Doga
(更新)
こんにちは。
トロント在住のDoga(@DogadogaTv)です。
突然ですが、カナダと聞いてみなさんは何をイメージしますか?
メイプルシロップ、サーモン、大自然、ウィンタースポーツ・・・
それら全てカナダを代表するものなのですが、「多文化共生」という言葉を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか?
カナダは世界で初めて、国家の施策として多文化主義政策を開始したことで有名です。
現トルドー首相も、カナダの強みは「多様な文化の人たちが住んでいて多様性が高いこと」だと言っているほどに、国として多文化主義に真剣です。「外国人」である私でも、外国人であることを忘れるくらい普段の生活は多文化で溢れています。
今回は約1年半、実際にトロントに住んでいる私の視点から、カナダの強みと言われる「文化の多様性」が具体的にどのようなものなのかをご紹介します。
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私が住んでいる都市はカナダで最も人口の多い「トロント」。
人口は約279万人に及び、140種類以上もの言語や方言が話されています。また2014年のNational Postの記事では、トロント市民の51%が別の国を出自としていると報じられているほどに、この街は多様な文化で溢れています。
たしかに実生活でも、少し道を歩けば、肌の色の違う様々な文化的背景を持った人と出くわします。今では当たり前となってしまいましたが、私も移住当初はこの多様性に驚かされるばかりでした。
例えば、秋の肌寒いと感じる時期に半袖・半ズボンの人を見かけたり、暑い日に宗教的な理由でスカーフをかけていたり、白人なのでカナダ出身だと思ったら南アフリカ出身だったりと、自分の中でのあらゆる常識が更新されていくのを感じました。
カナダでは単に「白人」「黒人」「その他」という分け方ではなく、各々の文化的な出自を敬う姿勢が子供の頃から育まれてきているそうです。地域によって多少の差はあるかもしれませんが、少なくともトロントでは、アジア人だからといって見つめられたり、差別的な言葉を吐かれたりすることはほとんどありません。
むしろ「肌の色が違って当たり前」と感じてしまうほど、自然に各々の文化が溶け込んで成り立っているのがトロントという街であり、それを推進するカナダという国なのです。
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「文化」と言っても、今の時代もはや国や民族だけを指す言葉ではありません。カナダでの「文化」とは「ジェンダー」、「宗教」を含めた様々な要素を指す言葉なのです。つまり、人を構成する要素全てを「文化」と認識し、人としてその人を認めるというベクトルがこの国からは感じられます。
セクシャルマイノリティと言われる人たちの認識や理解を広げるための大規模な「Prideパレード」に、トルドー首相も参加するほどですし、職場の同僚、友人にゲイやレズビアンの方などがいるのもいたって普通なこと。私もこちらに長く住むようになり、この「文化」の境界が日本にいた頃に比べ、明らかに広がっていることを強く実感しています。
そのような多様なバックグラウンドを持つ人たちが集まる環境で暮らすことでどのような感性が養われるのか、私自身も考えたことがありました。
私の妻はカナダ生まれで日本で3年間暮らしていたのですが、日本で知らない人にジロジロ見られることに違和感を持っていたそうです。彼女は白人ですので、確かに「見た目」という観点だと目立ったでしょう。自分が逆の立場だったらどう思うか?という視点はとても重要で、私も日本人としてトロントへくれば何らかの偏見の目に晒されると最初は覚悟していました。
ただカナダは前述したように、多文化共生政策の上に成り立っている国。驚くことに、こちらに来てから外見や出自について嫌がらせを受けた経験は、今までほとんどありません。私自身が逆に拍子抜けをしたほどです。正直に言えば、違和感を覚えた経験はありますが、妻が経験したようなあからさまな嫌がらせは一度もありませんでした。
私はこちらに住むようになってから、見た目の違う人たちがこんなにもたくさんいて、かつ肌の色と出自が一致しないような環境であるからこそ、見た目だけで判断することがいかに不毛であるかということに気づかされました。
人はつい相手を分かりやすく把握するために、心の中で「カテゴリー」や「レッテル」を無意識的に貼ってしまいがちです。しかし、本当はその行為自体を疑う必要があり、カナダで暮らすということは、「偏見」や「差別」という行為を改めて考え直す良い機会だとも思っています。
隣国アメリカでトランプ新大統領の就任が決まった時、カナダ政府のイミグレーションサイトにアクセスが集中しサーバーが落ちた、というニュースは日本でも話題となりましたが、カナダはアメリカからだけでなく、世界中から広く移民を受け入れています。
必要な英語スコアと職務経験があれば永住権が発行されるプログラム(Express Entry)があったり、国単位でなく、州単位でも移民プログラム(州ノミネーションプログラム)が用意されていたり、シリア難民を公約の2万5000人を超えて受け入れ、引き続き率先して受け入れを続けていたりと、移民者や異なる背景を持つ人たちを積極的に受け入れようとする姿勢が、私を含め多くの外国人を魅了している理由だと思います。
また先進国で、汎用性のある英語を使って生活ができるという点も大きいはずです。
以下の、カナダ建国150周年を記念してトルドー首相が発した声明を観ると、改めてカナダが移民を積極的に受け入れ、その多様性をバネにして強くなっていく国であろうとしている、ということがよく理解できるのではないでしょうか。
当然、人種差別やジェンダー差別といった問題はゼロではなく、ニュースでこれらについて取り上げられているのもよく見かけます。
しかし、それほどまでに市民一人ひとりが「文化の多様性」に対して敏感に反応し、その多様性を尊重しようと努力するカナダは、一外国人である私たちからしても大変ありがたい環境であると言えるのではないでしょうか?
国として「多文化主義政策」を掲げているように、実生活においても文化の多様性や共存が上手く進んでいるように見える国、カナダ。
もちろん成り立ちとしては、ネイティブ・カナディアンの方達の国土を礎に築いた国ではありますが、その過去の歴史の償いも含めて、国として全体が同じベクトルに向かって進もうとしていることを感じられる国でもあります。
今回の内容は、私がカナダの中でも特に多文化な「トロント」という街に住んでいるからこそ強く感じていることかもしれませんが、外国人である以上、私はこうした視点は常に養って生活していきたいと思っています。