価値観ベースでの意思決定!エストニアで起業を果たした齋藤アレックス剛太さん

ヨーロッパ・バルト三国の北端に位置する小国・エストニア

 
九州・沖縄県ほどの面積に人口約132万人が暮らすエストニアは、実は500社以上のスタートアップを抱える世界有数のIT立国

さらに、エストニアは電子投票など、行政サービスの99%がオンラインで完結する「電子政府」としても名高い国で、*「e-Residency(電子居住権プログラム)」といった新しいシステムも次々と生まれています。

今回のインタビューでは、「20歳までは英語に苦手意識があった」と語りながらも、DMM英会話を通じて外国人と話すことに慣れ、現在25歳という若さで、エストニアで事業を立ち上げている齋藤アレックス剛太さんにお話を伺いました。

* e-Residency:外国人がエストニアの電子国民になれる制度。取得すれば、日本にいながらエストニアに会社を設立できたり、銀行口座を開設することもできる。

 

人生の転機は20歳のときのアメリカ一人旅

ー 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。

齋藤アレックス剛太です。母方の家族が日系アメリカ人なので、"Alex"という名前ですが、僕自身は東京生まれ東京育ち。学校以外で特別に英語の勉強をしていたわけでもなかったので、20歳くらいまでは英語に苦手意識がありました。

母は英語がペラペラだったので、僕が英語で話すとよく文法の間違いなどを指摘されて(笑)。家系がアメリカ系であるからこそのコンプレックスですね。

 

ー なるほど、そのコンプレックスを払拭したのは何だったのでしょうか?

20歳のときのアメリカ一人旅です。これは僕の人生の転機でもありました。

旅のきっかけは、お世話になっていたお兄ちゃん的存在の方が世界一周旅行に出ていておもしろそうだなと思ったのと、アメリカの音楽に興味があったから。当時は学校以外で英語を勉強したこともなく、単語単語で話すような英語でしたが、それでも案外通じたんです。この旅を通して、完璧な英語じゃなくても伝わるんだ!と気づき、逆に英語を勉強するモチベーションが湧きました。

学校で座って行う英語学習よりも、実際に使った方が英語力が伸びた感覚があったので、「毎日英語を話す機会を作ろう!」と思い、帰国後にDMM英会話を始めました。

 
ー 旅を終えてからDMM英会話を始められたんですね。どのように利用していたのでしょうか?

最初は「デイリーニュース」教材をよく使っていました。スピーキングだけでなく、まとまった英文を読む練習もしたかった僕にとって、ぴったりな教材でしたね。しかし、半年くらい経つと、割と読めるようになってきた感覚と同時に、少し飽きの気持ちも出てきてしまいました。

そしてその頃、生活リズムを朝型にしたいなと思い始めまして。「人と約束すれば起きられる」心理を活かし、朝6時にDMM英会話を予約するようになりました。モーニングコールのようなイメージですね(笑)。

その頃は教材で学習というよりも、ヨーロッパの講師を中心にフリートークをしていました。今思えば、それがヨーロッパに興味を持つきっかけになっていたのかもしれません。

 

ー DMM英会話以外でも英語学習をされていましたか?

ちょうど就活に重なる時期だったので、TOEICスコアを上げるため、文法やボキャブラリーなどのTOEIC対策を中心に勉強していました。

最初は650点でしたが、文法とボキャブラリーの学習とDMM英会話で自然と鍛えられたリスニングで、最終的には900点くらいになりました。

そのうち、DMM英会話で毎日話していると、だんだん英語で話すことに抵抗がなくなり、それにプラスして僕自身旅が好きだったので、日本へ旅行に来ている外国人観光客ともよく話すようになりました。

オンラインで学んだ英語がオフラインでも使える!と実感でき、英語力が飛躍した気がします。

 

世界一周中に気づいた自分の価値観

ー その後、大学を卒業されてからは英語との関わりはどうだったのでしょうか?

内定をもらい、就活が終わってからはTOEICのスコアを上げる必要もなくなり、一旦英語学習からは離れました。

そして内定先が外資系で、入社時期が10月だったので、大学卒業〜入社までの半年間、世界一周することに決めました。その直前はDMM英会話で「トラベル英会話」を学習していましたね。

 
ー 世界一周はいかがでしたか?

自分と徹底的に向き合うことができ、自分の価値観を明確に可視化することができた非常に大きな経験でした。

でも実は、インドで野犬に噛まれたことをきっかけに、世界一周を中断して、一旦日本に戻ってきたんです。

 

ー なんと!それはまた大きな決断でしたね。

旅を通して、本当の自分の気持ちに徹底的に向き合ったことでできた決断でした。

僕自身、日本に帰らずに地球を一周することが「世界一周」だと思っていたので、正直かなり迷いました。

ただ、狂犬病の恐怖が脳裏でちらつく中で、改めて「僕は今何がしたい?」と考えたときに「日本に帰って一回落ち着きたい」と思ったんです。で、それを阻害するものは何だって考えたとき、「自分のつまらないプライド」だと気づいて。世界一周を途中で辞めても誰も文句は言わないし、言われる筋合いもないな、と。

 

ー なるほど…。大きな決断をするときは、自分の本心が見えづらくなりがちですよね。

特に東京にいると、色んな人から色んなことを言ってもらえる反面、「本当にそれって自分がやりたいことだったんだっけ?」と突き詰めて考える機会をなかなか持てないですよね。僕は世界一周を通して徹底的に自分と向き合い、自分が大事にしている価値観10個を明確に視覚化することができました。

この経験は僕の人生において、大きな意味があったと思っています。

 

ー 旅を通じてアレックスさんが見つけられたご自身の価値観について、具体的に教えていただけますか?

▲アレックスさんの価値観チェックリスト

例えば、「スキルが成長している」という価値観。これは世界一周の終盤に「スキルが停滞している」と感じたことで気づいたものです。仕事もせず、ただ旅をする中で、自分のスキルが停滞していることにとても違和感を覚えて。このことから「自分はスキルが成長している状況に価値を感じるんだ」と気づきました。

他にも、「身体的・精神的に健康」というのが価値観リストのトップにありますが、これは旅を通して様々な環境に移動する中で浮かび上がったものです。インドで犬に噛まれたときは、身体的ダメージはもちろん、「インドの医療って大丈夫?そもそもどこに電話すれば?」と非常に不安になりました。普通に健康でいられる環境の重要さに改めて気づいた経験でしたね。

今も、Google Formで「価値観チェックリスト」を作って、定期的に自分の状態をチェックしています。自分の状態を可視化してトラックすることで、コンディションが悪いなと感じるときも、客観的に次のアクションにつなげることができます。

 

エストニアとの偶然の出会い

ー 続いて、エストニアに行こうと思ったきっかけについて教えてください。

旅を終えて帰国し、社会人として働き始めました。しかし、仕事で英語を使う機会がほぼない中、海外に行きたい気持ちが強くなり、2年勤めた後に転職を決めました。そして、転職の合間の3ヶ月でまたどこか海外に行こうと思ったんです。

最初は東南アジアに行こうと思っていたのですが、ちょうど雨季のタイミングで「気候が良いところにいる」という自分の価値観に合っていませんでした。そこで別の国にしようと色々調べていたときに、ふと友人から「エストニア」という国を聞いて。

初めて聞いた国名だったのですが、調べてみると「面白そうだな」と思い、気候も良さそうだったので、2時間でエストニアに行くことを決めました(笑)。

 
ー 本当に偶然だったんですね!エストニアでは何をされていたのですか?

既に旅をたくさんしていたので、今度は同じ場所に一定期間留まり狭く深くその土地を知りたいと思い、インターンをすることにしました。そこで出会ったのが2018年6月〜2019年2月まで働いていた、前職であるオンラインの本人確認サービスのスタートアップ「Veriff」でした。

それまでも英語の勉強や旅はしていましたが、ビジネスで英語を使ったことはなく、英語で面接するのももちろん初めてだったので、面接はとても緊張しましたね。

 

ー 海外の面接と日本の面接で大きく違った点はありましたか?

日本の場合、特に若手の採用の場合は「スキル」よりも「伸びしろ」が見られると思うんです。しかし海外では、若手であってもその時点で持っている「スキル」が見られる。自分のスキルをちゃんと言語化して、かつこれまでの実績と結び付けて説明することが求められるのが、一番の大きな違いだと感じました。

僕の場合はコンサル経験が2年あったので、「ドキュメンテーション」や「ロジカルシンキング」が得意だと自覚していて。ただ話すよりも資料に落とした方が伝わりやすいと思い、これまでの経験や実績についてPowerPointの資料にまとめました。
 

ー 「Veriff」でのお仕事はどうでしたか?

エストニアは意思のある人にはすごくwelcomeで、色んな人を紹介してもらうこともでき、早く溶け込むことができました。そして、2週間限定のインターンのつもりが、なんと正社員のオファーもいただくことができたんです。

日本での転職先も既に決まっている状況だったので、かなり悩みましたが、この判断においても、世界一周中に明確にした自分の価値観とまず照らし合わせてみました。そこで、長期的に考えると今はエストニアに残るべきだと判断し、エストニア移住を決意しました。

Veriffでは、尊敬できる上司に恵まれながら、エキサイティングな環境で仕事をしていましたね。

 
ー 現在はエストニアでどういったお仕事をされているのでしょうか?

現在はVeriffを退職し、日本人の共同創業者と、オンラインでの法人登記や銀行口座の開設サポートという、事業設立にあたって必須となるプロセスを支援する「SetGo」というサービスを立ち上げたところです。

エストニアには「e-Residency」という便利な枠組みがあります。これは、これから増えていくであろうグローバルなフリーランサー/ノマドワーカーが活用できる素晴らしい枠組みです。でもこんな便利な制度がありながらも、まだまだ日本では十分に認知されておらず、活用事例もなかなか増えていません。

エストニアにいる日本人として、これは大きな課題だと感じ、情報の非対称性を解消するために「SetGo」を設立しました。法人登記を支援するだけではなく、弁護士や税理士など、エストニアでのローカルなサポートが必要なときは、マッチングしてサポートを受けられるような仕組みを整えています。

 

英語学習も自分の価値観を活かして

ー 若くして様々なチャレンジをされているアレックスさん。今後のビジョンを教えてください。

まずは「SetGo」を事業として一つの形にしていきたいです。この事業を通して、世界中どこからでも、e-Residencyを通した法人登記・事業運営を円滑にできるようにしたいですね。

というのも、僕自身エストニアでの暮らしが、今の自分の価値観に合致していると思っていて。「時間的に余裕がある」「身体的に健康である」といった価値観が満たされ、自分のやりたいことに120%集中できている。エストニアに残る、という決断は納得感を持ってできたので、エストニアをベースにちゃんと事業をやっていきたいです。

ただ、僕は東京もすごく好きなんですよ。25年暮らしてきた街でもありますし。そんなエストニアも日本もどちらも大好きな僕が、エストニアと日本の架け橋になって、日本で暮らす方々にエストニアという選択肢を提示することができれば、これほど素晴らしいことはないですね。

 

ー 最後に、英語学習を頑張る読者のみなさまにメッセージをお願いします!

大事なのは、いかに「自分を楽しませるか」という視点だと思います。英語学習を努力や勉強だと思ったら続かないと思っていて。例えば、人と話すことが好きな僕にとっては、DMM英会話でのフリートークはもはや勉強ではなく、モーニングコールのような認識。

TOEICが900点に伸びたという結果も、「勉強」と考えてイヤイヤやっていたら出なかったと思うんです。勉強と思わず、いかに「自分を楽しませられるか」という観点で英語学習を組み立ててみてください。

そういう意味でも、自分自身に向き合ってみて、自分が大切にしている「価値観」を炙り出してみるのはおすすめです!

 

ー ありがとうございました!

 

おわりに

「価値観」という言葉が頻出した今回のインタビュー。

人生における大きな意思決定の場においても、英語学習という1つの取り組みにおいても、自分が心から納得できる判断をするための「価値観」を明確にすることの大切さを、筆者自身も改めて感じました。

自分と向き合い、価値観を明確にする秘訣を聞いたところ、アレックスさんはその時々に感じたことをこまめにメモに取っているとのこと。世界一周中に取っていたリアルなメモも見せてくれました。

英語学習も、自分の価値観に合ったものが最も楽しく、続きやすいもの。みなさんもぜひ一度、ご自身の価値観に向き合ってみてはいかがでしょうか。