masa osada
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海外旅行のアクティビティーと言えば、皆さんはどんなことを思い浮かべますか?
名所旧跡巡り、サーフィン、スキューバダイビング、スキーやトレッキング、食べ歩き、街歩きなど様々なものがありますね。
では「温泉」はどうでしょうか。
「温泉」と聞くと、日本独自の文化のような気もしますが、実は広い世界には温泉を楽しめる観光地がいくつかあります。海外の温泉文化は日本とはまた違った歴史や風習があり、温泉大好きな方はもちろん、そうでない人にも十分楽しめるでしょう。
そこで今回ご紹介したいのが、日本から9000キロも離れた南半球の島国ニュージーランドの温泉地「Rotorua(ロトルア)」。ロトルアは古くから温泉文化が栄えており、世界中から温泉を楽しむために人びとが集まる観光スポットなのです。
ニュージーランドは日本と同じように全国いたるところで温泉が湧き出ています。
特に今回紹介する街・ロトルアの周辺は、日本の温泉街のようにあちこちで湯煙が立ち、街中が硫黄の匂いで満たされているのです。
海外で硫黄(温泉)の匂いを嗅ぐとすごく不思議な気持ちになりますよ。温泉街の雰囲気が立ち込める中、歩くと見かけるのは外国人ばかり。浴衣を着ている人は誰一人としていないのですから。
ニュージーランドの温泉文化はもともと先住民のマオリ族が培ってきました。
古くからマオリ族にとって温泉は大地の神様から与えられた崇拝するものであり、同時に生活に欠かせないものでもありました。それが今でもニュージーランドの温泉文化として色濃く残っています。
日本語では「温泉に浸かる」と言いますね。
英語でも「浸かる」という意味の "soak" を使って "I soaked in hot springs for more than 1 hour(温泉に1時間以上浸かりました)" と言えますが、まったく異なる言い回しもよく耳にします。それは "swim" です。
どんな風に使うかというと、 "Do you want to go for a swim in the hot springs?" というように名詞として使います。つまり「温泉へ泳ぎに行きたい?」という意味ですね。
では、どんな温泉で泳ぐのかというと、ロトルアには「Polynesian Spa(ポリネシアン・スパ)」という温泉施設があります。ほとんどの旅行ガイドブックに載っている温泉施設です。ただ、実は地元の人たちはほとんどここには行きません。
地元の人たちはどこに行くのかというと、それは「天然温泉」です。ロトルアの周辺にはいくつも温泉が湧き出ているので、わざわざお金を払って温泉施設に行く必要がないのです。
こちらの温泉は写真左上から手前に向かって熱湯の川が流れています。そして、写真右側から左に向かって冷たい水の川が流れています。温泉に入る人たちは熱湯と冷水が合流した自分にちょうど良い湯加減のところを見つけて浸かります。
熱くなってきたら冷たいほうに移れば良いし、寒くなったら温かいほうに行けるので、いつまでも温泉に入っていることができます。
しかも、川底には泥が沈殿していて、天然の泥パックをすることもできるのです。実際、ロトルアのお土産物屋では泥パックが名物として販売されています。
別の川の天然温泉では、途中に温泉の滝があり、打たせ湯を楽しむこともできます。
ちなみに日本の温泉に必ずある浴室はニュージーランドにはありません。温泉は英語で "hot springs" という言い方のほかに、 "bath(お風呂)" ではなく "hot pool(ホットプール)" と呼ばれています。
そのため、ニュージーランドでは他の西洋の国と同じように水着を着て温泉に入るのです。男女も別れていないところが多いので温水プールと同じ感覚で入って、最後にシャワールームで体を流します。
なお、一般的な温泉施設のお湯の温度は「37~40度」と日本人には少し物足りない温度。その代わり、長い人は1時間以上も浸かるそうです。
ロトルア周辺の地熱地帯ではさまざまな種類の温泉を目にすることができます。
例えば、上の写真のような日本でも見ることができる間欠泉はもちろんのこと、他にも珍しい温泉がたくさんあるのです。
こちらの温泉は英語で "Champagne Pool(シャンパンプール)" と呼ばれています。常に炭酸ガスを噴出しているからです。
こちらの温泉は "Inferno Crater Lake" 、直訳すると「地獄の火山湖」と呼ばれていて、湖の下には世界最大の間欠泉があります。約40日周期でお湯の量が変化し、そのお湯の量に合わせて写真のような真っ青から乳白色まで色が変わるため、訪れるたびに違う色の温泉を見られるのです。
他にも "Devil's Bath(悪魔の風呂)" と呼ばれる緑色の温泉や、
3.8ヘクタール(38,000平方メートル)もある世界最大の温泉湖 "Waimangu Cauldro (ワイマングの大釜)" などがあり、ロトルアは温泉の見本市のような場所です。
ニュージーランドの温泉も「湯治場」として古くから使われてきました。
まだ西洋医学が渡ってきていない時代にも、先住民のマオリ族は温泉がさまざまな病を治すことを経験的に知っていたのです。温泉に浸かることで肌の疾患や打ち身、捻挫を治し、温泉を飲むことで胃腸の調子を整えていたといいます。
その後、西洋医学が入ってきてからは温泉治療の病院が全国に作られ、マオリ族が行っていた治療以外にも、肥満やリウマチ、不眠症の改善や、温泉を沸騰させた蒸気を吸うことでノドの疾患を治すなどの本格的な治療が行われるようになりました。
そのため、ロトルアには温泉治療の病院や、温泉を使ったマッサージを行うところがあり、治療のために訪れる人たちもいます。
マオリ族は野菜などを温泉の中に入れておくことで、調理場としても使ってきました。
他にもマオリ族は "Hangi(ハンギ)" という温泉の地熱や、熱した石の熱を使った調理もします。熱々の地面に穴を掘り、そこに肉や魚、野菜などを葉っぱで包んで入れ、土で埋めて調理するというものです。
地熱が十分に熱くないところや、温泉地帯でないところでは先に地面に穴を掘り、その中で焚き火などを行い、熱くなった地面の中に食材を入れて蒸し焼きにします。
今では日常生活のなかでこの調理方法を使う家は少なくなってきましたが、お祝いの席や家族や友人が集まるときにバーベキューをするのと同じ感覚で行われているのです。
なお、ロトルアにはマオリショーと言うマオリ族の歌や踊りを見ながらご飯を食べるショーを行っているところが何か所もありますが、ハンギは定番の料理となっています。
味はというと、地面に埋めて蒸しただけなのですごくシンプル。例えば、サツマイモを家で茹でたり電子レンジで温めて食べるよりも、石焼き芋にするとすごく美味しいですよね。それとすごく似ていて、スパイスなどを使った美味しさではなく、素材の美味しさを引き出してくれる調理方法になります。これはこれですごく美味しいですよ。
火の取り扱いにさえ注意すれば、日本でもキャンプやバーベキューをするときに取り入れてみると楽しいと思います。
温泉の街・ロトルアは、ニュージーランドの玄関であり、最大の都市でもあるオークランドから車で3時間ほどのところにあります。
日本からツアーで行くこともできますし、個人で日本からニュージーランドまでの飛行機とレンタカーかバスを予約して行くこともできます。ロトルアから1時間も足をのばせばスカイダイビングやバンジージャンプ、カヤック、ホエールウォッチングなども楽しむことができますよ。
次の海外旅行は、ぜひニュージーランド・ロトルアで異国の温泉文化を味わってみてくださいね!