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全盲のスイマー・木村敬一選手が英語を身につけた先に見る未来【ユーザーインタビュー Vol.19】

全盲のスイマー・木村敬一選手が英語を身につけた先に見る未来【ユーザーインタビュー Vol.19】

スイマー・木村敬一選手は、先天性の疾患により生まれつき目が見えない。

10歳の時に水泳を始め、これまでに障がい者の国際競技大会で複数のメダルを獲得。今もなお現役で活躍する一流のトップアスリートである。

そして、木村選手には水泳の他にもう一つチャレンジしているものがある。

それが、“英語”だ。

英語習得のため、視覚障がい者用の点字パソコンを使い DMM英会話のレッスンを受講している。

今回、DMM 英会話ブログ編集部は木村選手が所属する東京ガス本社を訪問し、競技人生から英語学習を始めたきっかけ、思い出に残ったレッスンでのエピソードまで、さまざまな話を聞くことができた。

アスリートとして世界に出たとき、世界のライバルとの差を埋めるために英語の必要性を感じたと言うが、視覚障がいを抱えるアスリートならではの理由とは?

初の海外試合で感じたもの

ー 水泳を始めたきっかけについて教えてください。

水泳を始めたのは10歳、小学校4年生の時です。もともと運動が好きで動き回るタイプの子どもだったようなのですが、先天的な障がいで生まれつき目が見えていなかったので、転んだりぶつかったりして怪我することが多かったんですね。

それで母親が心配しまして、どうしたら思いっきり動いても安全かなと考えた時に、障害物のないプールがいいんじゃないかということで近くのスイミングスクールに通い始めました。

ー 始めた当初から、水泳を楽しいなって思えたのですか?
また、練習がいやになったことはありませんでしたか?

楽しいとかは特になかったのですが、最初は全然泳げなかったわけですから、少しずつできることが増えていく楽しさはあったと思います。

練習がいやになったこともありましたけど、心から水泳をやめようと思ったことはなかったです。

ー 世界大会などを目指すようになったのはいつ頃でしたか?

生まれは滋賀なんですが、中学校に上がるのを機に一人で上京しました。

そこでハードに練習したりとか、同じ視覚障がいを持った方でパラリンピックを目指している仲間と出会ったりとか、また自分自身の記録が上がっていく中で、少しずつ、なんとなくですけど、世界を意識するようになったのだと思います。

ー 試合で初めて海外に行かれたのは?

中学校3年生で14歳の時です。視覚障がいを持ったジュニアの世界大会がアメリカであり、10日間ほど滞在しました。

ー アメリカ行きが決まった時はどんな気持ちでしたか?

もちろん初海外でしたし、何もかもが初めてだらけだったので、どうしたらいいか分からなかったですよね。荷物も何を持って行っていいのか分からないし(笑)。

ー そうですよね(笑)。
実際に行かれてみてどうでしたか?

競技面では、試合を通して自分よりも速い選手がたくさんいるのを目の当たりにして、衝撃的と言うか「やっぱり世界の人達は速いんだな」と思いましたね。

生活面では、全く違うものだというのはある程度覚悟して行ってましたし、そんなに驚くほどの違いを感じることはありませんでしたが、「なるほどね」という感じで想定内ではありました(笑)。

強くなるためには英語が必要だった

ー その時は英語への事前準備はされていましたか?

いえ、全然していなかったです。中学校の授業を受けていたぐらいですね。

その時は日本のチームのみんなと行動していたので、英語を話す機会もほとんどありませんでした。

ー 現在は英語を頑張っていらっしゃると思うんですが、きっかけは何だったのでしょうか?

英語を喋れなかったとしても試合で困ることはないのですが、選手同士のコミュニケーションは自力でやる必要があって。

パラリンピックは選手の人数が少ないので、日本人の中で自分よりも速くて強い選手を見つけるのって簡単ではないんですよね。だから、もっと速くなるためにはどうすればいいんだろうなって考えた時に、自分よりも速い海外の選手のことを知らないといけないんだなと思ったんです。

となると、やはりどうしても言葉の壁があるので、それを乗り越えるために英語を勉強し始めました。

ー 自力で、外国人選手から強さの秘訣を聞き出し吸収する必要があったんですね。

そうですね。あとは単純に興味があったという部分もあります。日本の他のパラリンピックのアスリートたちが、どういう生活サイクルでどう競技と向き合っているのかという情報はいくらでも入ってくるのですが、海外の選手の場合はどうなってるんだろうなというのを知りたかったんですよね。

ー なるほど。
ちなみに、そうした気づきを得たのはいつくらいだったのですか?

ずっと思ってはいました。海外での試合が終わる度に「いつかは英語を勉強しよう」と思うのですが、3日ほど経ったら忘れて、また次の年に海外に行って同じことを思って忘れて…というのを繰り返していたんです。まあ、そんなもんですよね(笑)。

ー では、英語学習に本腰を入れ始めたのは?
また、DMM 英会話を始められたのはいつ頃でしたか?

英語学習をスタートしたのはリオパラリンピックが始まる前、2015年くらいだったと思います。DMM 英会話はちょうど1年くらい前に知って、それからですね。

当時は、学校で習った基本的な文法や単語は頭に入っていたのですが、会話は初心者でした。

ー DMM英会話の存在を知って、なぜ始めてみようと思ったのですか?

なんでだったかなあ。まずは無料体験レッスンを受けてみようかなと思って始めたところから、今日まで約2日に1回のペースで続いています。点字パソコンがあれば、レッスンの予約から受講まで問題なくできますよ。

議論が白熱して時間オーバー?思い出に残るレッスンエピソード

ー 最初にレッスンを受けられた時のことを聞かせてください。

講師選択の際にいろんな国の先生が出てきて、みんな英語喋れるんだと思うと、なんというか、単純に「すごいなー」と思ったのは覚えています。中には知らない国の先生もいたりして。

レッスンが始まると、そこからはもう戦いなので(笑)。

ー 誰しも最初のレッスンは不安になったり緊張したりすることが多いのですが、木村選手はそのあたりいかがでしたか?

緊張とかは特になかったのですが、少しでも話がわからなくなるともう修正がきかないというか、戻れなくなるんですよね。そして、ただただ話されていることを分かっているようなフリをして、時間が流れていくのを待つ…そのループにハマってしまった時のしんどさはありました(笑)。

なので、緊張するというよりは、レッスンに向けてかなり気合を入れて構えてはいます(笑)。

ー それは具体的に何か準備をされたりするのですか?

心の準備ですね。心の覚悟を決めています。

無駄に部屋を掃除したりして、出迎える準備をしていますね(笑)。目が見えないということをあらかじめ先生には伝えてあって、ビデオは切っていますし掃除しなくてもいいんですけど…心を落ち着けるためのルーティンのような感じです。

ー 面白いですね(笑)。
レッスンではフリートークをすることが多いですか?

そうですね。先生の国のことやスポーツの話など、話す内容はある程度準備しておきます。

最近は自分の身の回りで起きたことなどを友達に話すような感覚で英語を話せるようになりたくて、「これは英語で何て言うんだろうな」というのを事前に調べて準備をしレッスンに挑むようにしています。予習していた単語とは全然違う単語で返ってきたりして心が折れることもありますが(笑)。

ー フリートークで何を話すのかを準備しておくのは大事なことですよね。
思い出に残っているレッスンのエピソードがあれば教えてください。

セルビアで自閉症の子どもの支援をしている先生とのレッスンですね。自分も大学院で障がい児教育を専攻していたので話題としても戦えたと言うか、けっこうな議論をすることができて、それは大きな自信になったかなと思います。

他には、エジプト人の先生とずっとウエイトトレーニングの話をしていて、「俺はこの種目を◯◯キロ上げたんだ」っていうのを、ただお互い自慢し合うというだけのレッスンもありました(笑)。向こうも全然折れないんですよね。「こっちだったらもっと上がるんだけどなあ」みたいな(笑)。

ー そこは負けられない戦いだったんですね(笑)。

はい(笑)。
あとは、ある男性の先生と結婚についての話になった時に、レッスン時間をオーバーしていたのですが、「頼む! もうちょっと喋ってくれ!」って言われたことがあります(笑)。

ー え、どれだけアツイ議論だったんだろう、気になる…(笑)。
DMM 英会話の他にも何か英語学習をされていますか?

大学受験の時から使っている英単語帳『DUO3.0』で語彙を増やす勉強をしています。

以前に英語のニュースやポッドキャストのリスニングにも挑戦したのですが、やっていて思ったのが、知らない単語は聞こえないんですよね。なので今は単語帳で語彙をインプットして、オンラインでアウトプットするようにしています。

英語はチャレンジする価値がある

ー 今後に関して、まずは英語の目標について教えてください。

少なくとも日常会話に困らないくらいにはなりたいですし、海外の選手からどんどん情報を得られるくらいの英語力が欲しいなと思います。

これまでは他の選手と英語で話すことがあっても挨拶程度だったので、今後は挨拶を越えて、もっと深い話をできるよう頑張りたいです。

ー 続いて、水泳選手としての目標をお願いします。

英語で情報が入ってくることで、きっとトレーニングの質などを変えていけると思うので、それによってパフォーマンスも上げていけると思っています。

具体的にどの大会でどうしたいというよりは、少しずつでも強くなっていきたいですね。

ー では最後に、英語学習を頑張る読者の方に向けて一言メッセージをお願いします。

世の中に溢れる情報を言葉が理由で集めきれないというのは、すごくもったいないことだなあと思います。

でも、その壁は頑張れば突破できるものだと思いますし、自分だけではどうしようもできないものでもないので、チャンスがある限りはチャレンジする価値があるんじゃないかなと思います。頑張ってください!

ー ありがとうございました!

おわりに

ときおり笑いが起こるなど、終始和やかなムードで進んだ今回のインタビュー。

木村選手の明るく前向きな言葉や姿勢に、私たちもたくさんのエネルギーと勇気をもらうことができました。

またお話を聞く中で、目的や目標設定の大切さ、英語を習得した先をどれだけ鮮明にイメージできるかが、学習を継続する上で重要だということに改めて気付かされました。

今後も DMM 英会話は、木村選手の英語への挑戦、世界への挑戦を応援していきます!