Mizuho
(更新)
「英語の読み書きができても、聞いたり話したりするのは苦手」という人は、どれくらいいるでしょうか。
おそらく「自分もそう!」と手を挙げる人は少なくないはずです。
そこで本記事では、特に英語を主とする外国語を話す際の不安感や苦手意識を克服し、リラックスして外国でのコミュニケーションに臨む方法をご紹介。
後半では、「アルコールの摂取で外国語が流暢になる」という面白い研究結果について、その真偽のほどに迫ってみたいと思います。
そもそも、私たち日本人の英語習得度はどれくらいなのか知っていますか?
EF Education First(イー・エフ・エデュケーション・ファースト)という語学学校が、2011年から毎年行っている国際的な英語能力指数「EF English Proficiency Index」によると、2021年の日本の順位は112カ国中78位。
英語の習熟度が「非常に高い」「高い」「中程度」「低い」「非常に低い」と5段階に分けられるなかで、日本は「低い」と判定されました。さらに、2020年の99カ国中55位から大幅に順位を下げているので、あまり良いとはいえない結果です。
日本人が英語を「話せない」原因について、これまでさまざまな議論がされてきました。
例えば「試験対策を優先して読解やリスニングに重きが置かれている」とか、「アウトプットする機会が少ない」、「間違えてしまうことを極端に恐れている」、「カタカナ語が邪魔をしてしまう」など。
そのなかでも特に影響が強いと考えられているのが、外国語を話すときに「間違えてしまうことを極端に恐れている」状態、つまり「不安感」です。そこでまずは、外国語と緊張感(不安感)の関係性について見てみましょう。
英語に限らず、どんな言語学習者にとっても緊張感や不安感は大きな壁として立ちはだかるもの。実はこれにはしっかりと学術的な名称がついており、「外国語不安(foreign language anxiety または xenoglossophobia)」と呼ばれます。
複数の研究によると、日本人にとっては特に外国語で相互的なコミュニケーションを取らなければいけない状況が、恐怖感を生むそう。そしてこの言語不安が、言語パフォーマンスに影響を与えてしまうというわけです。
学生時代の英語の成績は悪くなかったし、英語も好きなのに、外国人を目の前にした途端に固まってしまった… そんな経験のある人は多いことでしょう。ここからも、「対人」でのコミュニケーションだからこそ不安感を引き起こす傾向にあることがわかりますね。
では、なぜ対人コミュニケーションならではの不安感が存在するのでしょうか。こちらの記事でも紹介されていますが、大きく3つの理由が考えられます。
それは①外国人に対しての恐怖心、②筆記テスト重視の教育システム、と③ディスカッション経験の欠如によって自分の考えを表現するスキルに乏しいこと。また、冒頭にお話しした通り、「間違ってはいけない」という意識とも関係しているかもしれません。
特に日本人は協調を重んじる民族で、その特性から欧米の人に比べて他人の目を気にする傾向にあると言えます。コミュニケーションをとる相手が目の前にいるからこそ、その人の目にどう映るかや、どう評価されるかを考え過ぎてしまうわけですね。
これらの原因を克服する方法としては、外国文化に日頃から触れてみる、スピーキングの練習を重ねる、自分の意見を英語で発信してみる、などがあります。
また、間違いをしてしまうことへの恐怖心に関しては、「完璧な英語を話すこと」ではなく「英語を使ってコミュニケーションを取る」ことを目的として、「間違ってもいいんだ」、「ネイティブのような発音でなくてもいいんだ」という意識を持つことが非常に重要になってきます。
みなさんも外国人が日本語を少しでも話せたときに「すごい!」とリアクションをしますよね。外国語を話すこと、そして話そうとする姿勢は、既に評価に値することなのです。
「それでもやっぱり緊張してしまう」というときは、微笑んでみましょう。
ある研究によると、微笑むことはリラックスに効果的だそう。
緊張のあまり、顔がこわばってしまっていませんか? 無理にでも微笑んでみると、自然とリラックスできるかもしれませんよ。
Stressed Out? Doctor's Advice: Smile
「ストレス疲れ、医者のアドバイスは笑顔」
レベル6: 中級
さて、ここまで外国語を話すのには緊張感の緩和が重要であることについて見てきましたが、冒頭でお伝えした通り、アルコールがこれに一役買うことができるそう。一体どういうことなのでしょうか?
アルコールの摂取が人体に悪い影響をもたらすことは、広く知られていますよね。脳卒中を患ってしまう可能性を高めたり、脳の機能を遅くすることなどがその代表例です。また、大量のアルコール摂取はアルコール中毒を引き起こす可能性もあり、脳だけでなく身体の甚大な問題につながることもあります。
これらの悪影響については、DMM英会話の教材である「デイリーニュース」でも取り上げられています。
The Safest Level of Drinking is None
「最も安全な飲酒量はゼロ」
レベル6:中級
Alcohol Abuse Slows Brain Growth In Young Adults
「アルコールの乱用が若者の脳の成長をさまたげる」
レベル8:上級
このような悪影響を示す研究がある一方、ある側面では良い影響があることを訴える研究結果が複数あるのも事実。
例えばある研究結果によれば、赤ワインとチーズを一緒に取ると、アルツハイマーになる可能性を低下させるそう。また、赤ワインが内臓に良い影響を与えるという研究結果もあります。
Red Wine May Be Good for Your Gut
「赤ワインが内臓に良い影響を持つ可能性」
レベル7:上級
これらの研究結果は「アルコールは適度に摂取すれば、利点を見出すことができる」という主張をしているのです。
そしてその利点の1つに付け加えられたのが、「アルコールを摂取することによって外国語が流暢になる」という研究結果です。
オランダにあるMaastricht University(マーストリヒト大学)の心理科学と脳科学分野で行われた研究によると、少量のアルコールを摂取することによって、外国語を話す能力が向上する可能性があることがわかりました。
Study: Alcohol Can Improve Conversation Skills
「研究:アルコールが会話のスキルを向上する」
レベル6:中級 ディスカッション教材こちら
「2017年に行われた研究によると、少量のアルコールが人々の単語や文法スキルに悪い影響を与えないことがわかった。なかには、外国語を話すスキルが向上した人もいた」
マーストリヒト大学はドイツやフランスとの国境からほど近くに位置しており、ドイツ人の留学生が多く在籍しています。そんな彼らにとって、オランダ語は外国語。この研究では、オランダ語を外国語として話すドイツ人を被験者として、アルコールがオランダ語を話す能力に影響を与えるかを調べました。
被験者たちはアルコール飲料とノンアルコール飲料を摂取するグループの2つに分けられ、それぞれの飲み物の摂取後にオランダ語を話します。そしてそのオランダ語の流暢さを、オランダ語ネイティブの人たちに検証してもらったのです。
この結果、「アルコールによってオランダを話すことについての自信が増す」など想定されていた仮説のいくつかは立証されませんでした。しかし、客観的にオランダ語を話す能力を評価してもらったところ、アルコールを摂取したグループのオランダ語の流暢さが向上したのです。特に評価者たちは「発音が滑らかになった」と感じたそう。
一方で、被験者たち自身は「自分のオランダ語能力がアルコールによって向上した」と感じることはありませんでした。
この研究をしたグループによると、「アルコールの不安を軽減する作用」が外国語を流暢に話せるように有利に働いた可能性があるそう。アルコールを飲んで、「気が大きくなった」、「楽しい気分になった」という経験は誰しもありますよね。
アルコールには楽しさを感じさせる「ドーパミン」と不安な気持ちを抑える「セロトニン」を脳内で分泌させる働きがあります。これらの分泌物が、外国語を話す不安を軽減してくれたのかもしれないわけです。
もちろん先述のように、アルコールが人体に与える悪影響は忘れてはいけません。この研究ではあくまで「少量」のアルコールが外国語を話すときに有効であったとしており、飲み過ぎについては認知機能などに悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らしています。
いかがでしたか? 外国語を話すときの弊害の1つは、緊張や不安を感じてしまうことだということがわかりました。そのため、緊張感を和らげるアルコールが外国語を話すときに有効であることが研究により発表されたのです。
でも、できればアルコールには頼りたくないもの。アルコールに頼らずとも、緊張を和らげることは可能です。
まずは自分の緊張感や恐怖心がどこからきているのかを考えてみましょう。原因がつきとめられれば、対処する方法も見つかるはずです。
少しの意識改革で不安を軽減することで、パフォーマンスの違いが生まれるかもしれませんよ。