宮澤 香奈
(更新)
オランダでは英語さえ話すことができれば、不自由なく暮らせるということをご存知でしょうか? オランダ人のほとんどは英語が堪能で、相手が外国人と分かれば必ず英語で話しかけてくれます。さらには、英語が話せれば、オランダで就職し、接客業に就くことも出来るのです。(オランダ語を必須とする企業は別)
以前は、ワーキングホリデーもなく、就労ビザも取りにくいオランダでしたが、2014年12月に日本国籍者はオランダ国内において「労働許可なく就労できる」と法律改正されたことをご存知でしょうか? 法律が変わったことにより、就労ビザが格段に取りやすくなったのです。
オランダに住む夢が叶えやすくなった今、実際に現地に長年住んでいる日本人2名の方に現地取材をし、オランダで働く実態を伺ってきました。
1人目はアムステルダムの老舗ダイヤモンド工房 “GASSAN Diamonds BV/ガッサンダイヤモンド” に勤務する本多美穂さんです。美穂さんは2003年にアムステルダムへ移住し、当時お付き合いしていたオランダ人男性と結婚して配偶者ビザを取得しました。
以前、観光ビザで滞在している間に、地元の新聞に求人が出ていた現在の会社へ応募&面接をしたのですが、会社がバックアップする形での就労&滞在ビザは申請出来ないと断られてしまったそうです。しかし、配偶者ビザを取得した後、再応募。2004年にGassan Diamonds BVに就職することができたのです。
そして現在では、配偶者ビザから本人個人のビザに切り替え、従来通りに納税、保険料を納め、10年以上正社員として勤務されています。
勤務先であるガッサンダイヤモンドは、2005年に世界で唯一の121面体となるダイヤモンド”GASSAN121”を発表し、世界的に名を広げた実績を誇る企業です。
美穂さんはその中で日本人観光客や日本人顧客を対応するセールスを担当しています。勤務歴10年以上というキャリアを持つ美穂さんは、オランダで仕事することに対して、どんな考えを持っているのでしょうか?
美穂さん:
「働きやすい環境ですよ。コミュニケーションは全て英語ですし、ミーティングもオランダ語で行いますが、理解していないと感じたらすぐに英語に切り替えて説明してくれます。オランダ語は話せたほうが便利ですが、話せなくて困ったことはありません。
また、弊社はシフト制なのですが、基本的には自分の好きなシフトの希望を出し、他の同僚と話し合って決めることができます。加えて、有給休暇が年間24日間と決められているので、一か月近いもしくはそれ以上の休暇を取ることも可能です。女性の産休はもちろん、男性の産休もあるんですよ。
残業した時間は、お金で少し支払われ、その他は時間で返されるシステムになっています。そのため、就業時間の30分前に退社することもできます。残業といっても、日本のように長時間に渡って残業するということはまずありません。接客業なので、お客様のご来店時間が遅い場合などに、多少残って仕事をすることがあるぐらいです。とにかく働きやすいですね」
「オランダの税金は、消費税を例に挙げても21%(食品と書類は6%)と日本よりもかなり高いです。その分、社会保障制度が手厚いのでデメリットとは言えないかもしれませんが……。
あとは、アムステルダムに関しては、レジデンス登録のできる住居を探すのが、何よりも大変でしたね。それに日本の企業は少ないですし、最近では中国人観光客の増加で観光業も変わってきているので、日本人を必要とする会社も少ないのが現状ですね。
何よりも、住み始めるのが一番大変かもしれません。住んで、レジデンス登録さえできてしまえば、その後は楽しいことが待っていますよ」
2人目は、オランダのデン・ハーグにて、奥様の奈々絵さんとともに宅配弁当屋を営む吉崎潤さんです。デン・ハーグはオランダ第三の都市であり、洗練されていてとても美しい街です。在住6年の吉崎夫妻は、居酒屋を出さないかという知人の誘いをきっかけに移住。
しかし、結局、様々な事情によりオープンには至らず、現地のレストランへ勤務することになりました。そこで得た経験と人脈をもとに、昨年11月より “Yoshi Bento” をスタートさせました。
デン・ハーグでは日本人シェフのレストランが少なく、お弁当屋は他にありません。オープンしてまだ1年も経っていませんが、近隣に住む方達や日本大使館の方々など、お客さんが徐々に増えていきました。そのほとんどがリピーターとなり、そこからまた口コミで広がっていったそうです。
吉崎さん:
「オランダは、他のヨーロッパ都市とは全然違うんです。人口が1600万人しかいない小さな国なこともあって、いろんなことの水準が低いんです。食に関しても同様で、同じレストランなのに毎回同じクオリティーの味が出せません。だから、日本人できちんと料理人としての経験があれば、それだけでかなり重宝されます。
あとは、自営業で何か始めるならローカルの人脈が何よりも大切です。僕の場合も前職のレストランのボスが自ら口コミしてくれて、常連のお客さんがリピーターになってくれたんです。独立して辞めてしまう人間にそんなことまでしてくれたんです。何かをやりたいと思うなら、現地の人と深い人間関係を作ることが、PRにお金をかけることより大事だと思います」
「まず長期滞在するためには、レジデンスパーミット(移住許可証)が必要です。そのために、観光ビザで入国し、3ヶ月以内にレジデンス登録ができる住居を探す必要があります。住居が見つかれば、テンポラリー・ビザ(起業するにあたり必要な書類の準備期間として発行された6ヵ月滞在を許可する一時的なビザ)は簡単に取ることができます。
そのビザをもって、起業ビザの申請へと進みます。一定の預金残高が必要だったり、役所関連へ必要書類を提出したり、会計士を雇う必要があったりと、諸々準備に時間は掛かりますが、一度取れてしまえばどんな事業でも始めることができます。必要書類はオランダ語が基本ですが、対応はほとんどが英語なので心配は要りません
「強いて言えば、日本人だけで営業しようとするといろんな弊害があることでしょうか。国に日本人が少ないだけに、同業者に変な噂を流されてしまったケースも聞きました。地元の人の協力が必須になるかと思います。
あとは、オランダはとにかくご飯がおいしくないんです(笑)
サービスも悪く、特にファーストフード店とかは驚くほどひどいです。役所関係のシステムも全然スムーズでないです。例えば、市役所に住所登録の手続きに行ったとして、一週間待っても何の連絡来ない。不安になって確認しても、役所のスタッフ自体がシステムを理解していないと言われ、一度で手続きが完全に終わらないんです。これは本当に困ります。
……でも、デメリットといえばこのくらいでしょうか
現在、吉崎さんは日本人移住希望者のためにビザ取得のアドバイザーも行っています。起業をしたいと望んだ場合は、現地に長く住んでいる日本人の助言は必要不可欠となってくるでしょう。オランダへの移住を本気で考えている方は、ぜひ下記まで問い合わせてみてください。
▷ Yoshi Bento HP
▷ Yoshi Bento Facebook Page
お問い合わせ先:
yoshibento17@gmail.com
ワーキングホリデー制度もなく、外国人である日本人の私たちが就職することがとても困難だったオランダの法改正は、海外暮らしを夢見る人たちにとって新たな希望となっています。
しかし、オランダは小さな国であるがゆえに法律の変更もこまめに行われています。ビザが取りやすいこの機会に、美しい街並のオランダで働く生活を叶えてみてはいかがでしょうか?