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「古き良きご近所付き合いを、もう一度」〜言語交換コミュニティ、栃木県足利市〜

「古き良きご近所付き合いを、もう一度」〜言語交換コミュニティ、栃木県足利市〜

今回の取材のきっかけとなったのは、Twitterのタイムラインに流れてきた1件のツイートでした。

DMM英会話ユーザーである一人の女性が、ある街で「言語交換コミュニティ」を立ち上げたとのこと。
 

その街とは、栃木県足利市
栃木県南部に位置し、「小京都」とも言われ古い神社仏閣が多く存在する街です。

少し寒さの残る初春の日、この街で生まれた言語交換コミュニティ
「Wisteria International Community」と、
コミュニティ代表で、この街を愛し、この街に愛されている一人の女性、八周真鶴さんを取材させて頂きました。

「私がコミュニティを立ち上げたきっかけ」


一人、東京から足利市に足を踏み入れた私を出迎えてくれたのは、コミュニティ代表の八周さん、製薬企業につとめる岩谷さん、留学生のアブドさん(エジプト)、タモさん(カメルーン)、テボゴさん(南アフリカ)の5人。
そこには国の壁を感じさせない、和気あいあいとした温かい雰囲気がありました。

まずは八周さんにコミュニティを立ち上げたきっかけについて伺いました。

きっかけは大きく2つあります。まず1つは、ここにいるような留学生たちの友達作りの場となればいいなと思ったことです。昨年の秋に、家の近くの足利工業大学の文化祭に遊びに行って、そこでこの留学生たちに出会いました。そんな彼らに「日本人の友達できた?」と聞いたところ、「できない」と言われて。「なんで?」と聞くと、「英語で話しかけると、みんなすぐに逃げちゃうから、自己紹介しようと思ってもできない」って。せっかく日本に来たのに、日本人の友達ができない、ましてやそういった場すら無い、というのは悲しいですよね。それがきっかけの1つです。
もう1つは、私自身3年ほど前からDMM英会話を使っていたのですが、そこで覚えた表現を実際に使う場が欲しいなと思っていて。都内に行けば英会話カフェとかイベントとかはたくさんあると思うんですけど、足利ではそうはいかないので(笑)ここにいる岩谷さんも、同じような理由で集まってくれた仲間です。

今日ここにいらっしゃる皆さん以外に、普段どういった方がこのコミュニティに来るのか、聞いてみました。

基本的には、「日本語を学びたい外国人」「英語を学びたい日本人」です。外国人のほとんどは足利工業大学の留学生たちで、たまに中学校のALTの先生や足利の工場で働く労働者の方などもいらっしゃったりします。日本人については本当に様々で、会社員の方やパートで働く主婦の方、DMM英会話ユーザーの女の子でTwitterを見て来てくれた子もいました。あとは76歳のおじいちゃんもいるんですが、「何でもトライしたい!」とすごく積極的な方で、いつも私たちの方が刺激を受けています(笑)

ただ「教える」だけじゃない、遊びを通した文化の学び


足利に住む、さまざまな人が自由に参加できるという「Wisteria International Community」。
実際の活動としては、どのようなことを行っているのでしょうか。

言語交換コミュニティなので、英語(時にはそれ以外の言語も)と日本語をお互いに教えあう「言語交換」がメインです。
ただ、会話だけだとつまんないのでそこに遊びを入れてしまえ!と思って、今はその「遊び」がメインになってしまってますけど(笑)クラブを貸し切ってイベントをしたり、ポットラックパーティーをしたり、いろんなイベントを行っています。
もしよかったら、これから彼ら(留学生達)の所属するアフリカンダンスのサークル活動があるので、一緒にいきませんか?

お言葉に甘えて、私もアフリカンダンスサークルにお邪魔することに。留学生たちが通っている足利工業大学のキャンパスに伺いました。
この足利工業大学は「再生エネルギー」の分野で世界的に有名で、留学生たちも国を背負ってここで勉強しているそう。


そんなキャンパス内の施設で今回教えてもらったのはケニアで有名なダンス。ケニアでは子供達も踊れるというこのダンスは、一度聞いたら忘れられないようなリズム。
先ほどまでは、八周さんの話にうなずくことが多かった留学生たちが、今度は八周さんにダンスを教えている姿が印象的でした。

言語交換を通じて、お互いの文化まで学べるこのコミュニティ。
コミュニティを立ち上げるきっかけともなった「DMM英会話」を八周さんが始めた理由は何だったのでしょうか。

まず英語を勉強しようと思ったのは、好きな海外アーティストがいたんですが、MCの時に何を言ってるのかわかんなかったのが悔しくて(笑)
あとは、足利で有名な『銘仙』という着物をPRする観光案内ボランティアを以前やっていたんですけど、一緒にやってた人がすごく英語が流暢で、羨ましくて。都内のスカイツリーとか、観光客が多いところで着物を着てPRをしていたんですが、私は外国の人が来ても話しかけられなくて・・・その経験もあって「英語を話せるようになればいろんな方と話すことができる、世界観を広げられる」と実感して、英語の勉強を始めました。最初は色々本とか買ってみたんですが、挫折の繰り返し(笑)DMM英会話を見つけてからも、正直1か月くらいは怖くてやる勇気が出なかったです・・・全然しゃべれないのに、果たして25分間もつのだろうかって。でも一度始めてみて、お気に入りの先生ができてからは、その講師と話すのがすごく楽しくて。初めて英語の勉強が続けられました。

足利は「出る杭が打たれない」街


足利出身のご主人との結婚をきっかけに足利に住んで18年という八周さんに、足利はどんな街なのかを聞いてみました。

足利に住んで思ったのは、小さい街なので「何かやろう!」と思ったときに立ち上げやすいんですよね。
昔からの住民の方とか、中には「そんなことやっても無駄だ!」という人がいないわけではないですが、比較的色んなことに興味を持って活動したり、何かを立ち上げたりする方がすごく多い街だと思います。
そういう活動をする人に対して、面白がって応援してくれる人も多いので、都会特有の「冷めた目」で見られることもなく、田舎のように出る杭が打たれるわけでもなく、色んなことをやりやすい環境がこの街にはあります。

そんな足利という街について、留学生たちにも感想を聞いてみたところ、「勉強するのに静かでちょうど良い」「綺麗な街」「住民が親切」という声が聞かれました。

私は主人の実家が足利だから、ということで今足利に住んでますが、実は「足利で暮らそうよ!」と言い出したのは主人ではなく私の方で。それまでは東京で暮らしていたんですが、半ば強引に(笑)足利に住むことに決めました。
一度、東京から足利に遊びに来た時に、足利の景色とか、古い建物がそのまま綺麗に残ってるところとか、人の暖かさに一目惚れしてしまって(笑)

「ご近所付き合い」を、もう一度

最後に、この「Wisteria International Community」が目指す姿について、お伺いしてみました。

私が目標にしてるものは、例えばスーパーで買い物したり、街中で歩いている時に、外国人の方にばったり会っても「元気?ご飯食べた?」って気軽に声をかけあえる光景が日常的に当たり前になるような環境を作りたい、ということです。ちっちゃい街なんで(笑)
実際、今はそういうことがあっても店員さんも構えちゃうし、店の中で困っている外国の人がいても"May I help you?"と声もかけられない、わからないので教えてください、と言える外国人も少ないんです。
だから、そういうのが当たり前な街になるように、とりあえずこういうコミュニティがあって、こういう楽しいことやってるよー!っていうことから広がっていけばいいな・・・というのが野望(笑)ですね。

「昨日も、留学生たちから『ホームセンターに行きたい!』と電話があったので、車に乗せて行ってきたんですよ〜」と語る八周さん。このエピソードを聞いて、私は昔の「ご近所付き合い」を想起しました。醤油が足りなければお隣へ借りに行き、お礼に肉じゃがを多めに作っておすそ分けをする―そんな「ご近所付き合い」をまずはコミュニティ内で実践し、街全体に広げていく。このコミュニティはそういうあり方を目指して日々活動しているようです。

取材後記


駅前には「渡良瀬川」が流れ、至る所で古い建物がそのままの姿で残っている、初めて足を踏み入れた足利は、とても美しい街でした。

今回お話を伺った八周さんに足利の街並みを色々と案内いただきましたが、
どこへ行っても「八周さん!」と話しかけられている姿が印象的でした。

「英語」をきっかけに一歩踏み出し、愛する街を世界中の人にとって住みやすい街にするために奮闘しながら、街のみんなから愛される。

そんな活動に踏み出す勇気を与えられる存在になれるように邁進しよう、そう決意できた1日の旅でした。