masa osada
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アジアやヨーロッパを旅行すると、お互いの母国語を使わずに、“英語” を共通語として会話する機会があります。そんなときは、たとえ英語が得意な人でも、どう伝えれば良いのか悩んでしまうことがあります。
実は、話し相手が英語のネイティブでない場合、アメリカ人やイギリス人と話すときとは少し違ったポイントを押さえるだけで、コミュニケーションがグッと楽になるんです。
今回は、英語がネイティブでない人との会話がスムーズになる「グロービッシュ」の実践方法をご紹介します。
まず初めに「グロービッシュ」について簡単に説明したいと思います。
「グロービッシュ」とは、“Global English” の略。英語で書く場合は “Globish” と綴ります。
“Global English” という単語からもわかるとおり、「アメリカ英語」や「イギリス英語」といった地域性や文化的背景がある英語ではなく、「世界中どこに行っても使える、主に英語をネイティブとしない人たちのための英語」を指します。
もともとはフランスのビジネスマン、ジャン=ポール ネリエールが1990年台後半に提唱しました。使う単語を制限し、複雑な文法はできるだけ使わず、短いセンテンスで抑えます。そのため英語がネイティブでない人にも習得しやすく、また非常にわかりやすいのが特徴です。
それでは、「グロービッシュ」のもう少し詳しい説明とともに、非ネイティブの人ともスムーズに会話をするコツを見ていきましょう。
一般的に英語は、重要単語1000語で日常会話の7割、2000語覚えていれば8割を理解できると言われています。そして、もし6000語を覚えたとしてもカバーできるのは9割程度とされており、2000語の状態から4000語を追加しても、理解度は1割しか増えないのです。
つまり、基礎となる単語さえある程度(1000〜2000語)覚えておけば、日常生活や旅行で遭遇するたいていのシチュエーションは乗り切ることができるのです。
グロービッシュでは、中学校を卒業するときに覚えている(はずの)英単語数と同じ、1500語だけを使います。そのため難しい言葉は極力使わず、簡単な単語に言い換えて表現していきます。
例えば 「叔父さん」を友人に紹介するとき、“uncle” という単語を知らなかったとします。そんなとき、グロービッシュではこんなふうに言います。
「彼は私の叔父です」
「彼は私の叔父です」
これならば相手が “uncle” という単語を知らなくても、紹介された人の続柄がすぐにわかります。
他にも、「彼らに返金してほしいと言った」と英語で言いたいとき、「返金する」という意味の “refund” を使わずにもっと簡単な言い回しで表現します。
「彼らに返金してほしいと言った」
「彼らに返金してほしいと言った」
学校の英語の授業で、多くの人が頭を抱えるのが “文法” です。
「受動態」や「現在完了進行形」など、思い出しただけでも目眩いがする人もいるかもしれません。
非ネイティブの人と話すことを目的としたグロービッシュでは、受動態や関係代名詞を必要以上に使った長い表現はしません。
【SVC(主語+動詞+補語)】【SVO(主語+動詞+目的語)】【SVOO(主語+動詞+目的語+目的語)】を主体とした、とてもシンプルな文章で会話します。
「私はパン屋です」
She is cute.
「彼女はかわいい」
They were surprised.
「彼らは驚いた」
「僕の先生はチャンスをくれた」
I bought an apple.
「昨日、リンゴを1つ買いました」
「僕の先生はチャンスをくれた」
I sent him a postcard.
「彼にポストカードを送った」
また、「現在完了進行形」などのわかりにくい文法も使う必要はありません。主に使われる時制は、以下の6つのみです。
どの文法も時制も、基礎中の基礎ですね。
これらのシンプルな表現を使うことで、非ネイティブ同士でも余計な誤解や勘違いを避けることができるんです。
話す側や聞く側の英語レベルによって、時には文法を無視した方がコミュニケーションがスムーズになることもあります。
例えば、アジア圏を旅行中にトイレの場所を聞きたいときは、“Could you please tell me where the toilet is?(トイレの場所を教えていただけませんか?)” と丁寧に聞くよりも、
こう聞くほうが相手にわかってもらえる場合があります。
また、値段を聞くときも商品を指さしながら “How much this?” と聞いたり、値切りたいときに “more cheap?” と聞くなど、非ネイティブ同士の会話の場合には、相手に自分の意志を伝えることができれば多少文法が間違っていても全く問題ありません。
ネイティブでない人と英語で話すとき、文法や時制をシンプルにすることと同じくらい大切なのは、「英語のしゃべり方」です。
多くの英語学習者は、自分がきちんと “TH” や “L” と “R” などを正しく発音できるか気にしています。
ところが、実は非ネイティブの人と話すときに限っては、発音の正確さはそんなに大切ではありません。それよりも大切なのは「単語一つひとつのアクセント」です。
なぜかというと、多くの日本人が細かな発音まで聞き取れないのと同じで、話し相手も一つひとつの音まで正確に聞き分けられていません。つまり、もしあなたが正確に “TH” と発音できたとしても、相手は聞き取れていないかもしれないんです。
そのため、正確な発音に注力するのではなく、誰もが聞き分けられる「単語一つひとつのアクセント」を意識する必要があります。
特に日本人は英語のしゃべり方に抑揚がなく、聞き取ってもらえないことがよくあります。さらに英語を話し慣れていない人ほど声が小さくなってしまうので、なおさら意識する必要があるのです。
少しやり過ぎなくらい大げさにアクセントを強くしたり、声を大きくしてみたりすることで、相手にも聞き取ってもらいやすくなりますよ。
日本人同士でも、大人が子どもに「それは泣き面に蜂だったね」や「盆と正月が一緒に来たような賑やかさだね」とは言いませんよね。
同じように、英語の非ネイティブ同士での会話でも、「泣き面に蜂」や「盆と正月が一緒に来たよう」などの小難しい慣用句や比喩表現は極力避けた方がベターです。
例えば、長々と的を射ない話をしている人に向かって “Could you cut to the chase?(要点を言ってくれますか?)” と聞いても、“cut to the chase(要点を言う、本題に入る)” という慣用句の意味を知らなければ、相手には伝わらないのです。
かわりに、
こう聞く方が、よっぽど相手にも伝わるでしょう。
慣用句や比喩表現は、相手の年齢、国や地域、そして文化的な背景などと密接な繋がりがあります。そのためお互いが非ネイティブ同士の場合、理解してもらえないこともあるのでできるだけ使わないようにしましょう。
いかがでしたか? 今回は、非ネイティブの人と英語で会話をするときのコツを5つご紹介しました。どれも決して難しくなく、今日からすぐに使えるものばかりです。
「英語の勉強」というと、どうしても難しい単語や文法を覚えなければならないイメージがあります。でも、実際は中学英語レベルの語彙数と文法、そしてちょっとしたコツさえ掴んでいれば、ほとんどのシチュエーションを英語で乗りきることができるんです。
海外旅行や外国人の友だちとちょっとした会話を楽しみたいと思っている方! まずは、今回ご紹介した5つのコツを意識しながら、英語学習に取り組んでみてくださいね。