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美術館が1年間無料!ニューヨークの身分証明書「idNYCカード」は誰でも取得できる!?

美術館が1年間無料!ニューヨークの身分証明書「idNYCカード」は誰でも取得できる!?

特典満載の idNYCカードが登場

2015年1月、ニューヨーク市は新しいID(身分証明書)の発行を開始しました。その名も “idNYC”。ニューヨーク市民限定の、びっくりするほどお得で楽しい特典がたくさん付いたIDです。

このIDはアメリカ国籍保持者に限らず、ニューヨーク市に住む人ならほぼ誰でも取得できます。グリーンカード(永住権)保持者、就労ビザや学生ビザなど各種ビザ保持者はもちろん、なんと正規の滞在資格を持たない、いわゆる不法滞在者も取得することができるのです。

idNYC の特典

提示することで市内約40ヶ所の美術館や動植物園の入館入園が1年間無料に。あの広大なメトロポリタン美術館(推奨入館料25ドル)の全展示を1日で制覇することは到底できませんが、idNYCカードさえあれば毎日通うことだってできるのです。
他にも、アメリカ自然史博物館、リンカーンセンター、ブロンクス動物園、ブルックリン植物園などなど、行き先はよりどりみどりです。

映画のチケットやブロードウェイ・ショー、スポーツ試合の割引もあります。さらにはホテル宿泊ディスカウント、ユニヴァーサル・リゾートやシーワールドなど他州のアトラクションのディスカウントまであり、idNYC はまさにミラクル・カードなのです。

 

運転してはいけない運転免許証って?

非合法滞在者にもID発行とはなんとも驚きの話ですが、ここでまずアメリカのID事情についてご説明します。

アメリカではあらゆる場所で写真付きIDの提示を求められます。
クラブなどお酒を出すお店に入るときやアルコール・タバコを買うときはもちろん、ニューヨークでは 9.11 テロ以降、市役所も含め行政の建物に入る際には提示が必要になりました。

また、小・中・高にも入り口にセキュリティデスクがあり、所用で学内に入る成人は写真付きIDを見せなければなりません。

車社会のアメリカでは、一般的には運転免許証がIDとして使われます。ほとんどの人が運転免許証を持っていることから、それがIDとして通用しているわけです。

とはいえ、中には免許を持たない人もいます。特に地下鉄がスタンダードな交通機関であるニューヨーク市は、他所に比べると免許証保持者が少ないでしょう。

そこで考案されたのが、運転免許証とまったく同じデザインでありながらも車は運転することができない、通称 “Non-driver Licence”。この融通の効く(テキトーな?)発想がなんともアメリカらしいですね。

 

“非合法滞在者にもID発行” の真意は?

運転免許証、非運転免許証、いずれも取得するには身元を証明する複数の書類を提出し、手数料を支払わなければなりません。すると当然ですが、アメリカ人の中にも諸般の事情で提出書類を揃えられない、または手数料が払えず、取得できない人が出てきます。移民ならなおさらです。

この idNYCカード、本来のターゲットは「合法な滞在資格を持たない=身元確認の書類をほとんど持たない」いわゆる不法移民(非合法滞在者)たちです。ニューヨーク市は非合法滞在者の数が多いため、彼らにもIDを発行しなければ日常生活で無数のトラブルが起きるのです。

たとえば、銀行口座が開けない、アパートに入居できない、親が子どもの学校に行っても校内に入れない、などなど。当人の生活が煩わしいだけでなく、それに対応する社会も手間ひまを必要とされてしまうのです。

そこで今年、ついに「誰でも無料で取得できるID」の発行(= idNYC)と相成ったのです。一見、突飛なアイデアに思える非合法滞在者へのID発行は、実は社会全体を潤滑にするツールだったのです。

ただし、非合法滞在者専用のIDにしてしまうと、そのIDを提示することイコール「不法移民だ!」となってしまいます。そこで市は、たくさんの魅力的な特典を idNYCカードに付け、合法移民はもちろんアメリカ市民にも盛んに取得を勧めているのです。

 

日本人もラクラク取得可能!

idNYCカードは、市民権や永住権を持たない中長期滞在の日本人にも簡単に取得できます。

idNYC のWebサイトで最寄りの発行事務所のアポイントメントを取り、パスポート・現住所が書かれた光熱費や携帯電話などの請求書を持参するだけ。当日は申込書に記入し、写真撮影するだけで、2週間程度でカードが自宅に送られてきます。

申込書は25言語あり、日本語バージョンもWebサイトからダウンロード可能。ただし、英語を勉強中という方は、英語バージョンで申し込みにトライしてみてはいかがでしょうか。

上記の書類が揃えられない人、ホームレスやDV被害者などといった事情のある人は、以下のサイトに詳細が記載されています。

【idNYC取得に必要な書類のリスト】
▷ Document Calculator|id NYC

 

おわりに

IDひとつとっても、アメリカにはユニークな社会背景がありますね。
たとえ idNYCカードを取得する必要のない人も、idNYC の公式サイトを隅々まで読んでみると、アメリカ・ニューヨークのユニークな背景が見えてくるかもしれません。

それでは最後に、アメリカのIDにまつわる英単語のリストを挙げておきます。

 

IDにまつわる英単語

  • ID(identification card):身分証明書
  • Photo ID:写真付き身分証明書
  • driver licence:運転免許証
  • non-driver livence:運転免許証と同様のデザインの身分証明証。運転不可
  • DMV(Department of Motor Vehicles):陸運局。州ごとにあり、運転免許証を発行する。
  • SSN(Social Security Number):社会保障番号
  • SS card(Social Security card):社会保障番号が記載されたカード。写真や現住所の記載がなく、IDとしての使用は不可。
  • NYS(New York State):ニューヨーク州
  • NYC(New York City):ニューヨーク市
  • utility bill:光熱費の請求書。現住所の確認に使用。
  • cell phone bill:携帯電話の請求書。現住所の確認に使用。