する日本の「俳句」は、英語でも haiku として海外の教科書にも載っているほどです。日本語の俳句のニュアンスを英語で伝えるために、どんな工夫がされているかにも注目しながら楽しんでください。
これがまあ終(つひ)の栖(すみか)か雪五尺 ―小林一茶
Well, this is
My final abode.
The snow lay 15 meter.
「これがまあ」の英訳にあてられている Well は意味もリズムもぴったり。ユーモラスな響きも持つ「すみか」という言葉のニュアンスは abode という英語の文語でうまく表現されています。「5尺」の長さもちゃんと換算されていますね。1尺は約30cmです。
道あるに 雪の中行く 童かな ―村上鬼城
Although there is the road,
The child walks
In the snow.
文学作品の和訳は必ずしも文章に忠実に訳せばよいとは限りません。自然な文章になるよう、日本語版と英語版ではあえて語順が変更されていますね。日本語の原文より英語で読む方が意味がわかりやすくなる、こういったケースもあります。
遠山に 日の当たりたる 枯野かな ―高浜虚子
The distant mountain
Catch the sun.
The desolate field.
明治時代の俳人・高浜虚子の代表作です。遠い(distant)山、太陽(sun)の明るさ、荒涼とした寂しさ(desolate)の対比が味わいになっています。
宿かせと 刀投げ出す 吹雪かな ―与謝蕪村
“Put me up for a night!”
He threw the katana.
It is a snow storm.
オリジナルのニュアンスを伝えるため、英語訳では感嘆符「!」も使われていますよ。また、意味を適切に伝えるため日本語版には含まれていない主語(He)が挿入されています。
英語のポエムで冬を楽しもう
英語のポエム、いかがでしたでしょうか。
子供向けのシンプルな詩から古い表現がたくさん入った古典詩まで、さまざまなポエムが存在します。気分によって選んでみるとよいでしょう。小説などより短いので、辞書を引きながらでもそれほど苦にはならないはずです。
また、日本の作品の英訳版も思いのほか多いので、どんな訳になっているのか比べてみると楽しい発見や気付きがあると思いますよ!