新井 リオ
(更新)
Q&ABCは、『英語日記BOY』の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
第4回のテーマは、「ワーホリを取るか、今の仕事を取るか」についてです。
ただ、ワーホリは年齢制限がありますよね。もしワーホリを選んだら、今の仕事は辞めなくてはいけません。
もし仕事を辞めなくていいなら、真っ先に行きたいです。ただ、辞めなくてはいけないとなると、迷ってしまいます。
私は音楽が好きで、今は楽器に関わる仕事をしているのですが、もし辞めてしまった場合、ワーホリの後、また楽器に関わる仕事につくのは難しいのでは?と考えてしまうのです。
ワーホリ後の目標が具体的に定められないのであれば、海外で生活してみたいという欲求を満たすよりも、今の仕事に全力を注いだ方がいいのでは?という考えもあれば、
今の仕事ではこの先海外に住める可能性はほぼないし、絶対この仕事じゃなくてはいけない、というわけではないのだから、このチャンスを逃してはいけないのでは?という考えもあります。
どちらを選ぶべきか、決めるのは自分自身でしかありませんが、もしリオさんがこのような状況だとしたら、どのような考え方で選択をするのだろう?と思いました。
ご意見をいただけたら、大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
単刀直入に、海外に行った方がいいと思います。
僕なら行きます。
頂いた文面を見る限り、かなり海外への憧れがある方だと思います。
多分ですけどまったんさん、海外の写真を見るだけで、恋をしているときのような、胸がうずくようなワクワクを抱きませんか?
これ、意外とみんなが抱く感情ではありません。
海外ツアーを頻繁に行うミュージシャンの大先輩がいるのですが、その方は「海外に対して特別な興味はないから、アメリカだろうがイギリスだろうが、日本の地方ツアーのときと気持ちは変わらないんだよね」と言っていました。
実際、周りを見渡しても、「海外に住むことを熱望している人」の数って意外と少なくありませんか。
僕も最近まで勘違いしていましたが、別に「全日本人が海外に住んでみたい」わけではないんです。
だから、この感情を“自分は”抱いているという事実を想像以上に大事にしてほしいです。
これはちょっとしたギフト(才能)のようなもので、一定の人にしか抱けない特別な感情なんだと思います。
実は僕も、同じような状況だったときがありました。
19歳からの3年間、個人経営の古着屋でアルバイトをしていました。週4くらいでシフトに入っていた主要メンバーだったのですが、大学の長期休みになると、どうしても海外に一人旅をしてみたいと思うようになりました。
シフトに穴を開けてしまう申し訳なさに押しつぶされそうになりながら、「実は今後、大学の長期休みの度に1ヶ月間、海外に行ってみたいと思っています」と店長に伝えました。
将来英語を生かした仕事がしたいことや、アーティストとしての夢なども合わせて、論文くらい長いメールを送りました。今見返すと赤面してしまうような初々しい内容です。
店長は、
「これからリオくんがどんな人生を送るかに関わらず、違う環境で生活することに、頑張ることに、大きな意味があると思います。だから応援します。店については、俺もリオくんに続けてもらいたいので、どうするかは今度ご飯に行ったときにでも話しましょう!」
と、本当に寛大な返信をくれました。このメールはいまだにスクショを撮って保存しているくらい、その後の僕の人生を励まし続けてくれる一言になります。
結果、海外に行っている間だけ僕の友人にシフトを穴埋めしてもらう、という形に落ち着き、僕は大学の長期休みの度に、バイト代の全てを注ぎ込み様々な国に一人で行くようになりました。
さらには大学を2年間休学し、ワーホリビザでカナダに住むことになります。
まったんさんの質問を拝見すると、特に「仕事=外的な要素」の心配をしているように思います。いや、そりゃ心配ですよね。わかります。
ただ、僕が海外生活を通して得た一番の収穫は、「内面的にタフになったこと」なんです。
家の契約、銀行口座の開設、友達作り…日本でも大変なことを、これまでと全く異なる環境で、しかも違う言語で行います。正直大変すぎます。
でもこれを全て乗り越えると、人間的にめちゃくちゃ「強く」なるんです。自信が湧いてきます。
帰国したとき、全て日本語でおこなえる環境がイージーすぎて、「え、もう怖いものないじゃん」と思いました。なんて強気。でも本当に。
この内面的成長こそが、日本人が海外生活を経験する真髄なんだと思います。
ついつい、「せっかく海外に行くなら自分のキャリアにおける具体的な結果を出さないと…」と思ってしまいますが、極論、僕たちは「タフになること」だけを目的に海外に行ってもいいんじゃないかとさえ思います。
例えば「資格」は、その資格が通用する分野でしか活かすことができませんが、タフになる=自分自身の基盤を底上げすることができれば、もっと汎用性の高い、何にでも応用できる能力をゲットできるような感じです。
今の仕事を続けるという安定を取るのももちろんいい選択ですが、海外に行ってみて初めてわかる価値観や出会いが、確実に存在します。そしてその新しい体験が、今では考えもつかなかった新しいキャリアを生むこともあるのです。
このワクワクに、心から期待しちゃっていいのかもしれません。
とはいっても、簡単に不安は拭えないと思います。
そこで、僕なりに選択肢を3つ考えてみました。
3つ全てに言えるのは、「白黒つけない」ということです。
海外生活はたしかに「背水の陣」的な行為に見えますが、「ワーホリしたら日本での生活がすべて終わる」わけではないんです。
その白黒的価値観が不安を呼んでしまうと思うので、ここでは「かっこいいグレー」を考えてみます。
一番の安全策として、今の会社に「1年間ワーホリで海外に住むので、1年後に復職してもいいでしょうか?」と訊いてしまうのはどうでしょうか。
先述したように、自分も同じようなことを訊きました。
訊くのは少し勇気がいるかもしれませんが、このような保険があるとびっくりするくらい伸び伸びと、あたらしい挑戦に集中できると思います。
また、訊いてみた結果がどうであれ、「一度でも会社に訊くことができた」という経験が、そのあとに生まれるかもしれない後悔をなくしてくれる気がします。
今はどちらにしろ、新型コロナウイルスにより海外での新生活を始めるのが難しい時期です。そこで、今できる最大限の努力として「日本で留学を再現する」のはどうでしょうか。
ワーホリでは、最初の半年を語学学校、残りの半年を現地での仕事にあてるスタイルが一般化されているように思います。でもこれ、「超もったいない…!」と、僕は思います。
せっかく「なんでもしていいビザをゲットできる」のがワーホリです。
僕なら、オンラインレッスンを駆使して日本で「留学を終えた」と言えるくらいの英語力を身につけ、海外に着いたら早速仕事探しを始めます。これだけで、できる仕事の幅が何倍にも膨らみます。
これもコロナが落ち着いたら、ということにはなりますが、まずは1週間くらい休みを取って、ワーホリを考えている国に「お試し」で行ってみるのも一つの手です。
で、その滞在期間では「観光」ではなく「生活」をしてみてください。
Airbnbで普通のアパートを借り、スーパーマーケットで買い物して自炊し、カフェでお茶してみるんです。
一週間でも現地の空気感はわかります。
その経験を踏まえ、実際に仕事をやめてその国に住むか、日本に残るかを改めて決めるんです。
まあでも多分、海外滞在が衝撃的に楽しくて、きっと住みたくなっちゃうと思いますよ。
今は「やりたいことがわからない」人が多い時代ですよね。
そんな中、「ワーホリをしてみたい」はもう、立派な「やりたいこと」として認定していいと僕は思います。
たぶんその感情、想像以上に大切にした方がいいです。油断するといつか消えてしまうので、本気で、守るように大切にしてほしいんです。
「ストレスによる悩み」ではなく、「やりたいことワールドの中での悩み」って、同じ悩みでも質が全く異なるほど、貴重なものだと思います。
僕自身、バンドをやめ、バイト先に迷惑をかけ、大学を休学しなければいけないカナダ生活を決断するのには、勇気が必要でした。
でも、本当に実行してよかった。
今は、「一度でもカナダに住むことができた人生でよかった」と思いながら最期を迎えられる自信があります。大袈裟かな。でも本当です。
せっかくの自分の人生だから。
まるで実験をするかのように、アイデアを出しまくって、成功したり失敗したりしながら、楽しく生きたいんです。
新井リオへの質問はこちらから。
次回の連載更新は8月下旬予定です。
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