”クーリエ・ジャポン” 編集長 冨倉由樹央さんインタビュー「世界に出ていくために必要なことと、未来へのヒント」


冨倉 由樹央
世界標準マガジン COURRiER JAPON クーリエ・ジャポン編集長
愛知県出身。1996年に講談社に入社。翻訳書籍やノンフィクションを中心に編集を担当した後、2004年に米国の大手出版社ランダムハウス社に出向、1年間ニューヨークで勤務。2005年に帰国し、創刊前の『クーリエ・ジャポン』編集部に異動。2010年2月より編集長(2代目)に就任し、現在に至る。猫と野球、お酒好きな一面も。

    "The New York Times" "The Wall Street Journal" "TIME" など名だたるメディアをはじめ、世界1500メディアから厳選された情報を掲載する、
    日本発の世界標準マガジン「COURRiER JAPON クーリエ・ジャポン

    今回DMM英会話ブログ編集部は、「COURRiER JAPON クーリエ・ジャポン」編集長 冨倉由樹央さんに「私たちが世界に出ていくために必要なことは何か?」について教えていただくため、体当たりでコンタクトを取りインタビューを実施いたしました。

    アメリカ大手出版社勤務時代を含め、長年情報の洪水を束ね発信してきた冨倉さんの元へ今なお流れ込む世界の情報の中から要点を取り出し、聞かせてくれた
    「今、私たちに本当に必要なこと」

    『世界の「今」を知りたい人のために、最上の知的興奮を届ける』
    というミッションを遂行し続ける冨倉さんご自身のアメリカでの経験や、世界から見た日本の現状とこれから生きて行くための考え方などを
    ゆっくりじっくり語っていただきました。
    世界中の都市や街で活躍する姿を思い描きながら、刮目してお読みください。

    《トピック》
    ・世界に出る、世界で生きる、とは
    ・成功しているのが"普通の人"だからこそ、勇気をもらえる
    ・英語力の前に、世界に出るために必要なこと
    ・これからの日本と世界と、未来へのヒント
    ・インタビューを終えて「世界にポジティブであること」

    富倉さん

    世界に出る、世界で生きる、について

    「世界に出るや、世界で生きる」とは冨倉さんにとってどのようなものですか?

    国境とか言語とか、そういった制約に縛られずに自分がやりたいことをして、行きたいところに行く、ということが「世界に生きる」ということの理想形だと思います。
    例えば平日はロンドンで働き、週末はパリやニューヨークで買い物をする、とか。
    まあ、それはちょっと極端なたとえかもしれませんが、そういうイメージです。

    「自分は日本人だから日本にしか仕事はないし、日本にしか住めない」と決めつけてしまうのは、もったいないなって思うんです。

    日本人としてのアイデンティティを捨てろとかそういう話ではく、
    日本で生まれたからって日本でしか活躍できないなんていうのはもったいない。

    世界は広いですから。

    自分たちを縛るものを意識せずに生きていけたらいいなと思いますし、世界に出たいと考える人たちの背中を押してあげたい。

    これはクーリエ・ジャポンのテーマでもあります。

    成功しているのが”普通の人”だからこそ、勇気をもらえる

    迷っている人たちの背中を押したい

    現実問題として、例えば会社に勤めている人が突然
    「ちょっと世界に行きたいから、会社辞めて明日から行こう」
    なんて、なかなかできないじゃないですか。

    でも心の中でそういう機会があったらいいなと考えている人たちはとても多いと思うんです。

    その人たちの背中を押す、というイメージを持ってクーリエ・ジャポンを編集しています。

    ただ、世界に出たからといって必ず成功できるとは限らないし、ビジネスだって失敗するかもしれない。
    それなのに無責任に、「日本はダメで、日本に閉じこもっていたらこれからもうどうしようもなくなるから早く世界に行きなさい」
    と、けしかけるような雑誌作りは不誠実だと思っています。

    日本で生きる人たちにはもちろん、幸せに生きてほしいと思います。

    でももし、心の中に世界を目指す気持ちがあるんだったら、
    「世界ってこれだけ広くてこんなライフスタイルがあるんだよ」
    「実際に海外に行った日本人ってこんな生活をしてるんだよ」
    というのを見せてあげることで、迷っている人の背中を押せたらいいなと思っています。

    クーリエ・ジャポンの特徴

    スポーツ選手だとか、音楽家だとか、特殊な才能を持っている人が活躍しているのは、普通の日本人にとってあまり参考にならないと僕は思っていて。

    世界にライバルがあまりいないような、特別な才能を持っている人が活躍できるのは当然じゃないですか。
    その才能の部分には、人の何倍も努力できるということも含まれていて。

    例えば、クーリエ・ジャポンでは以前、日本の有名IT企業を辞めて、ベトナムでピザ屋さんを始めた方のストーリーを掲載したことがあります。そのピザ屋さんは今、大繁盛しているんですが、そんな話に僕は勇気をもらえるんです。

    ベトナムの経済成長の可能性を信じ、「ここなら本格的なナポリスタイルのピザを出しても成功できる」と考えて、思い切って海を渡る。
    普通の人がしっかりと計画して、度胸を武器に勝負して、ちゃんと勝っているというストーリーを届けたい。

    そんなストーリーを発信することが、クーリエ・ジャポンの特徴の一つです。

    富倉さん

    世界に出るために必要なこと

    世界に出て働くということは、とても大変なことですよね。冨倉さんご自身は大変だったことなどはありますか?

    アメリカのランダムハウスという出版社に出向して一年間ニューヨークで働いたことがあったのですが、本当に大変でした…。

    当時、編集者のキャリアとしては10年にも満たなかったんですけれども、同じ業界なのでそこそこうまくやれるだろうと考えていました。でも、全然そんなことなかったです。

    日本と国外では、働き方も違うし思考法も違う。

    まずやっぱりショックだったのは言葉の壁でした。

    海外出張を何回も経験していたので、ビジネスの英会話ぐらいはこなせると思っていたんですけれども、
    本気で議論に加わるための英語力は全然足りてなかったです。

    特に会議。日本でも、気心が知れたチームの会議は、トップスピードで遠慮なく話しますよね。
    そのスピードについていけないんですよね。

    なんて言おうかって一生懸命頭の中で組み立てていると、もう遅い。
    反射で答えないと会話のリズムに乗れないし、疎外感も味わいました。

    もう一つは、日本でいうキャリア、つまり会社名や肩書きというものは自分について知ってもらうための情報にはならない、ということ。

    日本だと、「講談社の冨倉です。今、こんな仕事をしています」と言えばいいのですが、
    グローバルなビジネスの場においては、
    自分が何をしてきて、どんなことがやりたいか、ということがセットで自己紹介なんです。

    「あなたは何がしたいの? 何ができるの? 何をしてきたの?」
    と、自己発信力が常に問われます。

    「講談社の人間が来ましたよ、よろしく」では何にも始まらない。

    あなたは私たちに何ができるの? に対して、私たちはこれができる、と伝えることができてようやくビジネスが始まる。

    流暢な英語で「私は講談社から来ました。よろしくお願いします」と言うより、
    拙い英語でも「私は書籍の編集をしていて、こんな仕事を今までやってきて、こんなものに興味があって、アメリカでこんなことを学びたいと思っている」と言った方が
    絶対に仕事はうまくいきます。

    日本社会ではそれを曖昧にしても許されるので、戸惑ってしまうんですよね。

    1.自分を知ること

    世界に出るためには、英語力の前に、まず自分の現状や仕事を客観的に見ることが重要だと思います。
    自分は今こういうキャリアを目指していて、そのために今この仕事をしている、ということが自分の言葉で言えるように。

    日本国内で自己紹介をすると、会社や大学など、所属であったり属性を伝えるだけで終わってしまうことが多い。

    でもそれでは自分自身を全く語っていない。日本以外では通用しないんです。

    人それぞれのバックグラウンドがあって、もし専門的な職業だとしてもそれに対する思いは違っていて、それらを一つ一つ明確にすることで自分を伝えられる。

    英語は特に、そういった自己発信力に優れている言語だと感じました。
    日本語とちがって、論理的じゃないと英語にならないところがあります。

    日本語を英語に変換するときは、言いたいことを明確にしないと英語に移しにくいんです。
    英語を話そうとすること自体が、思考を明確化して自分を振り返るのに役立つと思います。

    英語がこれだけ世界中で多く使われているというのも、もちろんアメリカやイギリスの国力が歴史的に強かったことが大きいとは思いますが、文化的バックグランドが違う人が共通のベースを築くのに適した言語だという側面もあるんじゃないかと思うんです。

    2.議論に慣れる

    アメリカなどにはディベート文化が根付いてます。
    さまざまなバックグランドや立場を持つ人が集まった社会では、ディベートがないと前に進めません。
    ありとあらゆる考え方が存在するなかで、それぞれの考え方の違いを伝え、相互に納得できるポイントをディベートで探していくわけです。

    日本にも会議はありますが、日本人は会議が下手だと言われています。
    「空気を読む」だったり「上司の意見や指示には反論しない」などの暗黙のルールが想像以上にあるんです。

    海外のビジネスの現場に行くと、それぞれが違う文化を持っているために暗黙の了解というものは存在しません。
    自分がビジネスをどう成し遂げたいと思っているのか、なぜそのような意見を持つのか、ということをちゃんと説明できないといけないわけですよね。

    世界で生きていくなら、自分と全く違う立場の人と議論することや、育った文化が違う人と同席する環境に慣れておくことはとても大事だと思います。

    だれもが成功できる甘い世界ではないけれど、勝ち残ってる人というのは、自分をちゃんと主張し、外国の人にも負けないで交渉する力をちゃんと身に付けた人です。

    英語ももちろん大事ですが、まず自分を主張し議論する訓練をしておくのがいいと思います。
    海外で起業するような大それたチャレンジではなくても、
    例えば海外出張でちゃんと成果を残すというくらいのレベルの話であっても、そうした力は必要になりますから。

    富倉さん

    これからの日本と世界と、未来へのヒント

    隣にいる人が日本人でないことが普通になる

    日本も、これからもっとバラエティ豊かになっていくと思っています。

    今年の正月の夜、たまたま実家から早く帰ってきて、六本木のラーメン店「一風堂」に行ったんです。
    そこでカウンターに座ったら、カウンターに座っている他のお客さんが全員外国人で、うおおおっと思ったんですよ(笑)。

    おそらくロンリープラネットミシュランとかに載っていたのでしょうね。
    年末年始の旅行シーズンに日本にやってきた外国の人たちがラーメンを食べに来ていたんでしょうが、いや、これはすごいなと思って(笑)。
    だっていままで東京に暮らしていても、外国人の方と相席でラーメンを食べることってほとんどなかったじゃないですか。

    これからは同じように電車やバスの中で外国の人たちと相席になることは増えるし、カフェや居酒屋などでもそうなるでしょう。
    逆に言えば、ニューヨークやパリではすでにそれが当たり前のことであると思うと、ちょっと未来のヒントを得た気分になりました。

    東京も間違いなくこれからそういう都市になるんです。
    隣に座っている人がアジア系でなんとなく日本人に似ているけど日本人かどうかはわからない、ということが普通に起こるようになる。

    そう考えると、やっぱりコミュニケーションツールとして、英語はとても大事になってきますよね。
    自分の意思を伝えられるぐらいの英語力は持っておかなきゃいけないんじゃないでしょうか。

    クーリエ・ジャポンの未来像は?

    世界のことを扱っているメディアはたくさんありますが、最終的にやっぱり日本が一番だね、というものが意外と多いんです。
    「あの国は治安も悪いし食べ物も美味しくなさそうだな、良かった日本で。はい、おしまい」と、これでは結局なんの行動にもつながらない情報だと思うんですよ。
    日本の住みやすさや安心感も永久に続くと保証されたものではないですし。
    この恵まれている環境にいつまでもいていいんだよと言うより、やっぱりその外に出ていく勇気のある人たちの背中を押せるような雑誌でありたいし、
    読んだ人の「次の行動」を促すエネルギー源になりたい。

    何でもいいんです。それこそ、この国のことを知りたいから映画を見に行こう、次の旅行はここに行こうとか、この国の料理を食べようでもいいんです。
    ポジティブな行動につながるメッセージを伝えていきたい。

    そういう意味で究極的な理想としては、クーリエ・ジャポンは単なる雑誌という枠を越え、ポジティブな行動をする人たちのコミュニティーのパスポートみたいな存在になることを目指しています。
    もちろん今このままの形態でクーリエ・ジャポンが生き残っていけるとは思ってはいなくて、時代に合った形でサービスを考えていかなければならない。

    今でも読者の方が、色んなコミュニティーを作ってくれたり、雑誌の内容について語り合ってくれたりしています。とてもポジティブなことですよね。

    そのような、世界にポジティブに向き合っている人、世界で何か成し遂げたいと思っている人のアイコンになれたらいいなと思っています。

    ありがとうございました

    インタビューを終えて「世界にポジティブであること」

    冨倉さんが常に意識の中心に置いているのは、"読者"なのだろうとお話を伺いながら感じていました。

    読者といっても、クーリエ・ジャポンを購読している人だけでなく、
    クーリエ・ジャポンを読んだ人が他の人へ記事の話をする、など読者の何かしらの行動で間接的にその記事から得た情報が次の人に影響していくことを考えているのだろうと思いました。

    世界にポジティブである人が、準備をして計画して、
    勇気と度胸で世界に出て何かを始めると、そのストーリーがまた誰かの勇気になる。

    冨倉さんの作るクーリエ・ジャポンが世界にポジティブな行動の連鎖を生み出す発信源になっているのは間違いなさそうです。

    英語を学んで、世界に出ることには
    他の誰かの背中を押すというもう一つの価値にもなるのかもしれません。

    そう考えて、さらに英語学習が楽しくなりました。
    クーリエ・ジャポンと英語で、ますます世界を身近に、ポジティブに行動していきたいですね。